湯めぐりみしゅら~ん


第35湯 京都・兵庫湯巡りツーリング(1日目)

 イベントや別冊の制作が重なった怒涛の10〜11月進行が終了し、予定どおり11月21〜24日の4日間、休暇が取れることとなった。この貴重な4日間を利用してどこにロングツーリングに行くか…季節的に東北や信州、上越方面など東日本は厳しい。そうなると西日本方面になる。いろいろ考えた結果、まだ未湯の有馬温泉や城崎(きのさき)温泉がある兵庫県方面に向かうことにした。今年は福井県、三重県など西日本方面に出かけることが多かったので、2013年を締めくくる最後のロングツーリングの目的地として兵庫県はふさわしいだろう。

 大阪方面に向かう場合に問題になるのが、片道約600km、約8時間の行程をどう攻略するかだ。いつもなら往路は早朝(というより真夜中)に出発して、昼前後に到着する行程だが、気温の低さを考慮すると、夜中の行軍は控えたい。かといって朝出発して夕方前に到着するのはもったいない。そこで、以前から考えていた「午後9時出発→午前3時頃に名神高速道路EXPASA多賀のレストイン多賀で休憩→午前6時頃出発→午前8時前後に大阪周辺着」という作戦で進めてみることにした。一方、復路は夜に帰京せず、最終到着地で1泊して早朝帰京する作戦にした。

 さらに今回は、私のツーリングとしては異例のすべて「旅館もしくはホテル滞在」という宿泊体制を選んだ。11月という季節柄、キャンプ場は休止しているところが多く、現地であたふた迷って泊まれないということを避けたかった。考慮した結果、1日目は城崎温泉、2日目は姫路市、3日目は神戸か大阪に宿泊という、旅館やホテルのある都市をその日の最終目的地に定めることにした。費用はかかるが、携行する荷物も軽くなり、身も心も負担が減るので、これはこれでいいかと思った。

 出発前日にほとんど準備を済ませて、出発当日は仕事を早く切り上げて予定どおり午後9時00分に自宅を出発。甲州街道、環状八号線から東名高速道路に入り、宅配便などの長距離トラックが多く行き交う中、ひたすら西を目指す。そして午前3時30分にEXPASA多賀の「レストイン多賀」に到着。ここまでほぼ作戦どおりだ。

「レストイン多賀」は宿泊と休憩(仮眠)、入浴ができる貴重な施設だ。入浴だけなら1時間未満500円、入浴+休憩なら1時間以上6時間未満で800円となっている。受付で800円を払い、まずはお風呂で冷えた身体をリフレッシュ。仮眠室に向かうと、平日のためか空いている。しばし仮眠を取って午前7時00分に出発。朝もやの中、通勤渋滞が始まっている名神高速道路を進み、午前8時に京都南インターで降りて、ここから最初の目的地である名勝「天の橋立」を目指す。

 国道1号線を通って朝のラッシュで賑わう京都市内を通過し、国道9号線に進み、京都縦貫自動車道に入る。京都は底冷えするというが予想以上に寒い。途中、丹波インターで下りていったん国道173号線を進み、京丹波わちインターから再び京都縦貫自動車道に入り、宮津天橋立インターで降りる。県道9号線、国道178号線を通って「天の橋立」に午前10時30分に到着した。「天の橋立」が一望できる天橋立ビューランドに登り、「天の橋立」を見学。天の橋立近辺にも温泉はあるが、今回はパスして、国道178号線から国道312号線に入り、天橋立から20分ほどのところにある小野小町温泉「小町の湯」に向かった。

「小町の湯」は京都府京丹後市大宮町にあるセントラーレ・ホテル京丹後に併設された日帰り入浴施設だ。券売機では入湯料が払えなかったので受付で払ったところ、露天風呂が改修中とのことで、通常600円が300円になっていた。ちなみに露天風呂は11月23日から再開されているとのこと。内風呂はそれほど大きくないものの、浴室は落ち着いた作り。ちょっと濁りのあるお湯はヌルスベ系で肌触りが優しい。冷えた身体が蘇る。露天風呂が入れなかったのが残念。京都の温泉は未湯だったので、小野小町温泉が初めてとなった。小野小町温泉を後にして次に向かったのが、国道312号線から国道482号線に入り、30分ほど走ったところにある「弥栄あしぎぬ温泉」だ。

