第27湯 温泉系スーパー銭湯に行ってみよう
今年の冬はとにかく寒い。この寒さをもたらしている強烈な大寒波の影響は雪国だけではない。首都圏でもその猛威を振るっている。私も昨年の12月で40歳になり、年を感じ始めた証拠でもあるのだが、いつにもまして寒いと思う。
冬休み中にスタッドレスタイヤを試すために車で日光付近の温泉にアタックしたが、バイクではさすがに行けない場所だった。どこにもバイクで出かけないのは寂しいので、正月に集会仲間と茨城の袋田の滝までツーリングに行ったのだが、あまりの寒さに身体が悲鳴を上げてしまい、東京に帰ってから風邪を引いてしまった。
どこかにツーリングに行きたいと思うのだが、寒さがツライのはもちろん、雪や路面凍結が怖い。1月中旬に東京で大雪が降った時に乗ったのだが、ちょっと雪が積もっただけで動かなくなってしまった。そうなると出かけるのも億劫になってしまう。そこでこんな時は、近場の温泉を目指そうということで、首都圏で増えつつある天然温泉系スーパー銭湯(日帰り入浴施設)に行ってみたいと思う。
「スーパー銭湯」は通常の銭湯(公衆浴場)よりも施設(湯船、サウナなど)が充実しており、休憩スペースはもちろん食事処やマッサージコーナー、床屋などが併設されている。そのため、入浴料が通常の銭湯に比べて200〜300円ほど割高になっている。ちなみに現在の東京都内の銭湯の入浴料は450円、スーパー銭湯は600〜1000円である。デイリーユース的な感覚の通常の銭湯に比べて、スーパー銭湯は休日にリラクゼーションを兼ねて入浴しに行くような公衆浴場(日帰り入浴施設)だ。
施設が充実しているところは、いわゆる「健康ランド」と似ているが、健康ランドはほぼ24時間営業していて仮眠でき、再入浴が可能なところが多く、宴会場などで演歌歌手や芸人がショーをやっているなど娯楽施設が充実している。福島県いわき市にあるスパリゾートハワイアンズ(ある年齢の方なら常磐ハワイアンセンターと言ったほうが分かりやすいかも)は水着着用だが、健康ランドの特徴に似た施設だ。
地方の日帰り入浴施設では24時間営業していないものの、宴会場で演芸ショーが開催されているところもあり、その営業形態はひと括りにはできない。そのためなのか、スーパー銭湯と称される公衆浴場は、首都圏や大都市圏以外ではほとんど見たことがない。もともと温泉が湧出しにくい首都圏や大都市圏ならではの施設なのだろう。
そんなスーパー銭湯にもいくつかスタイルがあるが、最も大きな違いは、通常の銭湯と同じ沸かし湯を提供しているところと、天然温泉を提供しているところがあることだ。ここでは天然温泉を提供しているスーパー銭湯を「温泉系スーパー銭湯」と呼ぶことにする。自宅近くで手軽に温泉入浴できるとあって、温泉系スーパー銭湯はどこも大盛況だ。
都内には昔から温泉を提供している銭湯は数多く存在する(23区内でも大田区が特に多く、銭湯数も都内最多とのこと)。一方で内湯が発達したため廃業する銭湯も多く、銭湯そのものが貴重な存在になりつつある。また、銭湯の多くが個人経営(個人事業主)に対して、スーパー銭湯はグループ経営のところが多い。なので「〜の湯〜店」のような名称が多い。スーパー銭湯は現代風の経営を取り入れた、デイリーユースとレジャーユースを兼ね備えた新たな入浴施設だと言える。
今回記事にするにあたり、調査の意味も込めて埼玉県の国道17号線沿いにある温泉系スーパー銭湯(日帰り入浴施設)に入浴してきたが、共通する特徴が何点かある。まずひとつは、温泉の湧出量がそれほど多くないため、限られた湯船にしか温泉が提供されていないのだ。ほとんどの温泉系スーパー銭湯は掘削して温泉を掘り当てており、汲み上げているところがほとんどだ。さらに掛け流しではなく循環させているところが多い。
自然湧出している温泉すべてが豊富な湯量を持つわけではないが、例えば千人風呂と呼ばれるような大きな湯船を源泉かけ流しの温泉で満たそうとすると、それなりの湧出量が求められる。湧出量はその温泉の実力(体力)を見極めるバロメーターのひとつだが、スーパー銭湯の湯船を満たそうとすると、それなりの量が必要となる。加水・加温・循環させてすべての湯船に行き渡せる方法もあるが、それでは温泉の旨みがなくなる。そこで内風呂や露天風呂だけ温泉にしたりするのだ。
温泉を提供している日帰り入浴施設には湯船が1つしかないところもあり、施設が充実している温泉系スーパー銭湯の魅力がないわけではない。むしろ温泉好きとしては正直で好感が持てる。温泉に入りたければ温泉仕様の湯船にひたすら入ればいいだけだ。実際、今回も温泉仕様の湯船にしか入らなかった(何てわがままな客だ…)。
先ほど入浴料が通常の銭湯に比べて割高と述べたが、土日祝日のほうが入浴料が高かったり(100〜200円増)、会員になると割引(50〜100円引き)になるなど、入浴料が条件によって変動する施設が多い。地方の日帰り入浴施設では町内居住者への割引や高齢者割引、あるいは年末年始割高などはよく見かけるが、土日祝日が割高になるのは、首都圏や大都市圏特有のような気がする。しかし一方で、夜間や午前中は割引になるところもあるので、事前に調べてから行きたい。
濃い目の温泉分を求めるにはやや物足りない温泉系スーパー銭湯だが、24時くらいまで営業しているところが多いので、思い立った時や仕事帰りなどに温泉に入れるのは嬉しい。実際、私も時間に余裕のある時に行くことがある。また、浴室内にはボディーソープやシャンプーが常備されており(通常の銭湯には番台で販売はされていても常備はされていない)、タオルも購入できるので、それこそ手ぶらで行ける。
温泉入って、メシ食って、寝て…と、ちょっとしたグータラな一日が楽しめてしまうのが温泉系スーパー銭湯の魅力だろう。
3月になろうとしているが、冬将軍はいつ過ぎ去るのだろうか。そろそろゴールデンウィークのロングツーリングの計画を練りつつ、まずは3月下旬に春を感じるツーリングに出かけたいところだ。まずはその前に仕事を終わらせよう。
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