スーパーカブの基本姿勢は変わらない。


-インドネシア、タイで多く生産されているカブタイプですが、今回、日本に導入されるのは中国生産。なぜ中国になったのでしょうか?

 今回、すべて中国生産に変えるということは大英断でした。この先の賃金の上昇だとか、人民元の為替の状況とか考えた時、何年以降は逆転することも予測はしてますが、まだまだこの先何年かは中国のコスト体質が他国より勝っている。

 ということで、コストで一番ポテンシャルがあるところで生産するということになりました。生産を担当する新大洲本田はトゥデイやジョルノもすでに生産しており、品質レベルは上がってきております。もっとも、どこの国で生産してもがHondaが作っているものですから、品質に変わりはなく、アフターサービス面でも安心してお使いいただけます。


-カブを開発する中で思うことは?

 アセアンのカブ開発ではチャレンジすることが当たり前。F.I.やAT化、メットインのモデルもそうですし、外観デザインの細部仕様含めてチャレンジしていき、それをお客様が受け入れてくれ、高く評価してくれる。だからモデルチェンジが早いのはアセアンですね。アセアンにはカブはこうでなくてはいけない、という縛りが少ない。もっともお客様にとっての足着き性だったり取り回し性だったり、燃費だったり基本的な重要なところを押さえながらのチャレンジとなりますが。


今田さん

 それに対して日本のカブは基本的にお客様の使い勝手を変えない中で進化させなくてはいけないという慎重な考え方で、あまり大きく変えることができない。でも色んなところに深い考えがあります。片手で運転できるというところから始まって、日本だけPPで残っているレッグシールドなど、最初のカブというのはかなりお客様視点でドラスティックに変えてきたというものになっていて、そこを僕達はただ改良しているだけ。変えられるとしたら二段クラッチのような明らかに絶対イイものや、デザイン的なところで、使い勝手の基本は一切手はつけることができない。その意味では日本でのカブというのは完成形になっているのでしょうね。


■インタビュー後記


PINKIE

今田さんから伺った、今回このスペースではまとめきれないほど沢山の貴重なお話の中には、ウワサになっているモデルや要望の高いモデルなどについてもなんとなく触れられていました。カブの開発チームの皆さんからも、積極的に発展モデルの提案があるとかないとか。それもこれも、姿は変わってもやはり日本のことを考えて生まれた新型スーパーカブ110が高いポテンシャルを秘めているということを現わしているんだなと感じた次第であります。今後も日本ではカブに関する話題が続くような気配!? 今田さん、今回はお忙しい中ありがとうございました。これからも素敵なモデルを期待しています!

■スーパーカブ110(EBJ-JA10)主要諸元
●エンジン:空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ●総排気量(内径×行程):109cm3(50×55.6mm)●最高出力:5.9kw(8ps)/7500rpm●最大トルク:8.5N・m(0.87kg-m)/5500rpm●圧縮比:9.0●変速機:自動遠心式4速リターン(停止時はロータリー)●全長×全幅×全高:1915×700×1050mm●軸距離:1210mm●車両重量:98kg●タイヤ前・後:70/90-17M/C 38P・80/90-17M/C 44P●車体色:スマートブルーメタリック、バージンベージュ、パールプロキオンブラック、パールバリュアブルブルー、パールシルキーホワイト●価格:228900円

<おまけ>
ウソ?ホント! 世界のカブの豆知識

●インドネシア、ベトナムのカブタイプは現在、他社との価格競合などもありキャブとインジェクション(F.I.)をラインナップしている。
●タイはエミッション規制がF.I.の方が有利なのでF.I.のみのラインナップ。
●キャブとF.I.の売価の差は1万円くらい。でもコチラの1万円と、向こうの1万円の価値は全然異なる(タイでの一食は高くても70~80円で食べられる)。
●125ccに乗っている人は所得レベルの高い人で、頭金も沢山納められる。そうでない人は110cc。その格差は日本での想像以上に大きい。
●125ccのカブタイプモデルを出したのは2002年から。125という排気量を選択した一番の理由は燃費。お客さんの価値にあったところで勝負している。ゼロダッシュ加速では一歩譲るものの、燃費はライバル車が40キロくらいに対しホンダは62~63キロ走るという。
●カンボジアは特異で、一世代前のフレームのDream 125を上位モデルとしてラインナップ。110がF.I.になって走りは変わらないと謳っても、途上国のステータスはやはり排気量。125と110のDreamが併売される。他のアセアン地域にDream 125はラインナップされていない。
●2009年の東京モーターショーで発表されたオートマチックのカブ。タイ、ベトナム、インドネシアの3国で販売されている。しかしオートマチックを望む人はスクーターを選ぶため、販売は伸び悩んでいるとか。
●新型スーパーカブ110のベースにもなっているDream 110は2011年6月にタイで発表。現在タイで生産され、カンボジアは組み立てのみ。今後ベトナムやマレーシアでも展開。これらアセアン諸国で出すモデルは毎年燃費を上げ、進化させている。アセアンのコミューター、特に台数の多いところでは環境に対しての影響も大きい。
●いわゆるカブタイプのバイクの生産量ナンバー1、昔はタイだったが、今は圧倒的にインドネシア。排気量110ccスポーツ系カブだけで年間120万台生産している。タイは110系カブを全部集めて年間67万台ほど。
●ベトナムでカブは宝物のように扱われており、愛車を家の中で保管しているとか。よって、部屋の中がガソリン臭くならないようエバポ規制があり、ベトナム仕様にはキャニスターが採用されている。
●現在、カブタイプを展開する国はアセアン諸国、ブラジル、欧州、オーストラリア。欧州ではスポーツ系のWAVEが販売されている。
●各国の新型110系のリアまわり、非欧州法規の国ではウインカーとテールランプが一体となる(タイ仕様など)。欧州法規はウインカーのある程度の幅が必要なため、日本やマレーシア、ベトナムの仕様はウインカー別体形状となる。
●タイもベトナムもインドネシアも最近はグローバル化され、コストや品質も含めて競争になる。タイ、インドネシアのラインは大体21秒、早くて19秒で流れる。タイはPCXを皮切りに色んなモデルを出し始めたので、そういう意味でもタイの品質レベルに他国が追随して上がっている。
●カブのスピードメーター表記、アセアンのカブはかつてはバラバラだったが、110ccまでは120km/hまで、125ccは140km/hまでと統一された。
●カブタイプが100から110に変わった`97年、ホンダはアセアンで大きくシェアを伸ばした。リセッションでアセアンの景気が悪くなった時、リセールバリューや燃費の評価が高く、カブの販売台数は堅実だった。特にタイでのシェアはぐっと上がり、ホンダのポジショニングが3位から1位に。リセッションが経過し、市場が膨らんでいく中で、ホンダは’98年以降も60%以上のシェアを誇るようになった。