「弥栄あしぎぬ温泉」は京都府京丹後市弥栄町にある日帰り入浴施設だ。駐車場に着くと、煙突のような建物の上階から山裾にかけて通路があるのが見えた。入湯料は600円。中に入ると、煙突と通路は浴室のある建物(温泉館)に向かうためのものであることがわかった。両側がガラス張りの通路(パノラマブリッジというらしい)を通って浴室に向かう。浴室は「王国の湯」と「卑弥呼の湯」の2つがあり、この日の男湯は「王国の湯」だった。高台に建つ浴室は開放感があり、内風呂からは周囲が見渡せる。お湯は無色透明でほどよい熱さ。露天風呂に向かうと、一見すると湯船がひとつだけのように見える。しかし、お湯が流れるその先は滝になっており、階段を降りていくと下にも湯船があった。つまり露天風呂は上下2段型なのだ。どちらも眺めはいいが、上段のほうがお湯が熱めなのは構造上仕方ない。長湯するなら下段のほうがいいだろう。

「弥栄あしぎぬ温泉」に入ったところで午後1時45分。ここまで2湯入り、身体はすっかりリフレッシュした。ふと気付くと、600湯まであと2湯になっていた。当初、宿泊地である城崎温泉で600湯にしようかと思ったが、まだ時間があり、城崎温泉に向かうまで何湯かある。今回は現地での入湯数を優先して、600湯通過はサラッと過ごすことにした。

 県道53号線から国道178号線に入って次に向かったのは木津温泉だったが、日帰り温泉が発見できなかったのでパス。木津温泉から数キロ走ったところにある夕日ヶ浦温泉外湯(上野温泉湯元)「花ゆうみ」に向かった。夕日ヶ浦温泉外湯「花ゆうみ」は日本海近くにある京都府京丹後市網野町にある日帰り入浴施設だ。建物の前には庭園とグラウンドゴルフ場が広がり、一見すると日帰り入浴施設には見えない。入湯料は600円。浴室内は広々としており、ゆったりくつろげる。適温のお湯は無色透明。露天風呂は建物内の庭園と同じような作りとなっており、園内には滝が流れている。湯船だけではなく周囲の景観に目が行き渡らないところが多い中で、ここはこだわっている。
 駐車場に戻ると、空はいかにも日本海沿いのような雲に覆われており、にわか雨がぱらつき始めた。城崎温泉に近づいてきたが、午後6時に到着したいので、まだ2湯くらいは入れそうだ。

 次に向かったのは、国道178号線を城崎温泉方面に15分ほど走ったところにある久美浜温泉「湯元館」だ。久美浜温泉「湯元館」は京都府京丹後市久美浜町にある温泉旅館だ。入湯料は600円。館内はどこか昭和の香りがして、玄関の近くに男湯があった。内風呂はそれほど大きくないが、露天風呂は縦長で意外と奥行きがある。露天風呂の出入り口から右側(内風呂横にある)のほうに行ってみると、お湯は熱めで湯量も豊富。露天風呂の中心部にくると、お湯はややぬるくなった。上がってから脱衣場の貼り紙を見ると、56℃の高温源泉と32℃の低音源泉を混ぜているという。場所によって違いがあるのはそのためかもしれない。一律の湯温もいいが、自分にあった湯温で入れるのもいい。長湯したいならちょっとぬるめのところを見つけて入りたい。

 駐車場で出発準備をしていたら地元の方が声をかけてくれた。話を聞くと、ここ数日間は例年にない寒さとのこと。日本海沿いだから寒いのかと思っていたらそうでもなかったようだ。多少厚着してきて正解だった。

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名神高速道路多賀サービスエリア(EXPASA多賀)内にある「レストイン多賀」。建物は下り線にあるが、上り線からでも利用可能だ
名神高速道路多賀サービスエリア(EXPASA多賀)内にある「レストイン多賀」。建物は下り線にあるが、上り線からでも利用可能だ。


まさに写真で見たとおりの名勝「天の橋立」。直前まで曇り空だったが、ビューポイントに来たら見事に晴れ渡った
まさに写真で見たとおりの名勝「天の橋立」。直前まで曇り空だったが、ビューポイントに来たら見事に晴れ渡った。


天の橋立に来たらやってみたかった「股のぞき」。私以外にも多くの観光客が股のぞきしていた
天の橋立に来たらやってみたかった「股のぞき」。私以外にも多くの観光客が股のぞきしていた。


