![]() |
||||
![]() |
||||
前編より……。 御嶽山の見事な全身を見ることはかなわなかったが、それでもこの先に続くナイスな道に思いを馳せてCB1300STを走らせる。開けた風景を楽しませた道は、次第に左右から山肌が迫ってきた。それでも期待通り。走りを楽しむには最高の道が続く。加減速とシフト操作を織り交ぜ、思い通りのラインに乗せてゆく面白さ。攻めとツーリングの中間ぐらいのペースで走る時、CB1300STのハンドリングは本当に素晴らしいと思う。 ところがだ。ますます空はグレーの濃さを増し冬の午後みたいな天気になってきた。広葉樹の森の中を上って行く道。タイトターン、直線またタイトターンというサイクルを繰り返し長峰峠の上りが始まる。寒い。鼻の頭が冷たい。すれ違う車が残すヒューというタイヤの音すら寒々しい。木曾街道と呼ばれるこの道がどれほど冬期に厳しいのか、何となく想像できた。 長峰峠は長野と岐阜を分ける県境になっている。峠を下り、一旦平らな場所に出たあと道は川沿いに進んで行く。寒さと不安を増す天候。今はそれとの戦いになっている。それでも時折力強い太陽が射すこともある。山間の道は明るくなったり曇ったりを繰り返した。峠から15分ぐらいだろうか大きなダム湖が現れた。いよいよその先の分岐で野麦峠を目指す。 |
||||
寒さを忘れて写真を撮った。「と、言うことは麓から眺め上げ山肌に雪化粧をする高度まで自分がたどり着いたんだ」ということに気がついた。
|
![]() |
![]() |
||
![]() |
たった今、秋と冬の国境線に到着です! とややはしゃぐ。この落葉の量、見て下さい。落ちるにはまだ早い緑の葉もあることから、台風並の風が吹いた模様。 | |||
その思いが確信とも落胆ともとれる思いに変化するまで200メートルと掛からなかった。カーブを一つ曲がったところから見た道は、落ち葉の道に雪が積もっているのだ。 行くか戻るか。案じたものの、だめな所まで見極めたい、という怖い物見たさもありそのまま進むことに。幸い、雪は落ち葉の上に薄く乗っているだけで、アスファルトに降った雪は消えていた。濡れたアスファルトの黒と落ち葉の黄色、そして道の脇にある雪の白が織りなすパッチワークを通り抜けると再び落ち葉も雪もない濡れたアスファルトが現れた。 |
||||
![]() |
![]() |
![]() |
||
はしゃいだのもつかの間、道はあっという間に冬に制圧されはじめた。 |
![]() |
こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイトで直接ご覧ください。 | ||
道は勾配を増し、谷を渡りながら高度を上げて行く。白くなった山肌を縫うように走る峠道。道の横にはシャーベット状の雪がある。日陰は要注意だった。 |
||||
![]() |
![]() |
![]() |
||
山肌はご覧のとおり。地熱の影響を受けず下を風が通り抜けることで路面から熱を奪われる橋のシャーベット状の雪が! |
![]() |
道の脇で見かけたツララ。この分だと冬の間にどのぐらい成長するのでしょうか。 | ||
そして野麦峠へ。道はほぼドライながら積もりたての雪が下山を急がせる。トイレだけ借りてゆこう。この峠を境に岐阜県高山市から長野県松本市へ。 | ||||
![]() ![]() ![]() |
![]() |
![]() ![]() ![]() |
||
そして野麦峠へ。道はほぼドライながら積もりたての雪が下山を急がせる。トイレだけ借りてゆこう。この峠を境に岐阜県高山市から長野県松本市へ。 | ||||
一気に下りはじめる道を行くと、わずか数度気温が上がっただけでもまるで春が来たような心地になる。1700メートル近くあった峠では風が痛かった。今はだいぶ緩んできた。しばらくすると里山に下りてきた。もう大丈夫だ。少し嬉しかった。峠を背に天気も好転。そこから松本と高山を結ぶ国道158号線を目指す。なんと暖かい。強ばっていた体が溶けるようだ。 |
||||
![]() |
||||
冬に支配されていた峠まで。その峠から少し下るとこんな180ターンが。まるで一枚の扉のごとく天気を分けていた。でもまた冬に捕まりましたが(笑)。 | ||||
![]() |
![]() |
![]() |
||
まっすぐに伸びた唐松、足下を覆うクマザサ。落ち葉が両端を覆った道を行く。 |
![]() |
戻った青空。里山の気配。どっさり積まれた薪に長い冬を思わせる。 | ||
![]() |
||||
冬に追い立てられた野麦峠。ほっと一息。すっかり蕎麦屋の営業時間を過ぎてしまい、松本市内のコンビニで肉まん湯気で暖を取る。底の紙を剥ぎ熱々をかじる。今や通年食べられる肉まんだけど、蒸し器に詰まった肉まん、あんまんは冬の季語です(笑)。 | ||||
秋を追いかけるつもりが冬に追いかけられた事に気がついた。11月。あとわずかに残った晩秋を探すなら天気図と相談しながら走る事をオススメします。11月上旬のこの日、日本海側は低気圧で雨、山沿いでは雪、太平洋側は晴れ。松本あたりまでは晴れという予報だった。本州でも南北にもっとも肉厚で「松本より少し南だし」と疑いもなく走ってきたがこのありさま。 |
