放狼記 嵐のゴールデンウィーク!!

 朝、目覚めると雨は激しさをさらに増していた。風も吹き荒れている。まさしく嵐だ。荷物をまとめてエイプに括り付け休憩所の中でしばらく様子を見ていたが風雨のおさまる気配はまるでない。地元の市外局番を押して電話で予報を聞いてみると爽やかなお姉さんの声で警報や注意報の類が延々と続く。


GW後半初日の天気は雨、風共に稀に見る最悪っぷり。朝起きてしばらく外の天気を眺めながら思った事は「誰かトランポで来てくれねぇかなぁ」。その願いは叶った

GW後半初日の天気は雨、風共に稀に見る最悪っぷり。朝起きてしばらく外の天気を眺めながら思った事は「誰かトランポで来てくれねぇかなぁ」。その願いは叶った
GW後半初日の天気は雨、風共に稀に見る最悪っぷり。朝起きてしばらく外の天気を眺めながら思った事は「誰かトランポで来てくれねぇかなぁ」。その願いは叶った。

 このままじっとしていても埒が明かないと判断したオレは意を決して出発した。とりあえずエンジンはかかるがアイドリングは不安定でアクセルから手を離すと止まってしまう。走り出してものの5分もしないうちにエイプは今にも止まりそうな勢いでゴボゴボと咳き込み始めた。少し走ったところで目に入ったガソリンスタンドに入り、給油ついでに少し休憩させてもらう事にした。親切な店員さん達は濡れ鼠なオレにお茶や茶菓子を用意してくれた。給油してくれた兄ちゃんにいたってはタバコまで差し出してくれるサービスっぷりだ。見知らぬ土地で人の優しさが身に沁みる。
 バイクをガレージに入れておいていいですよというお言葉にも甘えてエイプをガレージ内へ。そこでフィルターを外し、エアーガンでたっぷりと含んだ水気を飛ばし、店内のストーブで乾かした。その間、テレビの天気情報を見ると降水量を示す表示がその地域ごとに水色、青、黄色、赤と表示されている。その赤い部分が今、オレがいる辺りだ。スタンドの兄ちゃんの話ではここから先、止まれる店らしい店はほとんどないと言う。つまりこの先は何があっても自力で何とかするしかないと言う事になる。たかだか50キロほど。普通に走ることができれば1時間もかからないような距離がえらく遠い距離に感じる。
 昼近くまでゆっくりさせてもらいオレは店員さんたちに礼をいいスタンドをあとにした。多少ではあるがフィルターを乾かした事が功を奏したようで多少、咳き込みはするもののエイプは止まる事無く進んでいく。しかし無造作にアクセルを開けることができないし足回りにも不安を抱えたままだ。険しい峠道の上りではポコポコとまるで発動機のような音をさせながらスピードは時速20キロ以下にまで落ち込んでいく。そんな状態にありながらエイプはギリギリのところで心臓の鼓動をとめる事無くじわじわと坂を上っていった。そんな調子で上っては下りを繰り返しなんとか峠を越え午後の2時ごろアルカディア前夜祭会場となる鹿角平観光牧場に到着。それと同時にエイプのエンジンはイグニッションをオフにする事無く止まった。壊れたわけではない。人間にたとえるなら全力で走ったあと意識を失ったような感じだ。
 それにしてもエイプのタフネスぶりは相変わらずでいつもオレの無理な要求に応えてくれる。陳腐な言い方だがコイツとならどこへでも行ける気がする(まぁどこへでも行っちゃってるんですがね)。

 とりあえず辿り着いたはいいがそれらしき人影もなくオレはどうしたらいいのよ? などと考えていたら売店からこっちに向かって歩いてくる人影が見えた。島根のかっちゃんと今回の開催メンバーのマッドさんである。かっちゃんは星空ナイトでも一緒でその後、日本海側を山形まで走り、そこから下ってきたんだとか。マッドさんは初対面だ。他の参加メンバーはこの日の悪天候で到着が遅れているようだ。予約しているロッジに入れてもらい乾いた衣類に着替えるとやっと人心地つくことができた。今日はもう走る予定も走る気もまったくない。早々にビールを開けかっちゃんと乾杯。
 しばらくするとまた一台、バイクが入ってきた。彼もまたはじめて会うバイク乗りだ。このアウェイ感がなんとも新鮮で心地いい。

