マウンテンコース。
気候変動の激しいマン島内でも市街地に比べてひときわ天候の変わりやすい区間。特に霧が発生しやすくそれによって頻繁に通行止めになる。他の区間とは異なり道の左右はそのほとんどが牧草地。そのため街中の建物や木立による木漏れ日といった視覚的変化が少なくレースコースの中では最もサーキットに近い環境である。
ゆえにTTを走るライダーにとってここは勝負所。当然、クラッシュも多い。
事故が多いのはレース中に限った話ではない。
レースのない日には観戦に来ている一般ライダーの多くがこの区間を走る。レース期間中、マウンテンコースは一方通行になっている。しかも速度の制限が設定されていないため飛ばすライダーが多く事故は後を絶たない。
だが・・・飛ばしたくなるよねぇ。
一方通行で速度無制限なんて「遅い車は抜いちゃっていいから好き放題走って。」って言っているようなものである。ましてやマン島TTを好んで観に来るような奴らがこんな所を走って自制するはずもない。そりゃ事故も多発しますよ。
死亡事故も多くマン島ではレースのない日をマッド・サンデーと呼んでいる。
オレ達は飛ばしたりはしない。ゆっくりとまわりの景色などを楽しみながら走っている。
それにしても思っていた以上に勾配はキツイ。コーナーも当初のイメージよりもはるかにRがきつく回り込んでいる所が多い。そして路面は他の区間同様にあまりよろしくない。
それこそ峠小僧が走り回っている日本の山道と何ら変わらない。途中、駐車できるスペースがあったので停まってみた。ちょうどその少し上の方に例のベンチがひとつあった。そのベンチには日の丸が張り付けられている。そしてその中央には4年前のレースで亡くなった松下ヨシナリ選手の名前が刻まれていた。それにしても亡くなったライダーを称えるのになぜベンチなんだろうか。本来座ってくつろぐものなのだがその意味を知ってしまうとなんか・・・座りづらいよね。