長野市の北西に位置する飯綱高原と戸隠。この地域にも楽しく走れ、見どころもある道が複数存在する。数十年前から私的ツーリングや仕事で何度もこの周辺を訪れ、それらの道を走ってきた。有名な善光寺を詣でたのは約10年前が初で、数年前に2度目の参拝をした。すぐ近くにある長野県信濃美術館東山魁夷館に入ったこともあった。長野市内から飯綱高原に向かうなら、浅川ループラインがおススメだ。市街地から県道37号を北上して左に折れると県道404号の浅川ループラインで、すぐに大きなループ橋が姿を現す。
高低差、半径ともに約60mの橋は目が回りそうだが面白い。グルーッと旋回して上って行く。直後にトンネルがあり、その後にもトンネルとループ橋がもうひとつずつ。三桁県道だが飯綱高原まで全線センターラインのある立派な道で、距離はそれほど長くないものの、周囲の景色、コーナリングが楽しめる。終点の飯綱高原から先は接続道を経て県道506号・戸隠バードラインともつながっている。そのバードラインは長野市街と戸隠を結ぶ、名の知れた道のひとつだ。かつて有料の観光道路だったが、97年に無料開放された。全長は約17km。
幅員は充分でセンターラインはほとんど白線だった、と思う。通称「七曲がり」の区間はきついコーナーが多いが、それ以外はRの緩やかなカーブと長めのストレート、という構成だ。一部に田園地帯もあるが大半は高原の森林の中を通っている。だから見晴らしのいい場所は少ないけれど、戸隠山を正面に見ながら走れる場所もある。秋は紅葉が美しく、春は新緑が鮮やかだ。また、道沿いにお蕎麦屋さんが点在する。10年ほど前に取材で走ったときは、田園風景の中に建つ「山笑」という店で新そばを食べた。とってもうまかった。
県道36号は、白馬村から国道406号で東を目指し、鬼無里から国道18号まで全線走ったこともあるし、バードラインから県道86号の短区間を経由して入り、国道18号に至ったこともある。戸隠神社の宝光社地区や中社地区にはお蕎麦屋さんなど食事処や土産物店が多い。取材で訪れた時、早朝、宝光社を訪ねたことがある。荘厳な雰囲気がとても印象的だった。また、県道から細い道を西に入ったところにある鏡池もいい。戸隠連峰の四季折々の姿を、まさに鏡のように湖面に映し出す。湖の周辺もじつに爽やかな景観だ。
宝光社、中社を過ぎてさらに上って行くと、きつめのコーナーは終わり、直線路になる。そして左手に戸隠神社の奥社への参道が現れ、右手に戸隠民俗館・戸隠流忍法資料館・からくり屋敷が建つ。シーズンの休日は観光バスも多く道脇の駐車場は混雑する。奥社への参道は約2km。当然徒歩で行くのだが、樹齢400年を超えると言われる杉並木の立派なこと。やはり厳かな気持ちになる。奥社まで参拝したのは一度だけ。二度目のときは余裕がなく、迷った末に参道に入ったものの時間がかかることを思い出してすぐに引き返した。
忍法資料館とからくり屋敷にも寄ったことがある。仕事で戸隠を巡ったときに前者、後のソロツーリング時に後者に入った。前者はそれなりのモノが展示されていて、なかなか興味深かった。後者はその名の通りのからくり部屋などあって、平衡感覚を失いそうになったし、ちょっと酔った感じにも。でも、それは一時的なもので屋敷を出たらすぐ治った。先に進む。しばらく行くと左手に戸隠牧場が広がる。キャンプ場ほかの施設もあって、シーズンは家族連れなどで賑わう。県道沿いにも大きなお蕎麦屋さんがあるが、牧場内にも数軒。
その一軒「岳」の暖簾は数度くぐった。最初は10年ほど前の取材時で、広々とした牧場のロケーションもよかったし、味に間違いがなく、主の人柄もよかったのでリピーターになった。5、6年前、バイク仲間ふたりと戸隠周辺をツーリングした時も世話になったし、2年前の秋に女房と旅したときもそこで昼食を摂った。バイクで行ったとき、バイクを前に主と一緒に写真を撮ったような気もするのだが、その写真は紛失してしまった。今後も戸隠に行ったときは、岳、でうまい蕎麦の昼食をいただこうと思っている。
戸隠牧場を過ぎると道は緩い下りになって、5~6kmほどワインディングが続き、左手には黒姫山の雄姿が。店や民家はなく、いいペースでコーナリングを楽しむことができる。県道76号は路面があまりよくない区間や幅員の狭いところもあるし、九十九折区間もある、地方の県道らしい道だ。コーナリングを満喫できて景色も特にいい、わけではないが、交通量が少なく、のんびりマイペースで走れるし、抜け道として利用するのもいいと思う。また、国道406号も何度か走っているが、いかにも三桁国道的で、変化に富んでいて面白い。