湯めぐりみしゅら~ん


第29湯 群馬県沼田市周辺の温泉

 毎年ゴールデンウィーク中に開かれる「春の集会」の前に、肩慣らしを兼ねて日帰りでツーリングに行くことにした。しかし、よく考えてみると、今年は正月に1泊2日で茨城県方面にツーリングに出かけて以来、まともなツーリングに行っていないことに気づいた。さらにキャンプツーリングに至っては、去年の8月に宮城・山形方面に出かけて以来ご無沙汰だ。出不精になったわけではないのだが、年齢を重ねるにつれて、明らかに寒さに弱くなったせいかもしれない。

 そんな状況の中、東京から150km弱と程よい距離と、雪が溶けていそうな地域となると、群馬県か栃木県、山梨県、もしくは伊豆半島になる。考えた末に選んだのは群馬県の沼田市。昨年末も群馬県(上州南部)に行っており、またかと言われそうだが、未踏湯が多いのと、全国的に有名な温泉が多いのでクリアしておこうという考えから選んだ。出発日はアームズマガジンの編集作業が一段落した4月22日に決めた。

 出発の前日、関東地方は4月とは思えない寒さに襲われ、新潟付近の関越自動車道では雪が降るというハプニングを予感させる状況だったが、出発当日の天気は回復した。沼田市周辺の天気予報を見ると問題なさそうだったが、現地に行ってみないと分からない。

 午前7時30分に出発。いつもどおり渋滞している甲州街道、環八を抜けて、関越自動車道で沼田ICを目指す。途中、上里SAで「肉汁上里うどん」を食べてエナジーチャージ。ほぼ予定どおり午前10時20分頃に沼田ICに到着した。沼田ICからは国道120号線沿いに日光方面に進み、丸沼高原手前の白根温泉で引き返してくるルートだ。

 国道120号線沿いで有名な温泉地と言えば「老神(おいがみ)温泉」だ。ここは外せない温泉なのだが、日帰り温泉施設(湯元華亭)が月曜定休ということが事前に判明した。事前に分かっただけでもラッキーだが、老神温泉に入らないのは悔しいので、ツーリングの最後に現地で日帰りで入れるところを探して入ることにした。

 そんなこんなで老神温泉をスルーして向かったのは、老神温泉の近くにある吹割温泉「龍宮の湯」。案内看板に従って行ってみると、何と休業日。事前情報では月曜定休ではないはずなのに…。国道120号線に戻って日光方面に進み、4kmほど進んだところで「ささの湯」という看板が目に入ったので、県道64号線に入り行ってみることにした。

 幡谷温泉「ささの湯」は群馬県利根郡片品村幡谷にある日帰り入浴施設だ。建物の外観は民家風なので入るのに一瞬躊躇してしまうが、入ると女将さんが出迎えてくれた。料金500円を払って浴室へ。シンプルな造りの内湯にはお湯がたっぷり注がれている。素早く身体を洗い、湯船に入る。冷えた指先や足先がじりじりと温まっていく。お湯はぬるめで濁り湯系、鉄分が多いのかと思った。露天風呂は冬季中はやっていないとのこと。

 ぬるめのお湯に浸っていると、女将さんが入ってきて「昨日から営業再開して、新しく水を引いた関係でお湯が濁っているけど…お湯加減はどうですか?」と聞いてきた。この濁り湯はどうやら本来のお湯の色、湯加減ではないようだ。調べると泉質は弱アルカリ性低張性。確かに湯口から出るお湯は透明で熱かった。

 ちょっとしたハプニングのあった「ささの湯」を後にして、県道64号線をさらに川場村方面に進んだところにある花咲温泉「花咲の湯」に行ってみた。花咲温泉「花咲の湯」は群馬県利根郡片品村にある花の駅・片品の中にある日帰り入浴施設だ。外観は花の駅のとおりモダンでお洒落。館内もちょっとした美術館のようになっている。入浴料600円を払って浴室へ。地下の浴室に向かう階段にどこか見覚えがあるような気がするのだが…。浴室も外観同様モダンで清潔感があり、露天風呂も開放感がある。お湯は無色透明で、さっぱりとした肌触り。

