バイクの英語

第52回「Bright と Dim」

 少し前にライトの自動点灯の話があったので、英語で明るいという意味のBright(ブライト)について書こうと考えていました。明るいというのはLightという言葉もあって、これがなかなか難しいんです。この「ライト」の方は灯火類を指すほかに、火をつけるとか、軽いとか、照らすとか、かなり複合的な意味があるんですね。It’s still light outsideなどと使えば、外はまだ明るい、という意味となるため、明るいけれど一点が明るいのではなく全体的に明るいというイメージがあります。光量が多くそれが一点に集中している懐中電灯をLightとは言わないわけで、これはBrightとなりますね。

 Brightのほうは、もっと強い光であったり、一点に集中した光や明るさを指すように思います。Your lights are brightなどと言ったら、あなたの(ヘッド)ライトは明るい、となるわけですから、Lightとは明暗のことで、Brightとはその先の明度のことなのかもしれません。ネイティブの筆者でも完全には説明できないのですから、言語ってのは曖昧なものです。

 Lightの対義語はDarkでしょう。明るいに対して暗いです。一方でBrightの対義語はDimではないかと思います。Dimとは真っ暗なのではなく、薄暗いという意味です。明るくない、とも受け取れますね。

 最初に戻りますが、ライトの自動点灯の話です。
 これについては、そもそもなぜ世の中の車たちは暗くなってもライトを点けなくなったのか、というところから議論するべきだと思うのです。これはメーター内の照明が常時点灯になったからに他ならないでしょう。メーター内が常時点灯になる以前は、暗くなってきたらメーターが見えなかったのだから自然とライトを点けたものです。ところがメーターがいつも明るいし、かつ都市部では道路にも照明があるため、自分のヘッドライトがついていないことに気付かないのではないでしょうか。

 ヘッドライトの自動点灯の技術が確立され、しかもそれが法で定められる。これはけっこうなことですが、しかしそんなことは必要なのか、という気持ちもあります。かつてのようにメーター内の照明をライトと連動に戻すか、ヨーロッパのように明るさに関わらずバイクのようにライトは常時点灯としてしまった方が簡単でコストもかからないことでしょう。開発コストは消費者に降りかかってくるわけですから、なるべく合理的かつ効果的な手段で安全性を確保してほしいと思ってしまうわけです。難しい技術を詰め込むと故障する箇所も重量も増える可能性が高まりますし、シンプルにいきたいものです。

 そもそも、一定の暗さになったらライトをつけなければいけないという交通ルールが存在しますので、積極的に取り締まることが先決でしょう。ライト不点灯の危険性をもっとドライバーにわかってもらい、ライトを点ける重要性を周知することも大切に思います。見るためのライト点灯ではなく、見られるためのライト点灯ですからね。我々ライダーは良く知っていることです。道路にある電光掲示板などで「日没18:00 ライト点灯義務違反取締中 罰金8000円」などと表示すれば一定の効果があるように思います。

 なお、もう一つライト点灯が安全性向上に大きく役立つ場面が、雨天時です。雨が降っていると視界が悪く、他の車がとても見えづらいですね。自車から外が見えるからって、他の車がこちらのことが見えているかはわかりません。防衛運転という言葉がありますが、雨の日はライトを点灯することで安全性が飛躍的に向上します。これも周知が全く足りていないように思います。強い雨の日でもライトを点けずに走っている教習所の車を見るぐらいですから、そもそも教習所で習わないわけです。教えている側がその安全性に気付いていないのですから、日本の交通安全教育のレベルの低さが伺えるというものです。雨天時の視界の悪さを考えれば、やはりライト不点灯は安全運転義務違反になるのではないでしょうか。

 何でも自動化というのはどうかと思いますが、しかしワイパーとライトの連動は良いのではないかと感じています。ワイパーをつけたら自動的にヘッドライトも点灯する仕組みならば、複雑なセンサーなど使わずに単純な回路でできますので、簡単に安全性を向上させることができるでしょう。自動点灯などという複雑な機構を法制化する前に、単純で効果的な着想をして欲しいものです(※編集部注:ワイパー連動のライト点灯システムは、BMW、ベンツ、日産などが採用し、広がりを見せ始めています)。安全性向上はそんなに難しいことではないはずなのです。何よりドライバーの意識の向上が一番大切なはずですし、いかに安全な乗り物でもそれを操作する人がどんどん低レベル化し意識が低くなってしまっては意味がありません。

 交通事情を嘆くことが多い当コラムですが、一応は英語に絡めることになっているので、Brightに戻りましょう。

 日本語では明るい・暗いは、光の明暗以外にも性格が明るいだとか暗いだとか、そういった使われ方がされますね。

 英語では性格や気分を指して使うことはなく、Bright とは発想が豊かであることを指します。よく海外の漫画で、何かを思いついた時に頭に電球がともったりしますが、アレです。Bright な人は、知識があるという意味での頭が良い、のではなく、機転が利く、もしくは知恵が回る、という人です。Brightな人は物事の優先順位をすぐに見極め、最短ルートで問題解決をするためのアイディアを豊富に持っているような人ですね。
 一方で自分のアイディアが特になく、逆に他の人のアイディアを否定して、自分がなかなか前に進めないだけでなくプロジェクトそのものを遅延させるような人はDimと形容されます。性格や雰囲気が暗いということではなく、発想が乏しく後ろ向きである、ということです。よって人を指して「He’s a Bright person」と言えば、明るくて付き合いやすい人というわけではなく、聡明で機転が利く、頭の回転が早いといった意味合いになり、逆に「He’s so dim…」というと、かれはなんて機転や融通の利かない人なんだろう、という意味合いです。これは頭が悪いとか、発想が乏しいとかそういうことも少なからずありますが、むしろ頭の良し悪しではなく言い訳が多いとかつまらないことで水を差すだとか、そういった別のところでの面倒くささを指すイメージの方が強いです。

 コンプライアンスという言葉が無駄に乱発される近年ですが、これに伴いDimな人が増えていると感じるのは筆者だけでしょうか。柔軟な発想や効率的な考え方はむしろ抑制され、常識的な範疇でうまいことやって下さいね、というレベルの事柄が意味もなく細かく取り上げられ指摘され果てには問題視される。大企業が上げ足を取りたがる一部のクレーマーの意見にビクビクし、もっと大局的なことをおざなりにする。嘆かわしいことです。発想力の欠如やプライドの不足、がんじがらめな「コンプライアンス」など、いかにもDimな状態で物事が進んでいることが増えてきてしまっているように思います。

 語源、というほどのこともありませんが、やはり人類は明るさに対する憧れがあるのでしょう。聖書の書き出しは「初めに光があった」なのです。車はみなLEDライトだとかカッコいい最新技術を投入することに一生懸命ですが、今一度立ち返って、ライトを点けることの大切さ及び安全性をよく考え、いかに効率的に、コストをかけずに、ライトを点灯させていくかを検討してもらいたいものです。やらない理由を考えているうちに外国メーカーや他の国産メーカーに追い越されます。スポーツメーカーのコピーではありませんが、Just do it! でしょう。Bright な人は発想力だけでなく行動力もあるのです。

筆者:ローリン ライト

発想豊かな弟たちが飛行機を飛ばすことに夢中だった中、家業の自転車屋の延長でバイク乗りとなった次男。インディアナ州の田舎町で育ったこともあり、夜になれば真っ暗闇であり、愛車インディアンにはカーバイトランプをつけて走っていた。早いうちから被視認性の重要性を認識していたため車両の後ろにもライトを付け、テールランプを発明した人物として知られる。



ローリン ライト

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