湯めぐりみしゅら~ん


第34湯 妙高高原周辺の温泉

 酷暑の夏が過ぎ、気づくと季節は初秋になっていた。夏の間、同僚と秩父方面にツーリングに行ったり、9月初旬に栃木県方面にソロツーリングに行ったりして(この時、人生初の走りゴケをして、右足が打撲の影響でパンパンに腫れ上がって3週間ほど大変なことになっていた)、入湯数が590湯になっていた。これで600湯まであと10湯となり、年内には600湯を達成できそうな予感がしてきた。本当は2〜3泊のロングツーリングして一気に達成したいところだが、仕事が立て込んでいて11月下旬まではお預け。とは言っても落ち着いてはいられない性分なので、仕事の合間を縫って日帰りツーリングして入湯数を稼ぐことにした。

 片道100〜150km圏内は入っているところが多く、片道200km以上のところで探してみると、意外な穴場があった。それは新潟県の妙高市だった。冬はスキーで賑わう妙高高原があるところだ。ここなら1日で6湯は入れそうだ。自宅から片道約270km、日帰りで行くにはちょうどいい距離だった。連休をあえて避けて9月24日にツーリングを決行した。

 午前6時30分に自宅を出発。東京を離れるにつれてだんだんと天気が悪くなり、群馬県に入って上信越自動車道に進む頃には雨が降ってきた。でも予報では長野・新潟方面は晴れなので、それを信じて上信越道を突き進む。やがて軽井沢を過ぎて東部湯の丸インター近くに来ると天気が急速に回復し、さっきまでの天気がウソのようにスカッと晴れ渡った。肌に当たる風は心地よく、初秋を感じる気持ちよさ。

 午前10時30分に妙高高原インターに到着。ここからは国道18号線を通って、妙高高原の温泉で最も有名な赤倉温泉に通じる県道39号線に向かう。まず第1湯目は、赤倉温泉周辺で最も山奥にある燕温泉の「河原の湯」と「黄金の湯」に向かうことにした。

 妙高高原インターから10分ほどで赤倉温泉に到着。赤倉温泉から燕温泉方面に向かう林道の周囲はスキー場だらけ。冬はスキー客で賑わうのだろう。燕温泉に向かう林道にもかからわず対向車がいないのに不審に思いながら進んでいくと、トンネル手前で何と通行止めの表示が…。カウンターパンチを食らって燕温泉を諦めかけたが、ツーリングマップルを見ると県道396号線を通って関温泉経由で行けるようなので、赤倉温泉まで引き返し、気分を取り戻すべく赤倉温泉にある野天風呂「滝の湯」に入ることにした。

 赤倉温泉野天風呂「滝の湯」は新潟県妙高市赤倉にある日帰り入浴施設だ。温泉街の奥にあり、4月中旬から11月上旬までの営業期間となっている。入湯料は500円。その名のとおり露天風呂がメインとなっており、脱衣場から出ると、やや白濁したお湯に満たされた広々とした湯船が眼前に広がった。第1発目の温泉としては申し分ない。もちろんお客は自分だけ。湯加減はほどよく、肌触りもいい。初秋とは思えない日差しが照りつけるが、澄み切った空を見ながら入る露天風呂は最高!

 あまりの気持ちよさに少々長湯してしまったが、第2湯目に向かう。燕温泉に向かう前に途中にある関温泉に入ることにした。途中道に迷ったが、県道396号線を走り、赤倉温泉から10分ほどで関温泉に到着。ここは温泉宿だけなので、日帰り入浴できそうなところを選び、温泉街の入口に近い温泉旅館「登美屋」に決めた。関温泉(関山温泉とも言う)の「登美屋」は新潟県妙高市関温泉にある温泉旅館だ。入湯料は500円。程よい大きさの内風呂のみだが、窓からの眺望はバツグン。茶褐色の濁り湯はやや熱め。旅館のパンフレットによれば、かの戦国時代の武将・上杉謙信がこの湯に通ったという。それも納得できるお湯だ。今度は泊まってお湯をじっくり堪能してみたい。

 関温泉の次に向かう温泉は、先ほど出鼻を挫かれた燕温泉。関温泉から燕温泉に向かう林道を10分ほど走った、林道の行き止まりに燕温泉があった。赤倉温泉、関温泉、燕温泉ともに地図で見るよりも意外に隣接しており、連湯に適している。もちろん雪が降っていない今の季節だからできることだが…。燕温泉は新潟県妙高市燕温泉にある秘湯だ。旅館が数軒立ち並ぶちょっとした温泉街があり、入り口にある駐車場に車やバイクを置いて温泉に向かう。燕温泉の特徴は「河原の湯」と「黄金の湯」という2つの露天風呂があることだ。特に「河原の湯」は温泉街から歩いて15分ほどの山中にある。

