PROJECT BIG-1二十周年記念特別企画Vol.3

PROJECT 「B1G-1大全その2 CB1300SUPER FOUR 1998~」CB史上最大排気量に正常進化
●撮影─衛藤達也、富樫秀明、楠堂亜希

 1997年の第32回東京モーターショーでデビューしたクラス最大の1300ccエンジンを搭載する新時代の最高峰を狙うネイキッド・ロードスポーツCB1300SUPER FOUR。一足先にデビューし、’97年のオーバー750クラスでベストセラーモデルとなっていたX4の水冷4ストローク4気筒DOHCエンジンをベースに、吸・排気系を変更するとともに、点火時期の設定を変更、日常使用する機会の多い低・中回転域で力強く、高速道路など高回転域では伸び感のある出力特性として搭載した。


1997TMS
1997年の東京モーターショーでデビュー。

 エンジン外観はX4同様艶消しブラックを基調に、シリンダー側面には放熱フィンが付き、ヘッドカバーやクランクケースカバーはバフ仕上げとして、歴代CB最大の1300ccエンジンとしてのクオリティが高めている。オーバースクエアのスペックが目立っていた1000とは好対照に、ボアではわずか+1mmながら、一方のストロークで+13・6mmも延長されたシリンダー設計により、よりトルクを重視した性格へと変更されている。
 X4からの変更点としては、ピストンスキッシュエリアの改良、バルブタイミングの最適化、吸気系の管長の延長、排気系も延長するなどによりパワーを誇示することより、日常的に必要な太いトルクを強調するなど、レーサーレプリカ全盛時の’80年代には考えられないホンダの姿ともいえよう。

CB1300SF CB1300SF CB1300SF CB1300SF
CB1300SF CB1300SF CB1300SF
フロントにはホンダ市販車初の異径対向6ピストンキャリパーに焼結パッドを組み合わせたφ310mmフローティング・ダブルディスク、リアには対向2ピストンキャリパーを下引き配置したφ276mmシングルディスクブレーキを採用。4-2-2エキゾーストに左右2本出しのφ130mmマフラーは左右で12リットルの容量を持つ。背骨部分は角型のスチールボックス形状でクレードル部分が丸型鋼管による複合タイプのフレームを採用。これまたシンプルだった1000との違いが際立つ部分。ダブルプロリンク機構と名付けられたリアサスペンション。スイングアームが上下に動くことによりサス下部の位置が変化してサス特性も変化する。回転数に瞬時に反応するリアルレスポンスタコメーターに、最高回転時に指針を一瞬停止させるピークホールド機構や、蛍光オレンジに発光する指針、青色LED照明を採用した。

 バイクの本質に立ち戻るというCB1000で始まったプロジェクトBIG‐1の姿勢は、このCB1300でもきちっと引き継がれていたのだ。そしてそれこそが巨大なCBでありながら使い勝手の良さの元となり、またたく間にこのクラスのベストセラーへと導いた要因になったといえる。
 CB1000でホンダ乗りたちに、バイクとともに生活することの楽しさの記憶を呼び戻させることに成功したホンダが、このCB1300では、多くのバイク乗り 、そしてバイク乗り予備軍たちの目をもバイクに向かせたのだった。

 ただ、BIG‐1 の基本姿勢は保ったものの、CB1000ほどオーソドックス、シンプルさを貫き通せていたわけではない。空冷フィン復活に象徴されるように、メカニズム的な美しさも追求しようという動きが随所に見られるモデルでもあった。
 その最大のものに、コンベンショナルな2本サスとスイングアームの組み合わせというきわめてオーソドックスな技術を、ホンダのメカニズム魂で 進化させようとした ダブルプロリンク機構がある。これはショックアブソーバーを直接スイングアームに固定せず、プッシュロッドと三角プレートをはさんだリンク機構を介して結びつけ、レシオの設定の自由度を高める一種のプログレッシブサス特性を実現するメカニズムだった。


98 CB1300SF

98CB1300SFカタログ

CB1300SF

CB1300SF 9211 赤白

CB1300SF 9211 銀

CB1300SF 9211 橙
パールフェイドレスホワイト×キャンディブレイジングレッド フォースシルバーメタリック キャンディブレイズオレンジ
1997年の第32回東京モーターショーでデビューしたCB史上最大の1300ccエンジンを搭載する新時代の最高峰を狙うネイキッド・ロードスポーツ。X4の水冷4ストローク4気筒DOHCエンジンをベースに、吸・排気系を変更するとともに、点火時期の設定を変更、低・中回転域で力強く、高回転域では伸び感のある出力特性とした。艶消しブラックを基調に、シリンダー側面には放熱フィンを設け、ヘッドカバーやクランクケースカバーをバフ仕上げとしている。フレームは、角型と丸型断面鋼管から構成されたモノバックボーンタイプのダブルクレードルを採用。


主要諸元 SC40(SC38E)■
●水冷4ストローク4気筒DOHC4バルブ、78.0×67.2mm、1,284cc、圧縮比9.6:1、最高出力74kW[100PS] /7,500rpm、最大トルク120N・m[12.2kg-m]/5,000 rpm、VEPCキャブレター、燃料タンク容量21L、燃料消費率23.5km/L(60km/h)●全長2,200×全幅780×全高1,165mm、ホイールベース1,545mm、最低地上高130mm、シート高790mm、車両重量270kg●常時噛合式5段リターン、キャスター角27°00’、トレール113mm、タイヤ前:130/70ZR17 62W、後:190/60ZR17 78W、ブレーキ前:油圧式ダブルディスク、後:油圧式シングルディスク、懸架方式前:テレスコピック式、後:スイングアーム式(ダブルプロリンク)、ダブルクレードルフレーム●発売当時価格:960,000円
再録インプレッション