 身体を温めなおして浴室から出て館内を見渡すと、やっぱり見覚えがある。でも思い出せないので、どこか似たような温泉と勘違いしているのだろう。外に出ると、気温もそれほど寒くなく、晴れ間が見えているのに小雪が舞い始めた。天気予報は見事に外れ。これからのハプニングを予感させるような天候になってきた。

 再び国道120号線に戻り、白根温泉を目指す。白根温泉に向かう途中、国道120号線と尾瀬方面に向かう国道401号線が分岐する手前で「ほっこりの湯」という看板が目に入ったので立ち寄ってみることに。国道120号線沿いにある「ほっこりの湯」の駐車場に入った途端、またもや見覚えがある気がしてきた。駐車場よりちょっと高いところにある建物の雰囲気を見ると、ますますその思いは強くなった。とりあえず館内の雰囲気は記憶にはないので、また勘違いかと思った。

 鎌田(寄居山)温泉「ほっこりの湯」は群馬県利根郡片品村鎌田にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円。内湯だけだが、大きな窓からは周囲が一望できるほど眺望がいい。湯船には無色透明のやや熱めのお湯がたっぷり注がれており、眺望と合わせて気持ちいい。他にお客さんはおらず、お湯を独り占め。気分よく建物を出て再び周囲を見渡して見ると、どうにも見覚えがある。でも浴室の造りは記憶がないので、ボケているだけだと言い聞かせて、当初の目的地である白根温泉に向かった。

 「ほっこりの湯」から国道120号線を走ること約20分ほどで白根温泉に到着。あと18kmほど走れば金精峠に差し掛かり、日光に続いているのだが、金精峠は冬期通行止めなので、今日は白根温泉に入って引き返すことにした。白根温泉は群馬県利根郡片品村にある日帰り入浴施設だ。国道のすぐ脇に源泉が噴出している珍しい温泉だ。うなぎの寝床のような建物内に入ると先客はおらず、受付にスタッフもいない。受付で待っていると、どこからともなくスタッフがやってきたので、料金700円を払って浴室に向かった。

 白根温泉の名物は、薬師之湯と呼ばれる大露天風呂があること。先客がいないので内風呂で身体を洗って露天風呂に直行。扉を開けると、広くて開放的な露天風呂が目の前に現れた。そそくさと写真を撮り、入って右側の湯船に入ってみた。お湯は無色透明で、ほどよい湯温で入りやすい。続いて左側の湯船に入ると、湯温はやや熱め。源泉の温度が約60度となっており、さらにかけ流しなので、やや冷ましてから入れられているようだ。やっぱり露天風呂は広いほうがいい。ついつい長湯したくなってしまう。

 白根温泉に入ったところで本日4湯目。時間は午後2時30分前なので、まだまだ入れる。ただ気がかりなのは天候だ。白根温泉からは国道120号線を沼田方面に引き返す前に、国道401号線方面に入って片品村方面に行ったのだが雪が強くなり、これ以上尾瀬方面に進むのは断念した。国道120号線に戻り、幡谷温泉の手前の国道沿いにあった「わたすげの湯」に入ってみることにした。

 「わたすげの湯」は群馬県沼田市利根町にあるレストラン水芭蕉内にある日帰り入浴施設だ。食事や入浴のほかに簡易宿泊も可能とのこと。店内に入り、入湯料550円を払って階段を降りたところにある浴室へ。更衣室は綺麗で広々している。浴室に入ると、和風な建物からは想像できないほどモダンでデザインコンシャスな作りに目を奪われる。露天風呂もユニークなデザインで、周囲はどこか尾瀬の自然を思わせるような景色となっている。湯量豊富なお湯は無色透明のアルカリ単純泉。ややヌルスベしている。ここも浴室を独り占め。今日はどこもお客さんが少ない。

 「わたすげの湯」を出ると、時間は午後4時を過ぎていた。そろそろ帰りの時間を気にしなければならない。さらに国道120号線を沼田方面に戻り、いよいよ老神温泉に寄ってみることにした。町の中に入り、共同浴場的なものは見当たらない。町の奥にある定休日の湯元華亭まで行き、ふと向かいの建物を見ると、「東明館」という看板が目に入った。近くまで寄ってみると、テレビで観たことのあるぎょうざの満州というお店が経営しているホテルだということが分かった。日帰り入浴可能とのことで入ってみることにした。

