第32湯 三重県湯巡りツーリング(前編)
毎年恒例の春の集会も終わり、6月に入って季節は梅雨真っ盛り! と言いたいところだったが、梅雨らしくない日々が続いていた。いつもなら梅雨が明けて、真夏に向けて一気に暑くなる時期に出かけているのだが、今年はその時期が忙しくなることが予想されたので、梅雨の間隙を縫って、先倒しで1泊2日の日程で出かけることにした。
行き先は迷った結果、東京から程よい距離があり、未踏の温泉が多い三重県に決めた。当初、奈良県も視野に入れたのだが、中途半端に終わってしまう可能性があるので、今回は三重県を重点的に攻めることにした(結果的には1湯だけ奈良県だった)。それと600湯近くになると、関東近県はある程度攻略しているので、遠出しないと入湯数が伸ばせないのだ。そんな事情もあり、三重県が浮上したのだ。
三重県への進入方法として、名古屋方面から伊勢湾岸道を通って三重県に入るルートか、浜松から国道を通って愛知県の渥美半島にある伊良湖岬まで行き、伊良湖岬から伊勢湾フェリーで鳥羽まで渡り、そこから名古屋方面に向かうルートの2種類がある。いろいろ検討した結果、後者(伊勢湾フェリー)を選んだ。かつて伊勢湾フェリーには乗った経験があり、浜松から伊良湖まで意外と距離があり、時間がかかった記憶がある。今回はそれを見越してスタートすることにした。
前日、所要があって電車で編集部に行ったところ、帰りに電車がストップする想定外のトラブルが発生。そのため帰宅時間が遅くなったものの、何とか日が変わる前に準備を終えて、予定どおり午前5時30分に自宅を出発。東名高速を走り、朝食代わりに定番の富士宮やきそばを食べるために、富士川サービスエリアでピットイン。その後、浜松西インターで下車。そこから県道65号線から国道1号線に入り、伊良湖岬に向かう国道42号線に進む。予想どおり約2時間かかってフェリー乗り場に到着した。
乗船客がいるはずのフェリー乗り場がやけに静かだなと思ったら、何とフェリーが鳥羽に向けて出航した直後だった。事前に時刻表をチェックしておけばよかった…。ここで約2時間ほどタイムロス。船着場で潮風に当たりながらツーリングマップルを眺めて、今日のルートを決めた。1時間半ほど待ってようやく乗船し、出航した途端に睡魔が襲ってきて、しばし寝落ち。30分ほどで鳥羽に到着した。
鳥羽から伊勢神宮はすぐだが、今まで2回訪れているので今回はパス。タイムロスを挽回するために、鳥羽から伊勢志摩スカイラインを通り、伊勢自動車道を使って勢和多気インターまでショートカットした。こうなると、フェリーを使った意味がほとんどなくなり、さらに余計な出費もかかり、名古屋から伊勢自動車道を使って進入したほうがよかった。我ながら今回のミスは反省…。
勢和多気インターで下車して、国道368号線を奈良方面に走り、国道166号線に入って大宇陀方面に進んだところにある香肌峡温泉「いいたかの湯」を第1湯目に選んだ。「いいたかの湯」は三重県松阪市飯高町にある日帰り入浴施設だ。道の駅「飯高駅」に併設されており、国道166号線からのアクセスは良好。入湯料は600円。浴室は純和風の落ち着いた作り。身体を流して、まずは内湯に浸かる。お湯は無色透明でスッキリとした湯ざわり。浴室を見渡すと、箱風呂(蒸し風呂)や中央には薬湯風呂がある。周囲の景色を見ながら入る露天風呂のほかに、カメ風呂のようなものがあった。
温泉から出て、併設されている道の駅で「松阪牛弁当」をゲット。道の駅には地元産の手作り弁当などが販売されていることが多いので、地元グルメを味わいたい方はチェックしてみてほしい。遅めの昼食を摂り、次なる目的地に向けて出発。国道166号線を国道368号線方面に戻り、名張市方面に向かって国道368号線を走り、道の駅「伊勢本街道御杖」が見えたところで奈良県宇陀市方面に向かう国道369号線に向かう。県境を過ぎたところにある県道81号線に入り、しばし道幅の狭い林道を進み、曽爾(そに)高原にある曽爾高原温泉「お亀の湯」に到着した。
曽爾高原温泉「お亀の湯」は、三重県と奈良県の県境にある奈良県宇陀郡曽爾村にある日帰り入浴施設だ。今回のツーリングで唯一の奈良県にある温泉だ。ちょっと変わった門構えの建物は、風光明媚な小高いところにある。入湯料は700円(土日料金)。石の浴室と木の浴室があり、私が訪れた時の男湯は木の浴室だった。お湯は肌に気持ちいいヌルスベ系。お湯は内湯にたっぷり注がれている。露天風呂に行ってみると、予想外の広さ! 建物の外からは想像できないほどのビッグサイズ。しかも開放感もバツグンで、今まで入った日帰り入浴施設の中でもトップクラスの広さだ。内湯同様にお湯がたっぷり注がれており、かつ適温だった。
