オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい! と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250?、エイプ750?。
第71回 海外編第18章 Motorcycle museum

 
マン島での朝はいつも早い。そして寝不足である事はもはや習慣である。天気はコロコロ変わりこの日は雨が降っている。朝食はサンドイッチ。このへんが一番無難なのだ。
前夜はラーメン話も盛り上がったがやはり話題の中心はレースだった。マウンテンコースの終盤あたりで観ていた3人は真冬のような寒さの中を震えながら観戦していたらしい。街中と山の方ではかなりの気温差があるようだ。
かたや地元民の庭先でパーティー、かたや山の中で我慢大会。彼らがオレたちの観戦状況を歯ぎしりして悔しがったのは言うまでもない。やはり場所選びは重要だ。その選択ひとつでその日の明暗を分ける事になる。さて今日はどこで観るか。レースコースの見取り図を前に思案していると早々にこの日のレース中止の知らせが入った。となると当然、観光である。
行きたいところはもう何か所も決めてある。なんせ明日が最終日でよほどの事がない限りレースも各クラスの決勝が行われる。つまり島を見て回る事ができる時間はこの日だけである。レースの中止決定が早くてよかった。おかげで時間はたっぷりある。他のホームステイメンバーのリクエストもかなりオレとかぶっている所が多かった。それならばというと事でこの日はその中の4人で行動を共にする事になった。まず向かったのはカークマイケルという街。ここは最終日の観戦ポイントとして決めていた場所である。街の駐車場に車を止めメインストリートを歩いてみる。早朝という事でやっている店なんかはほとんどない。

カークマイケルの街

 
そんな中、一緒に来ていた一人がひとつのベンチを見つけた。そして写真を撮った後じっとそのベンチを見ている。特に特徴があるわけではない木でできた普通のベンチである。ただ彼はマン島TTについては異様に詳しい。そんな彼が特別なものを見つけたような反応を示したのだ。何かある。
聞いてみるとマン島TTではレース中の事故で死者が出るとこのベンチを作り亡くなったライダーの名前を刻むのだという。そしてコース沿いのどこかに設置される。これはマン島TTに挑んだ勇敢なライダーへの敬意の証のようなものなんだとか。よく見ると確かにベンチの中央あたりにライダーの名前と詳細が刻まれている。なんとも粋な計らい。このカークマイケルの街にこのベンチは2つ設置されている。


ベンチ

ベンチ

 
しばらく街を歩き観戦場所の目星をつけたオレ達は次にジャービーという所へ向かった。
ジャービーには車とバイクの博物館、そしてジャンク屋がありともに一見の価値ありと聞いている。まずは博物館のほうに着いた。この博物館は今年、オープンしたばかりでかなりレアなものばかりを置いているらしい。入り口に行ってみると中に従業員らしき人はいるがまだ開いていない。ドアには10時オープンと書かれている。時計を見ると時刻は9時半。
少し早かったようだ。先にジャンク屋の方に行ってみるか。と思っていたら、中にいた従業員の一人がオレ達に気づき、ドアを開けてくれた。そして
「Please come in!」
あまりに意外すぎてオレは普通に日本語でええの? と。そりゃそうでしょう。頑なまでに一秒たりとも時間を譲らない日本のそれとは真逆ともいえるこの柔軟さ。ちょっとびっくりしましたわ。中に入ると館内は広大な吹き抜けのフロアになっていた。そこに様々な国の様々な車が雑然と展示されている。

博物館

 
フェラーリやランボルギーニの類は無い。だがデロリアンや4輪のトライアンフといったかなりマニアックなマシンがやたらとある。

博物館

 
日本の幼稚園バス、おまけに戦車まで。


博物館

博物館

 
さらには民家の納屋に何十年も放置されたようなジャガーが朽ち果てた姿のまま置いてあったりと。

博物館

 
何か・・・面白ぇ。バイクは2階に展示されている。
2階に上がってみるとよくぞこれだけ集めたなと思えるほどのマシンがまるでバイク屋の陳列のように並んでいる。しかもその内容はあまりにも貴重と言える旧車、名車、珍車ばかり。中にはそれこそ文化財級と言えるようなクラシックなマシンが何かで仕切るでもなく普通におかれている。何台も。


土手

土手

 
うわぁ・・・飽きねぇ。古いマシンは当然、性能では新型に劣る。だがその形状、デザインにおいては夢に溢れている。当時の作り手がこんなマシンを走らせたいと思い描いたであろう夢が。人が憧れるものには必ず夢の片鱗が存在する。そしてそれは美しく、カッコイイのである。オレが免許を取った頃は車、バイクは自分の個性を写し出すアイテムとも言えた。
それほどに選択肢も多かった。だが残念なことに現在の車事情は無個性な時代と言える。服で言えばみんなが同じ制服を着ているような。そりゃ、街中でハイブリッド車や軽ワゴンを見かけるたびにウンザリするわけですよ。今、目の前にある貴重なお宝の山と言える車両たちはそんなオレの憂いた気持ちを癒してくれる。スバラシイ!! 1日、ここにいてもいいわ、オレ。だが・・・そういうわけにはいかないという現実。それ程の時間はない。1時間半ほど博物館で過ごし、オレ達は次の目的地へ向かった。まぁ次といっても車で5分ほど。頑張れば歩いても行ける所にそのジャンク屋はあった。
その名も「JURBY JUNK」
そのまんまである。

JURBY JUNK

 
最初は車やバイクの中古パーツを扱っている店かと思っていたのだが
どうやら雑貨を扱うリサイクルショップのようだ。中に入ってみると入り口付近にレジがありそこに猫を抱いたオバサンが座っている。実に怪しい。店内はというと・・・狭い。
そして妙にホコリっぽく何が何だかわからない。倉庫というかゴミ屋敷というか。

JURBY JUNK

 
置いてあるのはオモチャや古めかしいポスター、そして怪しい置物などなど。なぜか天井にはバイクが吊るされていたりする。

JURBY JUNK

 
あれも売り物なんだろうか。もしかしたらお宝が眠っていたりするのかもしれないがここでそれをじっくり探そうという気にはとてもならない。他のやつらはあれこれ物色しながら買い物をしていたがオレは早々に店を出た。外にはこの雨の中、置かれた売り物のTシャツがずぶ濡れになっているし。

JURBY JUNK

 
なんか色んな意味でメチャクチャである。隣が古本屋になっていたのでのぞいて見たが、まさに物置。

JURBY JUNK

 
この状態で欲しい本を探すのは至難の業であろう。それでも他の地元のお客さん達は熱心にあれこれ手に取って探している。この島の人たちはそれだけ時間に余裕があるという事なんだろうか? だったら店の中ももっと整理しろよと言いたくなる。しばらくすると他のやつらも買い物を済ませて出てきた。そして次にオレ達が向かったのはピールという港町。
ここには古い城があり近くの会場でこの日、バイクのイベントが開催されているらしい。
そしてオレ達はそこでとんでもないものを目にする事になる。


[第70回へ][第71回][]
[オオカミ男の一人ごとバックナンバー目次へ]
[バックナンバー目次へ]