 老神温泉「東明館」は「ぎょうざの満州」という中華料理チェーン店が運営するホテルだ。餃子と温泉というなかなか珍しい組み合わせだが、宿泊者はもちろん食事のみでも餃子や中華料理が食べられる。入湯料は600円。ちなみに宿泊料金は1泊朝食つきで5,500円とのこと。日帰り入浴の受付は、HPを見ると午後0時〜午後4時となっているが、私は午後4時半前に訪れたが入浴できた。

 浴室はそれほど大きくないものの、お湯は老神温泉の特徴である弱アルカリ性の単純硫黄泉が加水・加温なしで供されている。久しぶりに硫黄臭を嗅ぎながら内湯に入る。名湯らしい質の高いお湯の感じがする。露天風呂はそれほど大きくないものの、酸化してやや緑っぽい色に変色している。当初老神温泉はパスするつもりだったが、ラッキーとはいえ立ち寄ってよかった。

 東明館を出て国道120号線に戻り、沼田ICを目指そうとした矢先、左側に折れる県道267号線方面に「南郷温泉しゃくなげの湯」という看板が目に入った。時間は午後5時を過ぎていたが、最後の悪あがきということで行ってみることにした。薗原湖を過ぎて20分ほど走ったところに「南郷温泉しゃくなげの湯」があった。

 「南郷温泉しゃくなげの湯」は群馬県沼田市利根町にある日帰り入浴施設だ。周囲を山に囲まれている鄙びたところなのだが、夕方過ぎということからか、館内や浴室に地元の方々が大勢いた。浴室は和風の落ち着いた作りで、内湯には無色透明のお湯がたっぷり注がれている。露天風呂は大小あり、程よい湯温でくつろげる。夕焼けの空を見ながらしばし浸かり今日の成果を振り返った。

 外に出ると時間は午後6時を過ぎていた。日も暮れてきたので、今日の湯巡りはここで終了。合計7湯入ったが、やはり花咲温泉と鎌田温泉は気になって仕方がない。国道120号線に戻り、往きとは違って昭和ICから関越自動車道に乗って帰京した。

 帰京後、自宅で写真を整理しながら過去のデータを調べたところ…やっぱり花咲温泉と鎌田温泉は約3年前に入湯していた。写真を見ると、花咲温泉は同じ建物だったが、鎌田温泉は建物が少し変わっていた。500湯も入っていると、よほど印象に残らない限り、3年前に入った温泉ですら分からなくなってしまっている。ボケていると言えばそれまでだが、そろそろデータ整理が本格的に必要だと実感した。

 次はいよいよ毎年恒例の春の集会を目指すロングツーリングだが、仕事の関係で行けるかどうか微妙な空気になってきた。果たして行けるのかどうか…。

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湯巡りする前にまずは腹ごしらえということで、上里SAで見つけた上里SA(下り)限定「肉汁上里うどん」を食す。地元産小麦100%使用した麺はコシがあってボリューム満点。これで680円は安い
湯巡りする前にまずは腹ごしらえということで、上里SAで見つけた上里SA(下り)限定「肉汁上里うどん」を食す。地元産小麦100%使用した麺はコシがあってボリューム満点。これで680円は安い。


完全な民家風の作りの幡谷温泉「ささの湯」。今回はお湯が濁り気味だったので、次に来る時は本来の無色透明のお湯に再入湯したい
完全な民家風の作りの幡谷温泉「ささの湯」。今回はお湯が濁り気味だったので、次に来る時は本来の無色透明のお湯に再入湯したい。


モダンな建物の花咲温泉「花咲の湯」。館内の様子を見て、以前に入ったような感じがしたのだが…自宅に戻って調べたらやっぱり入っていた
モダンな建物の花咲温泉「花咲の湯」。館内の様子を見て、以前に入ったような感じがしたのだが…自宅に戻って調べたらやっぱり入っていた。


