順逆無一文

第47回『絶滅危惧種ライダー』


 9月某日、9時33分。東京・品川駅と接続している某イベントホール屋さんに電話をかけた。
 プルルル、プルルル…。
 

「はい、△△ホールです」
「もしもし、△△ホールさんですか? 10時30分から、○○さんの発表会があると思うんですけれど、えっと、バイクの駐車場ってありますか?」
「あぁぁ、ちょっとお待ち下さい」
 (チャララララララア~♪……と待機音で待つこと42秒)
「お待たせしました。△△ホールは…、バイクの駐車場は、無い、ですね」
「バイクメーカーさんのイベントなのに?」
「はい!」
 (キッパリ)
「ただ会場の近くに、バイクとか自転車とかが止められる駐輪場、パーキングが近くにあるので、そこに…」
「自転車はともかく、バイクはいつも埋まっているんですよ」
「はぁ…」
「分かりました」
「すみません」
「論外ですね」
「はい、失礼します」



 ちなみに品川駅の東口で、時間貸しをしているバイク駐車場をWEBで検索した結果は以下のとおりでした。
 
○品川インターシティ二輪車駐車場
 
収容台数:31台、営業時間:24時間、利用料金:最初の2時間無料、2時間以上は入庫から6時間100円。
※品川駅の東口へまともにアクセスできる二輪車駐車場はこちらしか出てこない。ただし、この値段の安さもあって日中は空いているのを見たためしがない。
 
○エコステーション21八ツ山歩道橋下自転車等駐車場
 
収容台数:38台、営業時間:24時間、利用料金:6時間100円。
※一応住所は品川だが、お隣の北品川の駅(京急)の方が近い。なので現場の実態は調べたこと無し。
 
 以上、「s-park」さんのサイトで調べて出てきたのがこのわずか2件のデータだけです。
 
 二輪ライダーが最も頼りにすべき公の団体といえる一般社団法人「日本二輪車普及安全協会」さんのWEB駐車場検索サイト、「全国バイク駐車場案内」http://www.jmpsa.or.jp/society/parking/での検索ではどうでしょうか。これが結果はもっと悲惨で、品川駅の東口にアクセスできる現実的な駐車場は、上記のエコステーション21八ツ山歩道橋下自転車等駐車場ただひとつしか出てこない。西口まで検索範囲に広げても、収容台数38台のエコステーション21京急品川駅前駐輪場、の1件がプラスされるだけ。こちらも日中はほぼ満車。
 
 たかが発表会ごときで“犯罪者”になるわけには行かないので、結局は電車を選択することになった。
 
 もうバイクは生活の足としては使えないのだろうか。50年、ほぼ毎日のごとくバイクとともに生活してきているが、歳の影響ばかりではなく、駐車場の存在が思い浮かばないので出かけるのをあきらめた、などというケースもこのところ頻度が増してきている。
 
 趣味でバイクに乗る、大いにけっこう。週末に走ってくるのが楽しみ、これまた大いにけっこう。しかし、都市部に住む人間が、バイクで生活することが現実問題として不可能になりつつあるのを、バイクメーカーのお偉い皆さんはご存じなのだろうか、と思ってしまう。バイクは趣味で乗っている人間ばかりじゃない、のだと。
 
 WEBサイトで駐車場を調べてそこに駐めればいいじゃないか。まさか、本気でそう思っているんじゃないのかとさえ思う。
 
 趣味の乗り物。それを否定する気は毛頭無いが、生活の乗り物、さらには『人生をともにする乗り物』としてのバイクの存在を放棄してしまっていませんか。
 
 冒頭のイベント会場は、巨大規模で再開発したエリアだけあって、広々とした空間に緑やオープンスペースがいやというほど存在する。その一角を開放してバイクを止められるゾーンに設定してくれるだけで、少なくとも品川駅東口のバイク駐車難問題は解消する。何でもかんでも料金徴収システムを導入しなければなどと考えるから一向に駐車問題が解決しない。
 
「無秩序状態になる」「事故が起きたらどうする」……昔を振り返ってみて欲しい。ほとんどのバイク乗りは、頭を使って自己責任で街中で邪魔にならない場所を見つけては駐車をしていたはず。人の迷惑顧みず所構わず駐車していたのはゾンビ・ライダーばかりであって、少なくとも心あるライダーは周囲に配慮して駐めていた。
 
 昨今、二輪車の駐車困難問題が社会的にもわずかながら認識され始めたおかげで、取り締まりが若干緩くなってきたのかな、と思ったら、また一番でのさばり始めたのが、取り締まり強化の元凶を作ったゾンビくんたちで、未だ心あるライダーは、確実に駐められるかどうか分からない状態では、犯罪者になるかならないかの“賭け”に出るわけにはいかないと思っている。
 
 もう、日本では、バイクとともに生活することは出来ないのだろうか。
 
 ちなみに、件の日本二輪車普及安全協会のバイク駐車場検索サイト、私が今住んでいる横浜市旭区は、前回見たときは項目としては表示されたが、その中身はゼロ! ただの1件も二輪駐車場のデータが無し。今回見たら、旭区という項目自体が消滅しておりました。横浜市のひとつの区に一ヵ所も時間貸しの二輪車駐車場が無いというのはやはり異常、と思う方が協会の中にもいらっしゃったのでしょうか。お隣の保土ヶ谷区では相変わらず2件のみ(それも125ccまで)ではありましたが、まがりなりにもデータは表示されました…。
 
                 ※
 
 以前に問題提起させてもらった記憶があるナンバープレートカバーの取付が、今後は全面的に規制されることになりそうだ。
 
 9月24日付の日本経済新聞のWEBニュースによれば、国土交通省は来年度にも有色、無色にかかわらずナンバープレートをカバーする製品の装着を禁止する方針を固めたという。
 
 現在は、光の透過を低下させる着色製品のみが規制されているが、透明であっても汚れの付着や光の反射により見づらくなるケースが多く、道路運送車両法の「見やすいように表示」の観点から無用なカバーは不必要と判断したということだろう。
 
 ナンバープレートカバーを取り付ける理由がいかなることであれ、万が一の事故や違反などの時に当事者が逃げれば“当て逃げカバー”、“逃げ得カバー”となるわけで、ナンバープレートへの一切の追加物の装着を規制の対象とするのは当然の道理。
 
 ちなみに2007年に国交省がネットでナンバープレートカバーについてアンケートを実施。それによれば、回答者の50.7%の方が「非常に見えにくい」、そして65.9%が「全面禁止」を支持したという。
 
 二輪車や歩行者がひき逃げ、当て逃げされた場合、ナンバープレートの情報は事件解決への重要な手がかり。もともとナンバープレートの存在意義を無にするようなカバーは、いかなる理由であっても許すべきではない、というのが以前にも主張したとおり。
 
 来年の通常国会に道路運送車両法改正案として提出される方向だ。めでたしめでたし。偽造ナンバープレートを付けて走っているような“犯罪”案件とはまた別の次元での話題でした。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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