 駐車場にバイクを置き、タオルやカメラ、貴重品だけを持って、まずは「河原の湯」に向かう。道しるべに沿って山肌に設けられた道を進み、周囲を山に囲まれた渓谷の奥に「河原の湯」はあった。入浴時間は日の出から日没まで。入湯料は無料。ここは混浴となっており、脱衣所は男女別となっている。岩や石で作られた湯船はそれほど大きくないが深さがあり、硫黄臭が漂う白濁したお湯が注がれている。場所によって微妙にぬるかったりするが、それがこういう秘湯の醍醐味。適温のところを探し、すでに色づき始めている山肌を眺めながら湯に浸かる。赤倉温泉、関温泉とは違った、まさにワイルド感満載、達成感のあるお湯だ。やはり、秘湯はこうでなくてはならない。

 大満足の「河原の湯」を出て、来た道を戻って、今度は「黄金の湯」に向かう。「河原の湯」方面との分岐点から左側の道を入り、舗装はされているものの予想外の急勾配の階段と山道を進み、息を切らしながら3分ほどで「黄金の湯」に到着した。ここは男女別となっており、入湯料は無料。「黄金の湯」の湯船は巨石を連ねて出来ている。白濁しているお湯だが、こちらのほうが成分が濃いのか、白い湯の花(=温泉の成分)が湯船の底に沈殿しておりヌルッとしている。周囲を森に囲まれていて森林浴気分が味わえる。「河原の湯」もいいが、「黄金の湯」も捨てがたい魅力を持っている。

 良質・良感な温泉に入ってルンルン気分で駐車場に戻ってきたら、カメラを入れたポーチが見当たらない。どうやら「黄金の湯」に忘れてきたようだ。急勾配の道を進むのは憂鬱だが仕方ない。来た道を戻り、「黄金の湯」の入口でポーチを見つけて駐車場に戻ってきたら疲れてしまった。こうなるとまた温泉に入らねばならない(笑)。ということで、第4湯目に向かうことにした。

 妙高市周辺の温泉は妙高温泉、池の平温泉、杉野沢温泉が残っている。いずれも距離が離れていないので、妙高温泉に入ってから池の平温泉、杉野沢温泉に入ることにした。関温泉を通過して赤倉温泉に戻り、妙高温泉に向かう県道187号線に入る手間の建物に温泉のマークが描かれていた。よく見ると池の平温泉と描かれている。せっかくなので先に池の平温泉に入ることにした。

 この建物の名称はランドマーク妙高高原「温泉かふぇ」。新潟県妙高市池の平温泉にあるレストランやお土産屋を併設した日帰り入浴施設だ。入湯料は800円。館内は近代的な作りで、脱衣場や湯船も綺麗で広々としている。内湯は透明なお湯だが、露天風呂は看板にも描かれているとおり、ダークグレー色の黒泥湯となっている。この湯は池の平温泉の湧出地である妙高南地獄谷温泉の拘泥を混ぜることで源泉を再現しているとのこと。湯温はそれほど高くないものの、成分の濃さを感じる。もちろん内風呂のお湯も天然温泉100%なので、成分の異なる2つのお湯が同時に楽しめてしまう。なかなか贅沢な温泉だ。

 池の平温泉を出たところで時間は午後3時20分を過ぎていた。気がつけば昼飯も食わずに温泉に入り続けていた。腹は減っているが中途半端な時間なので連湯を続行することにした。県道187号線を進み、上信越自動車道を通過して妙高市街に入り、狭い住宅街を迷いながら目的地である妙高温泉「大湯」に到着した。

 妙高温泉「大湯」は新潟県妙高市妙高温泉にある共同浴場だ。私は共同浴場が大好きで、建物の雰囲気からしていい感じがする。入湯料は200円。地元の方々が続々とやってきて、声を掛け合っている。まさに共同浴場の日常である。内風呂だけだが、予想どおり源泉と思われる無色透明の熱めのお湯が注がれている。身体を洗い、何度か掛け湯してお湯に慣らしてからお湯に浸かる。ここには都会の喧騒などもちろんなく、まったりとした時間が流れる。こんな良湯がそばにあるのは羨ましい。

 外に出ると初秋とは思えない日差しが照りつけるが、日は落ち始めている。汗を拭いながらジャケットを羽織って最終目的地である杉野沢温泉センター「苗名の湯」に向かう。県道187号線を池の平温泉方面に戻り、県道399号線を杉野沢温泉方面に向かい、約10分ほどで到着した。杉野沢温泉センター「苗名の湯」は新潟県妙高市杉野沢にある日帰り入浴施設だ。入湯料は450円。建物はロッジ風で、館内も木材が使われた落ち着いた雰囲気。内風呂のみだが、無色透明の炭酸水素塩・塩化物温泉のお湯は優しく、疲れた身体を癒してくれる。連湯した一日を締めくくるのに最適なお湯だった。

 外に出ると日が沈みかけていた。今日の連湯はこれで終了。合計6湯入り、入湯数は596湯となった。妙高温泉方面に戻り、妙高高原インターから上信越自動車道、関越自動車道を通って帰京した。

 意外に充実していた妙高高原周辺の温泉。600湯まであと4湯になり、予定どおり11月下旬にロングツーリングできれば600湯達成できる。さあ頑張って600湯達成しよう。