素晴らしい露天風呂の出来栄えに感心しながら外に出ると午後4時半前だった。そろそろキャンプ地を決めなければならない。今日はまだ2湯しか入っていないので、できればあと2湯入りたい。ツーリングマップルとにらめっこして、三重県名張市にある赤目温泉に入湯した後、キャンプ場が数件ある伊賀上野(伊賀市)まで行き、もしキャンプできなければ伊賀市内のビジネスホテルに泊まることにした。県道81号線を名張市方面に向かい、国道165号線を榛原(はいばら)方面に進み、県道784号線沿いにある赤目温泉に到着。温泉街だが共同浴場はないので、午後7時00分まで日帰り入浴可能な「対泉閣」という温泉宿を選んだ。
赤目温泉隠れの湯「対泉閣」は三重県名張市赤目町にある温泉宿だ。日帰りの入湯料は850円。露天風呂と大浴場があり、今回は時間の関係で露天風呂だけ入湯した。露天風呂は先ほど入った曽爾高原温泉「お亀の湯」と比べるとこじんまりとしている。お湯は無色透明で、私が入った時だけなのかぬるめで湯量が少なく感じた。今度訪れた時は大浴場に入ってみよう。
「対泉閣」を出ると午後5時半を過ぎていた。できれば日没までに伊賀上野まで到着したい。県道784号線、国道165号線を名張市方面まで戻り、伊賀上野まで通じている国道368号線を走り、伊賀市に到着。途中「忍者博物館」の看板が目に入り、かなりそそられたが今日は無理なので、明日行ってみることにした。国道163号線に入り、まずは岩倉峡公園内のキャンプ場に行ってみたが、子ども会で貸切とのことで×。
続いて島ヶ原温泉「やぶっちゃ」に行ったところ、キャンプはできるがライダー向けの料金設定がなく、サイト使用料が一律4,500円とのこと。受付の方はとても親切で、使用料が安くできるかどうか抜け道(?)を探ってもらったが、結局は4,500円かかるとのこと。時間はすでに午後6時半を過ぎており、市内のホテルに泊まっても料金はむしろ高くなってしまう。悩んだ挙句、日帰り入浴施設があるここに決めた。
先客はいるが、好きな区画にテントを張っていいということなので、ちょっと離れたところにテントを張った。気づくと午後7時を過ぎていたので、夕食前に温泉に入ることにした。島ヶ原温泉「やぶっちゃ」は三重県伊賀市にある総合レジャー施設だ。場内には日帰り温泉(やぶっちゃの湯)のメインにキャンプ場やスポーツ施設が併設されている。入湯料は800円だが、キャンプ場利用者は100円引きになるとのこと。キャンプ場から徒歩で温泉に行けるのは嬉しい。和風作りの浴室内は地元の方で賑わっている。無色透明のお湯はややぬるすべ感があり、疲れた身体を癒してくれる。露天風呂のほかに源泉温度35.7度のかけ流し風呂もあり、良質のお湯が十分楽しめる。
火照った身体を冷ましながらテントに戻って夕食タイム。夜空には満月が輝き、よく考えると自分のツーリングでは珍しく雨が降っていない。このまま明日まで雨が降らないことを祈ろう。気温や湿度は高くなく、とても快適な夜だ。
夕食後、寝袋に入りながら今日の出来事を振り返った。午前中のフェリーに乗り損ねて痛恨のタイムロスをした件といい、想定外の出費がかさんだキャンプ場の件といい、あまりに行き当たりバッタリ過ぎる、子供っぽい自分の行動に反省しきりだった。でも一方で「まあいつもうまくいくわけじゃないしさ…でも結果的に4湯入れたじゃん…雨も降ってないし。明日6湯入れば合計10湯、しかも入湯数が585湯になるぞ!」と独り言を言いながら、ツーリングを楽しんでいるノウテンキな自分もいることも確かだった。
翌朝、周囲は霧で覆われているが、日差しが差し込んでいる。朝食を摂り、夜露に濡れたテントを乾かしながら撤収作業を行ない、午前8時30分にはキャンプ場を出発した。今日は第1湯目に選んだ伊賀市内にある大山田温泉「さるびの」に向かう前に、時間調整を兼ねて「忍者博物館」に行ってみることにした。目標湯数は6湯だが、もちろん今日も行き当たりバッタリなツーリングだ。さあ、どうなることやら。
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●香肌峡温泉「いいたかの湯 | ★★★★★ | |
道の駅に併設された気軽に立ち寄れる温泉。 | ||
●曽爾高原温泉「お亀の湯」 | ★★★★★ | |
入って損はない広さと眺望に優れた露天風呂。 | ||
●赤目温泉「対泉閣」 | ★★★★★ | |
赤目四十八滝が近くにある山間に湧き出る温泉。 | ||
●島ヶ原温泉「やぶっちゃ」 | ★★★★★ | |
伊賀上野を訪れたら入りたいキャンプ場内の温泉 |
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