||||
![]() |
||||
今回の旅の友、CB1300ST。 CB1300SF、CB1300SBがもつツーリングポテンシャルをさらに上積みさせたCB1300STだ。発電容量を上げたジェネレーター、標準で装備する左右とも容量29リッターのパニアケース、荷物の積載と走りの良さをバランスさせるべく、デザインされた専用のSTフレームを装備、SBよりもさらに快適性を上げたウインドスクリーン等々装備面は呑み話級に微に入り細に入り物語があるST。 長い旅、遠くへの旅、日本の道を味わい尽くすのにこれ以上のものを探すの難しい、というほどのツーリング特待生。サスペンションの初期作動性が素晴らしく乗り心地は特上。それでいてコーナーでも粘つかない見事なハンドリング。ブレーキ性能もタッチ、制動感ともに磨かれ意志通りの減速を「楽しめる」。STでは前後連動ABSを標準装備。今回も落ち葉の道で安心感を届けてくれた。 エンジンは2000rpm以下から力を出し、その扱いやすさの手本のようなパワーデリバリー。ライダーの右手次第で、露天風呂で手足を悠々と伸ばすような気分にも、タイトにラインをにらみワインディングを切り取るかのようなアスリート気分にもなれる広く深い特性を持つ。クラッチのタッチ、駆動力のつながり方、駆動系の見事なスナッチの無さ。連綿と磨き続かれるメカニズムは、今や手触り、肌触りという触感のレベルで語れるほどに完成度だ。 スペックなどCB1300STやCB1300シリーズの詳細は新車プロファイル2012、ホンダWebサイトを参照してください。 |
||||
![]() |
![]() |
機種別専用マウント、外部コントローラーが便利なギャザーズMのナビゲーション、別体タイプのETCなどもオプションで用意される。他にもお馴染みグリップヒーターなど豊富なオプションが揃う。 | ||
パニアケースの形状、幅とも一般道で気にならないレベル。パニアステーは頑強そうな作りだ。 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
![]() |
内部にラゲッジバンドも備えるパニアケース。下ヒンジのため、開閉にはスペースを必要とするが、ここに荷物を放り込んでしまえば出発の準備も完了。高速道路やワインディングで「荷物ゆるんでない?」と気にする必要がないのは本当にラクだ。もちろん雨でも心配ナシ。 | ||
パニアケースは着脱も簡単。雨などで汚れていなければそのまま宿に持ち込むこともできる(旅馴れた人はたいていインナーバッグを使っています)ケース用フレームとケース側の取りつけ部分を合わせ左手で持っているラッチを倒すだけ。後はキーでロックすれば準備完了。ホンダ自慢のワンキーシステムも採用されている。 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
![]() |
この旅で使った3シーズン用ジャケットは、ホンダライディングギアの中からチョイスしたSUPER Bold’orロングジャケット(ES-P3Z)。2012~2013シーズンの新商品。プラチナと呼ばれるこのカラーの他、ブラック、ガンメタル、ダークブラウンの4色展開。アウターシェルに初期耐水圧15000㎜/cm3というレインウエア並の防水性を持つ。それと同時に透湿性ももたせ蒸れによる体の冷えを防ぐ理想的なマテリアル使いが自慢。インナーにも重くなく暖かいライナーを使う。ライディングを熟知したデザインだけに動きやすくミラーなどの視認性に邪魔にならないような工夫がみられた。フードにはファーが付きヘルメットを脱いだあともフードを被れば相当なぬくぬく感を味わえた。サイズはS,M,L,LL,3L,4Lの6サイズ展開。価格はS~LL 2万6800円、3L.4L 2万7800円。 |
[VOL.0 ハタチのBIG-1にスペシャルエディション誕生]
[VOL.1 今、もういちどBIG-1を語ろうか 初代LPL原 国隆氏インタビュー]
[VOL.2 BIG-1大全 その1 CB1000SUPER FOUR(1992~1996)]
[VOL.3 BIG-1誕生20周年記念フォーラム(動画付)
[VOL.4 BIG-1大全その2 CB1300SUPER FOUR(1998~)]
[VOL.5 「HRCにケンカ売ろうぜ1」 2003年8耐参戦]
[VOL.6 CB1300STで「秋をおいかけて」(前編)]
[VOL.7 BIG-1大全その3 CB1300SUPER FOUR(1998~)]
[VOL.8 CB1300STで「秋をおいかけて」(後編)]
[VOL.9 BIG-1大全その4 CB1300SUPER FOUR(2005~)]
[VOL.10 BIG-1大全その5 CB1300SUPER FOUR(2008~)]
●[CB400SUPER FOUR(1992〜2010)大全はWEBWEB Mr.bikeの旧サイトでご覧になれます。]
[名車図鑑目次へ]