 しかし、それも大山夫妻が来たあたりから旗色が変わってきた。少し遅れて愛媛から星野氏が。どこかで合流したらしく何台も引き連れての現地入りだ。その全部がお馴染みの顔ばかりである。もちろん久しぶりに会う顔もいるがハッキリ言って新鮮さはまったくない。相変わらず彼らは苦労して遠くの地まで辿り着いたというオレの達成感をぶち壊してくれる。だが所変われば空気も変わる。特にこの日は楽して辿り着いた者など一人もいないのだからなおさらだ。



アルカディア前夜祭会場に次々と入ってくるバイクたち。そのほとんどが珍しくもない顔ぶればかり。でも何度会っても飽きないやつらばかりでなんだかんだ言って一緒にいると楽しいのですよ
アルカディア前夜祭会場に次々と入ってくるバイクたち。そのほとんどが珍しくもない顔ぶればかり。でも何度会っても飽きないやつらばかりでなんだかんだ言って一緒にいると楽しいのですよ。

 そんな中、一台の軽トラが入ってきた。この施設の従業員かと思ったが荷台にステッカーだらけのボックスが積まれている。髪を切ってさっぱりしていたので一瞬気づかなかったが軽トラから降りてきたのは香川の与論仙人ホリ氏である。この瞬間、オレとエイプの帰路における手段、方法、ルートは決定した。断っておくがオレが積んで帰ってもらうために軽トラできてもらったわけではない。訊くと最初は愛機であるXJR1300で家を出たのだが出発して30キロほど走ったところで原因不明の電気系トラブルによってマシンがストップしてしまったらしい。そこでマシンをバイク屋に預け仕方なく軽トラに乗り換えてやってきたとの事。
 それにしても絶妙なタイミングである。充てつけて言うなら困っていたオレに対する神様の粋な計らいってところだろうか。もしくは本気でオレの念が通じてしまったか。まぁ実際はただの出来すぎた偶然ってところなんだろうが、なにはともあれこれでオレの帰り道に対する不安はなくなった。その後も間をおきながら参加者がやって来てこの日集まったバイク乗り総勢約30名。内、レア感のない顔見知りが7割強。遠く離れた地での初参加のイベント前夜祭なのに・・・オレの中でどんどん日本が狭くなっていく。そんな不満らしき事を言いながらもこの日の宴会はオレの中で5本の指に入るほどの楽しく面白いものになった。


やはり過酷な条件を走りきった後は誰も彼もテンションは高い。当然、宴会は異様な盛り上がりを見せる事となった

やはり過酷な条件を走りきった後は誰も彼もテンションは高い。当然、宴会は異様な盛り上がりを見せる事となった

やはり過酷な条件を走りきった後は誰も彼もテンションは高い。当然、宴会は異様な盛り上がりを見せる事となった
やはり過酷な条件を走りきった後は誰も彼もテンションは高い。当然、宴会は異様な盛り上がりを見せる事となった。

とにかく乾杯、乾杯、乾杯と。ひたすらに呑み、食い、語る。最悪な道程のあとに訪れた最高の時間はそう簡単には終わらない

とにかく乾杯、乾杯、乾杯と。ひたすらに呑み、食い、語る。最悪な道程のあとに訪れた最高の時間はそう簡単には終わらない

とにかく乾杯、乾杯、乾杯と。ひたすらに呑み、食い、語る。最悪な道程のあとに訪れた最高の時間はそう簡単には終わらない

とにかく乾杯、乾杯、乾杯と。ひたすらに呑み、食い、語る。最悪な道程のあとに訪れた最高の時間はそう簡単には終わらない
とにかく乾杯、乾杯、乾杯と。ひたすらに呑み、食い、語る。最悪な道程のあとに訪れた最高の時間はそう簡単には終わらない。

 翌朝の天気は小雨がぱらついたりで不安定だったが徐々に回復に向かっているようだ。そんな中、朝一番でバイクが入ってきた。大阪のダイスケさんだ。訊くと先日の前夜祭に参加すべく向かっていたが途中、土砂崩れや冠水などによる通行止めをいくつも喰らい結局、辿り着けず大雨の中、コンビニの軒下を借り浸水したテントの中で一夜を過ごしたらしい。まったく、バイク乗りの旅はドラマッチックなものばかりだとつくずく思ってしまう。