 CB1000SF「ビッグ1」が登場した頃に、ミスター・バイクの読者ページに、多分ビッグ1を描いたと思われる(確か、「オレのビッグ1!」なんつって書いてあったかな?)イラストが掲載されていた。そのイラストには、ドでかくムッチリしたタンクやシートカウルは無く、別に抽象的になっていた訳じゃないんだけど、ビッグ1にしてはやたらと薄いタンクとシートが描かれていて、丁度CB1300SFの様なスポーティなフォルムだったことを思い出す。
 ビッグ1と比べて、タンクなどのボリューム感は減ったものの、X-4譲りのエンジンや17インチに小径化されたホイール、2本出しマフラーなどの組み合わせにより、カタログで見るよりも実物を目の前にした時の「迫力」「威力感」は、相当なものだ。スペックを見れば解る通り「所有する楽しみ」を、くすぐる味付けが随所に施されているからなのか?
 ライディングポジションでウレシイ改良が施されたのは、シート回りだとはっきり断言できるね。シート高自体は79cmで「特別低い」訳ではないのに、両足を出した時には(片足じゃないよ)絞りこまれたシートレールや、足着き性を最大限に考慮しカットされたシートのお陰で、お股に負担が掛からないで非常に楽チン。渋滞にハマった時なんかは苦にならないだろうね。片足だけ付く場合は更に楽チンチン。

 では、走ってみますかね! ヌラ〜と低速走行するにあたっては、大げさなアクセルワークは必要としない! ミクロいや、マクロ単位のアクセルワーク(アクセルワークとは言わないような気がするけど)で十分。スリ抜けなんかする時には、ギアを1段上げてスリスリすることをお薦めするくらいぶっとい力をみせるのよ。

 低回転からジンワリ〜とアクセルを開けていくと、タイヤが路面を力強く掻き蹴る様子が分かる。一発一発の爆発の規模のデカさを感じる。
 余談だが、ホンダでは「低回転域でのゴリゴリと小気味良い加速感」の事を「ゴリゴリ感」と言うらしい。お父さんが日曜日の朝っぱらかテレビの前でゴロゴロする事を「ゴロゴロ感」と言い、咳が止まらず龍角散を喉に散布してえ〜と言うことを「ゴホゴホ感」と言う。「ゴリゴリ感」もその中の一種だと考えていいんじゃないですかね?


ミスター・バイク1998/4インプレッション

 ゴリゴリ感を味わったら、次は全開だゴリゴリ〜!
 車体の重量感がスッと抜けて、フワッと下と同時に加速Gが襲いかかり「ドンッ!」と一気にエンジンの回転数が8千回転以上に跳ね上がる。そして、あっけなく「ムニョムニョ〜」とレブリミッターが効いてしまう。あっちゅう間の出来事だから、タンタンとタイミング良くギアを上げていかなきゃならんのよ。太くなったタイヤのお陰で、空転せずに全開加速を楽しむことができるのよ。また、フロントも「ガバッ!」と上がる様なこともないしね。
 エンジン特性としては、8千500回転からレッドゾーンとなってしまっているのだが、レッドに入る1千回転手前の7千回転までは、回転数が上がるにつれ回転数と比例するようにモリモリと強大なトルクが発生し、なだらかな吹け上がりをみせる。ビッグバイク初心者の方には、持ってこいの扱い易さじゃないかな。
 ウヒヒヒ……。暗闇を走る時はしっかりと前を見てほしいですな、特にこのCB1300SFの場合は。だって、メーターパネルのメモリと各数字、トリップパネルを照らすバックライト(青色LED照明と言うらしい)がなんとも青色なんですわ。表示以外はブラックアウトするそのパネルの中で、したたかに発光する深〜いマリンブルーは、マッコウクジラやマンタ、大王イカ、海女さんなど似合うアースカラー(誇張)なのだ。また、メーター針は蛍光発光式の赤色を採用し、従来のプリズム発光メーター針と比べ細く仕上がっている。今までにないシステムなので、一見されたし。
 左右のマフラーで隠れて分かりずらいんだけど、リアサスはプロリンク式になっているんだよね。ほら、リアブレーキのトルクロッドみたいなのがもう一本あるでしょ。イヤハヤ、それが2本サスでだよ! だからダブルプロリンクサスペンションっていう名称になる訳よ。
 プロリンク式って、レーサーなんかで使われてるヤツよ、モノサスだけど。
 超簡単に分かりやすく言えば、スイングアームが沈み込むに従って、サスペンションのストローク量が増えて、反発する力がデカくなるっていう仕掛けなんだわさ。
 加速時にもそうだったんだけど、コーナーリング中なんかでもリアに大きなトラクションが掛かっても無駄に沈み込むようなことがないよ! ハッキリとコーナーを攻めてみて実感できるよ本当! 太いタイヤと相まって「ドシ〜」とした重量感で溢れまくる「大人」なコーナーリングが楽しめる。
 17インチになったことで、思った通りにすんなりと曲がってくれるし、コーナーリングに関しては構えなくても気持ちよいく、ホンコン何型とはまた違ったカゼの様に峠を吹き荒れることができるでしょう。