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関越自動車道嵐山PAで見つけた嵐山町のB級グルメ「嵐山辛もつ焼きそば」。ちょっとピリ辛の食がススムおいしさだった。お値段650円なり
関越自動車道嵐山PAで見つけた嵐山町のB級グルメ「嵐山辛もつ焼きそば」。ちょっとピリ辛の食がススムおいしさだった。お値段650円なり。


天候の回復を記念して(?)東部湯の丸SAで見つけた「パイシュー」を食す。パイ生地で包んで焼き上げたボリューム感たっぷりのシュー。お値段199円なり<br />
天候の回復を記念して(?)東部湯の丸SAで見つけた「パイシュー」を食す。パイ生地で包んで焼き上げたボリューム感たっぷりのシュー。お値段199円なり。


ブースカのツーリングにアクシデントはつきもの。赤倉温泉から燕温泉に向かう林道は通行止めだった。でも関温泉経由で燕温泉には行けた<br />
ブースカのツーリングにアクシデントはつきもの。赤倉温泉から燕温泉に向かう林道は通行止めだった。でも関温泉経由で燕温泉には行けた。


赤倉温泉の野天風呂「滝の湯」は望外の良さだった。開放的な湯船にはやや白濁したお湯がたっぷり注がれている。天気も上々で気分最高!<br />
赤倉温泉の野天風呂「滝の湯」は望外の良さだった。開放的な湯船にはやや白濁したお湯がたっぷり注がれている。天気も上々で気分最高!


山間に佇む関温泉にある旅館「登美屋」の浴室からの眺めは絶景。熱めのお湯は茶褐色の濁り湯で、良質な温泉であること漂わせている
山間に佇む関温泉にある旅館「登美屋」の浴室からの眺めは絶景。熱めのお湯は茶褐色の濁り湯で、良質な温泉であること漂わせている。


燕温泉の温泉街から徒歩で15分ほどの渓谷沿いにある混浴露天風呂「河原の湯」。硫黄泉が注がれているまさに秘湯と言っても過言ではない<br />
燕温泉の温泉街から徒歩で15分ほどの渓谷沿いにある混浴露天風呂「河原の湯」。硫黄泉が注がれているまさに秘湯と言っても過言ではない。


燕温泉「黄金の湯」は温泉街から徒歩約3分だが、この写真だけでは伝わってこないのが残念なほど、急勾配の階段と山道を歩かなければならない
燕温泉「黄金の湯」は温泉街から徒歩約3分だが、この写真だけでは伝わってこないのが残念なほど、急勾配の階段と山道を歩かなければならない。


「黄金の湯」に向かう途中で撮影した燕温泉のこじんまりとした温泉街。夏空のように澄み渡った空だが、頬を伝う風はすでに秋の様相だった
「黄金の湯」に向かう途中で撮影した燕温泉のこじんまりとした温泉街。夏空のように澄み渡った空だが、頬を伝う風はすでに秋の様相だった。


たまたま見つけた池の平温泉ランドマーク妙高高原「温泉かふぇ」。看板のとおり露天風呂は妙高南地獄谷温泉の黒泥湯が使われている
たまたま見つけた池の平温泉ランドマーク妙高高原「温泉かふぇ」。看板のとおり露天風呂は妙高南地獄谷温泉の黒泥湯が使われている。


まさに共同浴場の風情が漂う妙高温泉「大湯」。こんな温泉の共同浴場が自宅や仕事場の近くにあったら毎日通ってしまうだろうな…
まさに共同浴場の風情が漂う妙高温泉「大湯」。こんな温泉の共同浴場が自宅や仕事場の近くにあったら毎日通ってしまうだろうな…。


ロッジ風の作りの杉野沢温泉「苗名の湯」。ツーリングはもちろんハイキングやスキー帰りに立ち寄るには最適な日帰り温泉だ
ロッジ風の作りの杉野沢温泉「苗名の湯」。ツーリングはもちろんハイキングやスキー帰りに立ち寄るには最適な日帰り温泉だ。


ブースカ的温泉評価
●赤倉温泉「滝の湯」 ★★★★★
妙高高原を代表する良質なお湯が注がれる露天風呂。
関温泉「登美屋」 ★★★★
山間の旅館で歴史ある重厚かつ有効な温泉が楽しめる。
●燕温泉「河原の湯」 ★★★★★
まさに秘湯の風情漂う渓谷沿いに佇む混浴風呂。
●燕温泉「黄金の湯」 ★★★★★
温泉成分がたっぷり注がれている白濁のお湯が特徴。
●池の平温泉「温泉かふぇ」 ★★★★★
ダークグレーの黒泥湯は入湯の価値あり。
●妙高温泉「大湯」 ★★★★
共同浴場らしい熱めのお湯と地元の雰囲気が味わえる。
●杉野沢温泉「苗名の湯」 ★★★★★
疲れた身体を癒してくれる肌に優しいお湯。

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は596湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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