その4 1962年 ポートカブC240 専用部品だらけの“不思議”なカブ

●試乗・文:髙橋二朗
●撮影:富樫秀明

●取材協力:Honda・ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
      ホンダコレクションホール http://www.honda.co.jp/collection-hall/


C240


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C240


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 1962年、装備を簡略化することで車両価格を下げ、女子高生などの通学バイク普及を狙ったモデルがポートカブ。その存在は書物などでしか知らず、公道で走っているモデルを今まで見たことはない。営業面でも成功したモデルではなかったようだ。ちなみに今、放映されているNHKの朝ドラにポートカブが登場している。 

 ベースとなったスーパーカブC100と共通なのはフレームしかないのでは? というほど専用パーツ満載のポートカブ。これで車両価格を下げてしまったら赤字では? と思われる不思議な“カブ”である。これまた今や希少な15インチという小径タイヤを履くポートカブは、足つきや取り回しに優れるシャリイのようなファミリーバイクに進化していったと言われている。

 試乗車はフラッシャーも装備されていない初期のC240。テールには反射鏡のみ(ブレーキランプはもちろん、テールランプも備わらない)と、今の時代では考えられないプリミティブさが、当時のおおらかさを感じさせる。ミッションは2速だ。

 コレクションホール所蔵のC240が走るのは10年振りだったことに加え、短時間の試乗の交代を繰り返したこと、さらにスーパーカブC100とは異なりキャブレターがエンジンに近いこともあってガソリンが早くに気化してしまうという様々な不都合が生じてしまった。エンジンを2.3PSにデチューンし、誰にでも乗りやすいはずのモデルが皮肉な結果となってしまった。そんな状況ながら乗った印象は、C100同様にコンパクトながら、バーハンドルによる視界的な軽快感を得ることができた。



C240


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①スーパーカブC100用をベースに新設計されたエンジンは扱いやすさを求め、パワーは2.3psに抑えられる。②より多くの人に乗ってもらうために低価格とされ、装備も簡素化。ミッションは2段となる。キャブレターはスーパーカブのダウンドラフトに対しホリゾンタルドラフトに。また、キックペダルも車体左側に備わる。③ヘッドライト横にイグニッションスイッチを配置するのもカブ・シリーズとしては異例。④スピードメーターのスケールも60km/hと、当時としては控えめ。⑤前後のタイヤ径も15インチとこれまた異例。現在、適合サイズが入手できないとか。極初期型はレッグシールドも付いていなかった。⑥低価格化のため、フラッシャー、テールランプも未装備。マフラーステーもポートカブの特徴。
●エンジン型式︰空冷4ストローク単気筒OHV2バルブ ●総排気量︰49cc ●内径×行程︰40×39mm ●最高出力︰2.3PS/5700rpm ●最大トルク︰0.33kg-m/4000rpm ●圧縮比:8.3 ●変速機︰自動遠心2速リターン ●全長×全幅×全高︰1680×590×920mm ●軸距離︰1105mm ●燃料タンク容量︰3L ●車両重量︰54kg ●タイヤ前・後︰2.25-15・2.25-15 ●車体色:-●発売当時価格︰43000円

[その3 1960年スポーツカブC110|その4 1962年ポートカブC240|その5 1964年トレール90CT200]
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