


●撮影─依田 麗 富樫秀明 楠堂亜希
「メカニズムのことなど二の次、とにかく乗ってみてくれ! 感じてみてくれ!」
プロジェクトBIG‐1の原点への回帰、そんな意志を強く感じさせるフルモデルチェンジであった。
排気量に似合わない軽快な走りや取り回しの良さはCB1300の大いなる魅力だったが、停まっている状態でのマシンの扱いは、日常生活をともにするバイクとしてはいささか重すぎたといえる。初代で車両重量273kg、軽量化された後期型でも270kgもあったのだから。
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モデルチェンジにあたって開発陣に与えられた重要な目標のひとつがその軽量化だった。結果的には乾燥重量で20kgの軽量化(エンジン単体でマイナス8kg、フレームで7kg、足周りで5kg)に成功するのだが、ことは重量面でのメリットだけに留まらない結果を生んだ。
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“オーソドックス”なマシンだからこそ開発作業は単純ではなく、再度各部を徹底して見直しした。シンプルなモノほど改良は難しいということだ。初代から一貫してBIG-1が目指す方向性は同じであっても、初代と二代目の間には「似て非なるモノ」という言葉がふさわしいほど違いがあるのだ。
アナログ式にこだわった伝統の二眼メーターには、オレンジ色に自発光する指針が入る。シート下には12リットル相当の収納スペースを確保。
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美しく見せるために装備された空冷フィンの存在は否定され、水冷本来のシンプルな外観となりブラック塗装も省略。車体面では特徴的だったダブルプロリンク機構もあっさりと省略された。だからといって「軽量化のための軽量化」ではなく、目指したのはプロジェクトBIG-1の原点であることは間違いない。
エンジンでは従来のロッカーアームタイプを直押しタイプのカムへと変更、ヘッドのコンパクト化や軽量化、低フリクション化を実現した。さらにシリンダーブロックもフィンを廃止しただけでなく同時に肉薄化も実施、鋳込みタイプのスリーブ採用によりスリーブのトップフランジなどが廃止され軽量化を達成した。
燃料供給は32ビットECUで制御されるPGM‐FIを採用。回転数(クランクとカム2個所)、水温、気圧、スロットル開度の各センサーからの情報を高速演算し、スロットルレスポンスの向上と燃焼効率の最適化に寄与している。PGM‐FIによる環境対応とあわせて各シリンダーの排気ポートにはビルトイン式のエアインジェクションシステムを搭載してエア通路の見直しが行われて排出ガスもクリーンに。さらにバフ仕上げのステンレス製マフラーには可変排気バルブを採用。排気干渉を低減する集合管と併せて低周波の音をクリアにし、体に響き渡る重厚なサウンドを実現している。
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車体周りでは、従来のモノバックボーンフレームからデュアルバックボーンフレームになりエンジンマウント各部の剛性を適正化。低速ではしなやかに、高速ではしっかりと安定感のあるフレーム特性とした。ちなみにホイールベースも30mm短縮され旋回性能や取り回し性を向上させている。
ダブルプロリンク機構を廃したリアサスは2段階スプリングが採用され、さらにピストンロッド径を12・5mmから14mmへと剛性アップ、伸び側15段、圧側4段ダンピングアジャスターを装備することにより適切なダンピング特性を実現している。
フロントブレーキはCBR954RRと同様の同径対向4ピストンキャリパーと軽量φ310mmダブルディスクを組み合わせている。リアはφ256mmシングルと小径、軽量化。キャリパーも同様シングルピストン式を採用。
このように軽量化と共に、残す必要のある各パーツ各機能は徹底してアップトゥデート化が図られている。それは本来あるべき姿のバイクに立ち返るためにも必要な改革だった。
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パールフェイドレスホワイト×キャンディアラモアナレッド
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フォースシルバーメタリック
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ブラック×フォースシルバーメタリック(ウイングタイプ)
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前モデルに比べ20kgの軽量化を実現。三次元点火時期制御システムやPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)を採用し吸排気システムを一新。機能面でも12リットルのシート下収納スペース、盗難抑止機構「H・I・S・S」、ライダーに必要な情報を提供するインフォメーションメーターなどの装備で使い勝手のさらなる向上を図っている。
スタイリングは迫力あるフォルムは継承しつつ、機能美を併せ持たせたスタイリングに。伝統的な白に赤のツートーンカラーと、黒にグレーのウイングマークイメージを施したツートーンカラーに加え、シンプルなシルバーのソリッドカラーの計3色を設定。
■主要諸元 BC-SC54(SC54E)■
●水冷4ストローク4気筒DOHC4バルブ、78.0×67.2mm、1,284cc、圧縮比9.6:1、最高出力74kW[100PS]/7,000rpm、最大トルク117N・m[11.9kg-m]/5,500 rpm、電子制御燃料噴射PGM-FI、燃料タンク容量21L、燃料消費率25.0km/l(60km/h)●全長2,220×全幅790×全高1,120mm、ホイールベース1,515mm、最低地上高135mm、シート高790mm、車両重量254kg●常時噛合式5段リターン、キャスター角25°00’、トレール99mm、タイヤ前:120/70ZR17M/C(58W)、後:180/55ZR17M/C(73W)、ブレーキ前:油圧式ダブルディスク、後:油圧式シングルディスク、懸架方式前:テレスコピック式、後:スイングアーム式、ダブルクレードルフレーム●発売当時価格:990,000/980,000(ソリッドカラー)円
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■PROJECT BIG-1二十周年記念特別企画
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VOL.0 ハタチのBIG-1にスペシャルエディション誕生]
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VOL.1 今、もういちどBIG-1を語ろうか 初代LPL原 国隆氏インタビュー]
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VOL.2 BIG-1大全 その1 CB1000SUPER FOUR(1992~1996)]
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VOL.3 BIG-1誕生20周年記念フォーラム(動画付)
[
VOL.4 BIG-1大全その2 CB1300SUPER FOUR(1998~)]
[
VOL.5 「HRCにケンカ売ろうぜ1」 2003年8耐参戦]
[
VOL.6 CB1300STで「秋をおいかけて」(前編)]
[VOL.7 BIG-1大全その3 CB1300SUPER FOUR(1998~)]
[
VOL.8 CB1300STで「秋をおいかけて」(後編)]
[
VOL.9 BIG-1大全その4 CB1300SUPER FOUR(2005~)]
[
VOL.10 BIG-1大全その5 CB1300SUPER FOUR(2008~)]
●[
CB400SUPER FOUR(1992〜2010)大全はWEBWEB Mr.bikeの旧サイトでご覧になれます。]
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