セントラーレ・ホテル京丹後に併設された小野小町温泉「小町の湯」。訪れた時は露天風呂が改修中で入れなかった
セントラーレ・ホテル京丹後に併設された小野小町温泉「小町の湯」。訪れた時は露天風呂が改修中で入れなかった。


ドンと構えたパノラマブリッジが特徴の「弥栄あしぎぬ温泉」。上下2段構造の露天風呂もユニークだった
ドンと構えたパノラマブリッジが特徴の「弥栄あしぎぬ温泉」。上下2段構造の露天風呂もユニークだった。


建物前に庭園とグラウンドゴルフ場が広がる夕日ヶ浦温泉外湯「花ゆうみ」。露天風呂も滝が流れる見事な庭園作りだった
建物前に庭園とグラウンドゴルフ場が広がる夕日ヶ浦温泉外湯「花ゆうみ」。露天風呂も滝が流れる見事な庭園作りだった。


600湯目の記念すべき温泉となった久美浜温泉「湯元館」。奥行きのある露天風呂は湯温の異なる源泉が供されている
600湯目の記念すべき温泉となった久美浜温泉「湯元館」。奥行きのある露天風呂は湯温の異なる源泉が供されている。


円山川温泉に向かう途中の小さな漁村で止まってふと振り返ったら虹が出ていた。夕日に映える穏やかな内海の景色もよかった
円山川温泉に向かう途中の小さな漁村で止まってふと振り返ったら虹が出ていた。夕日に映える穏やかな内海の景色もよかった。


城崎温泉の近くにある「円山川温泉」。緑がかったぬるめの濁り湯が特徴。この地域の意外な穴場スポットかもしれない
城崎温泉の近くにある「円山川温泉」。緑がかったぬるめの濁り湯が特徴。この地域の意外な穴場スポットかもしれない。


 久美浜温泉に入湯したところで目標の600湯に無事達成した。500湯から2年ちょっと、年間50湯のペースだった。長いようで短かった。このペースだと1000湯まであと8年かかる。先は長いが、まずは700湯目指して頑張ろう。

 そろそろ城崎温泉に向かいたいところだが、もう1湯入ることにした。国道178号線を通って県道11号線に入り、円山(まるやま)川にかかる港大橋を渡って県道3号線を城崎方面に進んだすぐのところにある「円山川温泉」だ。「円山川温泉」は兵庫県豊岡市小島にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円。シンプルな浴室に長方形の内風呂のコンビネーションだが、お湯はやや緑がかった濁り湯で、ちょっと塩気がある。湯温はややぬるめで、露天風呂の湯音はさらにぬるめだった。源泉の温度が約43℃とのことなので、ほぼ源泉どおりだ。長湯するにはちょうどよく、本を読みながら浸かっている先客がいた。泉質そのものは良好なので、内風呂中心に浸かった。

 外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。城崎温泉での宿泊先はネットで検索して予約した温泉旅館「川口屋本館」。素泊まり6,300円(入湯料税含めて6,640円)、さらに城崎温泉の名物である7つの外湯が無料で入れる入浴パス「ゆめぱ」がついている。この好条件に惹かれたと言っても過言ではない。円山川温泉から5分ほどで城崎温泉に到着。温泉街の真ん中くらいに目的地はあった。

 玄関前にバイクを駐車させてもらいチェックイン。部屋で装備を解除して、一息ついたところで外湯と夕食に向かうことにした。ここまで温泉に600湯入ったが、まともに温泉旅館に泊まって外湯巡りをしたことがなかった。部屋に置いてあった案内図を入念にチェックしてプランニング。定休日と営業時間の関係でどうしても「柳湯」だけは入れない。それは諦めて他の6湯すべて入ることができるのか。果たしてどうなることやら…。

ブースカ的温泉評価
●小野小町温泉「小町の湯」 ★★★★★
改修後の露天風呂が気になるヌルスベ系の温泉。
●弥栄あしぎぬ温泉 ★★★★
ユニークな上下2段構造の露天風呂が魅力的。
●夕日ヶ浦温泉外湯「花ゆうみ」 ★★★★★
手入れの行き届いた庭園風の露天風呂が特徴。
●久美浜温泉「湯元館」 ★★★★
2つの異なる湯温の源泉をミックスした良湯。
●円山川温泉 ★★★★ ★★★★
城崎温泉近くの長湯に適したぬるめのお湯が特徴。

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は602湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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