順逆無一文

第70回『ランダバ』

 先日、BGブログで“交通評論家になりたいノア”さんが取り上げていた「ラウンドアバウト」。以前からノアさんがプッシュしていたのでご存知の方も多いのでは。ノアさんの本物英語からすると、環状交差点は「ランダバウト」のようですが、日本のお役所は「ラウンドアバウト」の表記で統一とあいなりました。ま、もっと身近に普及すれば例によって「ランダバ」みたい詰められてしまうのでしょうからどっちでも構わないでしょうけど。
 
 このラウンドアバウトですが「環状交差点における車両等の交通方法の特例に関する規定の整備」が施行されてから2年が経ちました(2014年9月)。まずは一刻も早く法を整備しなければということで法律面での対応はす早かったんですね。
 
 一方で、この2年間にラウンドアバウトがどんどん導入されてきたかといえば、これが全然と言っていいほど。国交省としても「ラウンドアバウト検討委員会」なる組織まで立ち上げて、2013年9月の第一回から毎年のごとく検討会を開催してきてはいるのですが。いまだ(1)歩行者の横断時における課題等について、(2)指定された環状交差点における車両挙動について、などの項目を検討している段階だそう(2015年3月の第4回検討委員会の発表資料から)。
 
 また第一回検討会の資料によれば、国内に存在するラウンドアバウトは32都道府県で140か所程度。これらのほとんどが住宅地に存在しているといいます。近所の“高級分譲地”の中などに存在しているラウンドアバウトを目にすることもあるのではないですか。これらは大規模な宅地開発時にランドマークや付加価値的な要素として取り入れられてきた感が強いですね。海外のラウンドアバウトのように、幹線道路の交通の流れを効率的に制御するためのものなどとはちょっと性格が異なるのではないでしょうか。
 
 ただそれでも長野県軽井沢町の六本辻交差点や飯田市の吾妻町交差点でのラウンドアバウトへの改良工事など、実際に交通の流れを改善するための実験的な導入などが行われている例もあり、まったく動きがないってわけでもありません。
 

 ちなみに、いち早く法整備が行われたラウンドアバウトに関する法改正では、

(法第4条第3項)
●環状交差点
環状交差点とは、「車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であって、道路標識等により車両がその部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいいます」。
 
(法第35条の2、第121条第1項第5号、令別表第2及び別表第6)
●環状交差点における左折等
車両は、環状交差点において左折、右折、直進又は転回するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り環状交差点の側端に沿って(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければなりません。
 
これに違反した場合は、2万円以下の罰金又は科料となります。なお、反則行為に該当する場合は、「環状交差点左折等方法違反(基礎点数1点、反則金4,000円、反則金は普通車の場合。以下同じ。)」となります。
 
(法第37条の2、第119条第1項第2号の2、令別表第2及び別表第6)
●環状交差点における他の車両等との関係等
1、車両等は、環状交差点においては、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはいけません。
2、車両等は、環状交差点に入ろうとするときは徐行しなければなりません。
3、車両等は、環状交差点に入ろうとするときや環状交差点内を通行するときは、他の車両や横断歩行者に特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければなりません。
 
これらに違反した場合は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となります。なお、反則行為に該当する場合は、1又は2に違反した場合は「環状交差点通行車妨害等違反(基礎点数2点、反則金7,000円)」、3に違反した場合は、「環状交差点安全進行義務違反(基礎点数2点、反則金9,000円)」となります。
 
(法第53条第2項及び第4項、法第120条第1項第8号及び第2項、令第21条第2項)
●環状交差点における合図
環状交差点を出るときは、その直前の出口の側方を通過したとき(環状交差点に入った直後の出口を出る場合は、その環状交差点に入ったとき)に左側の方向指示器で合図をします。(罰則については、合図不履行又は合図制限違反と同様です。)

 基本的に信号が無いのでエコ、無駄に停車している必要がない、重大事故が起こりにくい、等々ラウンドアバウト型交差点のメリットは様々ありますが、デメリットがないわけでもありません。それは、慣れないところでは行き先を間違えやすい、特に複数車線のラウンドアバウトでは渋滞が起きやすい、設置にはより広いスペースが必要、などがあります。最後の項目は、国土の狭いわが国でこれまで本格的に取り入れらなかった最大の障害といえそうです。それでもこれからの環境の時代には、電気代やメンテナンス費用が掛からないエコな交差点として普及していくのは間違いないでしょう。
 
 また、特に取り上げておきたいのは、基本的に市民など一切信用していない行政が、利用者の譲り合いの精神のみで成り立つといえるラウンドアバウト型交差点を認知したというのは、画期的な出来事だと思います。
 
 昨今の都市部では、青信号ひとつで直進や右左折の判断を運転者に任せるのではなく、進行方向ごとに矢印信号を導入して、それに従わせるようにしてきています。ミスを犯す動物でもある人間の判断する安全確認などをあてにすることなく、とにかく矢印に従いなさい、です。
 
 対向車の有無や進行方向の交通状況など、周囲の状況を自ら判断し、自らが決断するというのは運転の基本どころか、人間の生き方として必要だと思うのですが。行政からすれば、何の疑問もなく指示に従ってくれる市民を増やしたいのはやまやまでしょうけど。
 
 青信号なら自らの判断で楽々右折ができる状況なのに、矢印信号交差点では、それが出ない限りは対向する直進車が一台も来なくても右折レーンで延々と待たなければならない虚しさ。事故が多発すれば個々の当事者の資質や道路構造などを考慮することなく即通行規制。無駄な時間と余計な燃料を使うことになるというのに安易なUターン規制。まるで規制という安直な対処療法をすることが仕事だと思っているのでしょうか。
 
 そんな現状にあって「自分たちで譲り合って利用しなさい」の決定打ともいえるラウンドアバウト型交差点システムを、行政が認知したのは異例中の異例ともいえる大事件だと私は思っているのですが。
 
 今後は自動運転の車両も本格的に導入されるようになります。不完全な存在である人間に操作させるなどトラブルの元、運転は機械に任せないと罰金です、なんて時代になるのでしょうか。ま、私はそんな先までは生きてられないでしょうから自分でバイクを運転した、と切符を切られることは無いでしょうけど…。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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