順逆無一文

第63回『電動バイク』

 地球温暖化だとか、異常気象だとか言われてますが、なんだか今年の冬は特に寒い、と感じているのは年のせいでしょうか。例年なら指の先が痛くなるほどの寒さは、大寒後のせいぜい2週間程度。それを乗り切れば指の先も「痛い!」から「冷たい」になってくれてたような気がしますが。
 
 ま、この寒さも2月も後半に入れば少しは緩んでくれることでしょう。ハンドルカバーもグリップヒーターにも頼らずで頑張ってるご同輩の皆さま、春の訪れまでもう少しです。
 
 さて、クルマの世界で、なんだかんだと話題にされる割には遅々として普及が進んでいない感じのする電気自動車。電動バイクなど尚更のことではないでしょうか(どうでもいいですけど、何でクルマは“電気自動車”なのに、バイクは、“電気バイク”とは言わないのでしょうね?)。量産モデルとしてヤマハさんのPASなどが市販開始されてからでも、すでに10年以上が経っていますが、いまだに“普及”してきたとは言えない状況ですよね。新参の“自動運転車”などにすっかり話題をさらわれてしまっているのではないでしょうか。
 
 空前の燃料安とはいえ、長い目で見れば、地球環境への配慮からは電気自動車、電動バイクに移行しなければならないのは必然のはず。で、ある意味電気自動車、電動バイクの普及の妨げになっている“インフラ”に関して、実は地道ながら着々と整備が進められている、という話題です。
 
 このほど、国土交通省は“バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)”を導入することを決定。これを受けて、道路運送車両法の保安基準、装置型式指定規則、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等について改正を行うと発表しました。
 
 これは平成10年に我が国も加入した国連の「車両等の型式認定相互承認協定」に基づき実施されているもので、世界共通の規格に沿った車両とすることで、無駄な資源の浪費や手間を省き、安全で環境性能の高いクルマやバイクを普及させていこうという取り組みです。協定自体は1958年に締結されています。やっとここにきてその成果が目に見える形になってきているというのですから、実に半世紀にもわたる各国の努力のたまものですね。
 
 正式には「車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定」と言います。
 
 この協定に加入している国は2015年6月現在で、51か国、1地域。日本は1998年11月24日の加入ですから新参者ですね。といっても先進国でも、アメリカとカナダはいまだ正式には加入していなくて、その前段階の国連自動車基準調和世界フォーラムにのみ参加し、協定規則の検討、制定などにかかわっている状況です。基準つくりには口を挟むが、自らはそれに縛られることは無い、という大国の理論を押し通しているわけですね。
 
 ちなちに、ご想像の通り中国はフォーラムにすら参加しておりません。どこが国連の常任理事国様なのでしょうね。“国際連合”などという大仰な名称じゃなく、そのものずばり、いまだ“戦勝国連合”でしかない、の陰口がピッタリの組織です。
 
 と、日頃の憎たれ口で横道にそれました。
 
 この相互認証の対象は、すでにある程度熟成し開発しつくされている感のある基幹的な技術部分よりも、最新のテクノロジーで生み出されたパーツや装置の方が先に適用される傾向にあります。たとえばLED光源とかコントロール類の表示、配光可変型前照灯、衝突被害軽減制動制御装置、車線逸脱警報装置などがその例ですね。バイク関連でいまだ採用していないのは、交換用消音機(アフターマフラーです)、前照灯(ハロゲン前照灯も)などの大物も。ヘルメット及びバイザーなんてのも対象項目にはありますが、わが国はまだ承認しておりません。
 
 以下に今回、国交省が発表した“電動バイク”(バッテリー式電気二輪自動車)に関する発表資料を掲載しておきます。時間のある方は電動バイクの未来を想像してみてください。
 
(小宮山幸雄)
 
               ※

道路運送車両の保安基準、装置型式指定規則、
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正について
 
1.背景
 
 自動車の安全基準について、国際的な整合性を図り自動車の安全等を確保するため、我が国は国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」(以下「相互承認協定」という。)に平成10 年に加入し、現在、相互承認協定に基づく規則(以下「協定規則」という。)について段階的に採用を進めているところです。
 
 今般、協定規則のうち、新たに「バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)」を採用することとしました。また、既に日本が採用している「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則 (第135 号)」等の改訂が、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第166 回会合において採択されたところです。
 
 これらを受けて、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号。以下「保安基準」という。)、装置型式指定規則(平成10年運輸省令第66号)、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号。以下「細目告示」という。)等について、所要の改正を行うこととします。
 
2.改正概要
 
 (1)保安基準等の改正
  ① 電気装置(保安基準第17条の2、細目告示第21条、第99条、第177条関係)「バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)」の採用に伴い、以下の基準を新設します。
 
  【適用範囲】
   ○電力により作動する原動機を有する二輪自動車、側車付二輪自動車及び三輪自動車
  【改正概要】
   ○「バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)」の技術的要件に適合することを義務付けます。
   1.感電保護要件
    ・車両通常使用時において車両全領域で高電圧部分との直接接触による感電保護要件(保護等級IPXXD※1を満足すること等)に適合すること。
    ※1 保護等級IPXXD:針金(直径1.0mm 長さ100mm)クラスで接触なきこと
   2.駆動用バッテリーの要件
    ・転倒時等に充電式エネルギー貯蔵システム(REESS:Rechargeable Electrical Energy Storage System)の電解液漏れ及び車両からの脱落がないこと。
    ・REESS に対して以下の試験を行い、電解液漏れ、発火及び爆発がないこと。
      ●耐振動性試験
      ●耐熱性試験
      ●耐衝撃性試験
      ●電池落下試験(着脱式REESS を備えるものに限る。)
      ●耐火性試験(車室を有するものに限る。)
      ●外部短絡保護試験
      ●過充電保護試験
      ●過昇温保護試験
      ●エミッション(開放式REESSの場合の水素ガス放出量)試験
   3.機能安全要件
    ・充電コード接続状態で発進、走行しないこと。
    ・運転者がモーターの始動時から走行可能状態とする操作は二段階以上とすること。
    ・走行時において一定レベル以上の①自動的なパワー減少②REESS充電量低下によるパワー減少が発生したことを表示する装置を備えること。
 
  【適用時期】
    新型車:平成30年1月20日
    継続生産車又は電力により作動する原動機を有する自動車に改造等するもの:平成32年1月20日
 
  ②(※この項は、ポール側面衝突時の乗員保護関連のため省略)
  ③(※この項は、原付自転車の後部反射器関連のため省略)
  ④(※その他の項省略)
 
 (2)装置型式指定規則の改正
  「バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)」の採用に伴い、相互承認の対象となる特定装置を追加等するため、第2条(特定装置の種類)及び第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)の改正を行うこととします。
  【改正概要】
    ○第2条(特定装置の種類)関係
      「原動機用蓄電池」及び「感電防止装置」の対象に二輪自動車、側車付二輪自動車及び三輪自動車を追加します。
    ○第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)関係
     ・「原動機用蓄電池」及び「感電防止装置」は「バッテリー式電気二輪自動車に係る協定規則(第136号)」に基づき認定されたものについて、型式指定を受けたものとみなすこととします。
     ・「ポールとの側面衝突時の乗員保護装置」について、協定規則が改訂されたこと
に伴い、規則番号について所要の変更を行います。
 
3.スケジュール
 公布・施行:平成28年1月20日


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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