ここはコースで1、2を争う減速ポイント。ギアは一速まで落とされている。それでも速度は普通に国道を走る車以上に出ている。そんな状況で飛んだあとすぐに右コーナーが待っている。つまり着地とほぼ同時に右にフルバンク。やつらは普通にやっているように見えるがあれは、なにもかもが、かなぁ~りシビアでリスキーで難しい・・・はず。って事は、ちょっとでもバランスを崩しコントロールを失ったらまっすぐこっちへ突っ込んでくるんじゃね!? そう考えたらちょっと怖くなってきた。だがオレのまわりはそんな事はお構いなしに異次元とも言えるイカれたパフォーマンスに大盛り上がりである。なるほど、オレは今回、TTレースを生で観るのは初めてだが彼らはもう何度も観ているのだろう。ましてやキムさんなどここに住んでいるのだから何回というレベルではないはず。慣れているというのもあるだろうし、過去にそんなアクシデントは起きていないのかもしれない。少なくともここでは。いやいや、少しではあるがビビった自分が馬鹿らしく思えてきた。せっかく最高の席で観戦しているのだ。とことん楽しんでその光景を目に焼き付けよう。
しかし・・・何気なく過った不安というものが当たってしまうというのはよくある話である。
それはスーパースポーツクラスが終わり次のサイドカーレースで起きた。
レースの合間、先ほどオレたちの反対側で怒鳴られていたカメラマンがオレたちの前にやってきた。次はこのポジションで撮影するようだ。やはり彼は日本人でメーカーとしてのホンダ専属のカメラマンだった。話してみると共通の知り合いなどもいて不思議な人の縁というものを感じた。
そんな中、サイドカーレースがスタートをきった。サイドカーもやはり飛ぶんだろうか?
そんな事を考えながら待つ事、数分。最初のマシンが見えてきた。そして・・・飛ばない。