花咲温泉の近くで何匹ものこいのぼりが空を舞っていた。こいのぼりは春の風物詩だが、周囲には雪が残っていた
花咲温泉の近くで何匹ものこいのぼりが空を舞っていた。こいのぼりは春の風物詩だが、周囲には雪が残っていた。


内風呂からの眺めがよかった鎌田温泉「ほっこりの湯」だったが、ここも後で調べたら入湯済だったことが判明した。正直複雑な心境…
内風呂からの眺めがよかった鎌田温泉「ほっこりの湯」だったが、ここも後で調べたら入湯済だったことが判明した。正直複雑な心境…。


大露天風呂という名称に恥じない白根温泉の薬師之湯。入っている湯船は熱めのお湯が注がれている。やっぱり露天風呂は広いほうがいい
大露天風呂という名称に恥じない白根温泉の薬師之湯。入っている湯船は熱めのお湯が注がれている。やっぱり露天風呂は広いほうがいい。


国道120号線沿いにある白根温泉はまるでうなぎの寝床のように細長い。左側に露天風呂があり、国道にすぐ近いところに温泉が噴出している
国道120号線沿いにある白根温泉はまるでうなぎの寝床のように細長い。左側に露天風呂があり、国道にすぐ近いところに温泉が噴出している。


国道401号線を走って片品村に着いたところで雪が本格的に降ってきた。周囲には雪が残り、雪が舞っているのが分かるだろうか
国道401号線を走って片品村に着いたところで雪が本格的に降ってきた。周囲には雪が残り、雪が舞っているのが分かるだろうか。


国道120号線沿いの「わたすげの湯」は建物からは想像できないようなデザインコンシャスな湯船が特徴。露天風呂もモダンで綺麗
国道120号線沿いの「わたすげの湯」は建物からは想像できないようなデザインコンシャスな湯船が特徴。露天風呂もモダンで綺麗。


老神温泉にある東明館はぎょうざの満州が運営しているユニークなホテル。以前テレビで観たことがあり、記憶に残っていた
老神温泉にある東明館はぎょうざの満州が運営しているユニークなホテル。以前テレビで観たことがあり、記憶に残っていた。


立て看板を見ると、宿泊や日帰り入浴のほかに食事だけもできるとのこと。老神温泉で餃子が食べたくなったらここに行こう
立て看板を見ると、宿泊や日帰り入浴のほかに食事だけもできるとのこと。老神温泉で餃子が食べたくなったらここに行こう。


山の中に佇む南郷温泉「しゃくなげの湯」。鄙びた場所にもかかわらず、館内は地元の人で賑わっていた
山の中に佇む南郷温泉「しゃくなげの湯」。鄙びた場所にもかかわらず、館内は地元の人で賑わっていた。


夕食は赤城高原SA(上り)で見つけたおおぎやラーメンのFMぐんま G★FORCEプロデュース「赤城おろし 唐っ風みそラーメン」(880円)を食す。上品でジューシーな唐揚げと、味わいのあるみそラーメンは、白米が絶対に欲しくなってしまう組み合わせだ
夕食は赤城高原SA(上り)で見つけたおおぎやラーメンのFMぐんま G★FORCEプロデュース「赤城おろし 唐っ風みそラーメン」(880円)を食す。上品でジューシーな唐揚げと、味わいのあるみそラーメンは、白米が絶対に欲しくなってしまう組み合わせだ。


ブースカ的温泉評価
●幡谷温泉「ささの湯」 ★★★★★
今度是非無色透明の本来のお湯に入ってみたい。
●花咲温泉「花咲の湯」 ★★★★★
お洒落でモダンな館内と開放感のある露天風呂。
●鎌田(寄居山)温泉「ほっこりの湯」 ★★★★★
周囲が眺望できる浴室が魅力的。
●白根温泉「薬師之湯」 ★★★★
あらためて露天風呂のよさを実感できる喜び。
●わたすげの湯 ★★★★
デザインコンシャスな浴室は入浴の価値あり。
●老神温泉「東明館」 ★★★★
日帰りだけではなく餃子も食べてみたいホテル。
●南郷温泉「しゃくなげの湯」 ★★★★★
地元の方たちが多く集う良質な温泉。
*花咲温泉、鎌田(寄居山)温泉は入湯済なので入湯数にカウントしなかった

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は566湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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