all about super cub スーパーカブのすべて アンダー共通オビ

●週刊カブ バックナンバー

第01号 2011.08.01[アナザストーリー 広告宣伝に見るスーパーカブの歴史 「51年目の知られざる真実」前編]
第02号 2011.08.08[インジェクションモデル「スーパーカブ50・インプレッション」]
第03号 2011.08.15[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・1 1958〜]
第04号 2011.08.22[ピンキー高橋大統領の「スーパーカブ110 インプレッション」]
第05号 2011.08.29[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・2 1966〜]

第06号 2011.09.05[アナザストーリー 広告宣伝に見るスーパーカブの歴史 「51年目の知られざる真実」後編]
第07号 2011.09.12[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・1]
第08号 2011.09.20[ピンキー高橋大統領の「スーパーカブ110プロ インプレッション」]
第09号 2011.09.26[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・3 1978〜]
第10号 2011.10.03[初代スーパーカブデザイナー 木村讓三郎氏に聞く「カブは、何故世紀の大ヒット・バイクになったのか?」(前編)]

第11号 2011.10.11[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・2]
第12号 2011.10.14[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・4 1982〜]
第13号 2011.10.24[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション ポートカブC240」]
第14号 2011.10.31[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・5 1986〜]
第15号 2011.11.07[初代スーパーカブデザイナー 木村讓三郎氏に聞く「カブは、何故世紀の大ヒット・バイクになったのか?」(後編)]

第16号 2011.11.14[第15回カフェカブミーティング「思い入れ、楽しみ方は千差万別」]
第17号 2011.11.21[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション CT200」]
第18号 2011.11.28[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・3]
第19号 2011.12.05[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・6 1991〜]
第20号 2011.12.12[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション スーパーカブ50SDX」]

第21号 2011.12.19[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・7 リトルカブ]
第22号 2011.12.26[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・4]
第23号 2012.01.10[51年目のスーパーカブで国道51号線を走る「イバラッキーストライクホンダが征く」]
第24号 2012.01.16[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・8 1998〜]
第25号 2012.01.23[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション Wave125i」]

第26号 2012.01.30[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・5]
第27号 2012.02.06[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・9 2007〜]
第28号 2012.02.13[『変えない」という名の進化 スーパーカブ開発ストーリー]
第29号 2012.02.20[スーパーカブ110がフルモデルチェンジ]
第30号 2012.02.27[アンジョーのオモシロ系カブ・インプレッション ハンターカブCT55]

第31号 2012.03.05[阿部正人のスーパーカブ賛歌「目覚めの装置」]
第32号 2012.03.12[PINKIE大統領 ちょっとだけアセアンカブに乗る]
第33号 2012.03.19[ホンダワークスが仕掛けたカスタマイジングの新しいカタチ「カブラ」]
第34号 2012.03.26[NEWスーパーカブ110開発者インタビュー]
第35号 2012.04.2[NEWスーパーカブ110の生産地・中国 新大州本田]
第36号 2012.04.09[1993年東京モーターショー スーパーカブ華の競演夢舞台]
最終号 2012.04.16[[PINKIE高橋大統領のNEWスーパーカブ110インプレッション]
おかわり号 2012.06.15[[NEWスーパーカブ50インプレッション]

●スーパーカブ大全が、新たな書き下ろしを加え一冊の本になりました。お求めはこちらからどうぞ。

[ホンダThe Power of Dreamsサイトへ]