第49回『二輪車にABSを義務化』
「YAHOO! ニュース」さんで控えめに報道されただけのようなので、ご存じじゃない方も多いかと思うが、2018年10月1日以降に作られる二輪の新型車と、2021年10月1日以降に作られる継続生産車に、ABSの装着が義務化されることになったそうだ。しかも注意したいのは、125ccまでの原付二種もその対象となること。
バイクユーザーにとってこんな大事な決定がさらりと報道されたのには、何か裏の事情を感じてしまわないでもないが、それはともかく、この内容は、国交省(国土交通省)が11月7日に開催した「車両安全対策検討会」の討議を受けての決定となっている。クルマやバイクを取り巻く交通安全環境を整備するのも仕事の国交省としては、昨今の二輪車死亡事故激増に鑑みてバイクの安全対策を進める必要があると判断しているのは想像に難くない。その喫緊の対策の一つとして二輪車ABS装着義務付け化に白羽の矢が立ったのだろう。
推測的な書き方になってしまっているのは、実はこの「車両安全対策検討会」本来なら議事概要が国交省のWEBサイトにアップされて内容が自由に見られるはずなのだが、未だこの時の回の議事概要が発表されていない。
ちなみにこの「車両安全対策検討会」は、国交省がほぼ定期的に開催しているもので、道路運送車両の新たな安全基準の策定や効果、妥当性などを検討する委員会。以前は「安全基準検討会」と呼ばれていたが、平成23年度から「車両安全対策検討会」に名称変更されたものだ。平成21年度には3回、平成22年度は2回、平成23年度2回、平成24年度3回、平成25年度3回、そして平成26年度は、6月17日の第1回に続き、11月7日に第2回として開催されたことが記録されている。
ちなみに、11月7日の「車両安全対策検討会」に出席した委員の顔ぶれは、公開されている委員名簿(敬称略・順不同)によれば、
鎌田実:東京大学 大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授
岸本喜久雄:東京工業大学大学院 理工学研究科 機械物理工学専攻 教授
水野幸治:名古屋大学工学研究科 機械理工学専攻 教授
清水和夫:モータージャーナリスト
森山みずほ:モータージャーナリスト
岩越和紀:株式会社JAFメイト社 代表取締役社長
杉本富史:公益社団法人自動車技術会 規格担当理事
高橋信彦:一般社団法人日本自動車工業会 安全・環境技術委員会安全部会長
安宅豊:一般社団法人日本自動車工業会 安全・環境技術委員会大型車部会長
吉田量年:一般社団法人日本自動車車体工業会 専務理事
兵藤公則:一般社団法人日本自動車部品工業会 基準認証部会 部会長
萩原直樹:日本自動車輸入組合 基準・認証委員会委員長
五味正夫:一般社団法人日本損害保険協会 生活サービス部長
井出信男:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会 常務理事
山下博:公益社団法人日本バス協会 技術安全部長
永嶋功:公益社団法人全日本トラック協会 交通・環境部長
山崎邦夫:一般財団法人日本自動車研究所 安全研究部 部長
安藤憲一:独立行政法人交通安全環境研究所 自動車安全研究領域 研究領域長
上野潮:自動車基準認証国際化研究センター 研究部 部長
稲垣敏之:筑波大学大学院 システム情報工学研究科 研究科長・教授
宇治橋貞幸:日本文理大学 特任教授
小野古志郎:一般財団法人日本自動車研究所 先行研究・企画室 技監 研究主幹
自工会のスタッフはともかく、二輪事情に詳しいといえるメンバーが見受けられないのがひっかかるところ。幼児専用車のガイドラインや大型バスの安全対策、歩行者脚部保護、など様々な検討事案の中の一つとして二輪車のABSも取り上げられたということなので、それも仕方のないことかも知れないが。未だ国交省のサイトに「議事概要」がアップされていないので、検討会の中で二輪車のABS義務づけに対して、どのような討議が行われたか判断できないのが気になる。
ご存じの通り、現在、国産車でABS装着モデルの設定がある排気量の下限は、250のスポーツモデル&スクーターで、その場合、ABS装着モデルは、ほぼプラス5万円というのが相場。ということを考えると、30万円程度がメインの車両価格帯の原付二種だと、このプラス5万円というのはけっこうな負担となるはず。
まあ、原付二種ではコンバインドブレーキ、CBSでも良しとされているので、こちらを選べばそこまでの負担とはならないとも言えるが。軽二輪ではABSしか選べないので負担増となるのは必至だ。そこら辺のことまで十分検討していただいての結論なのかも気になるところ。特にバイク・メーカーさんの代表でもある自工会さんの判断はいかがなものだったのだろうか。単純に道交法でいうところの「原付」と「自動車」の区分で、線引きをしてしまったなんてことはないとは思いたいが。
--以下、公表されている国交省の発表資料から
■平成26年度 第2回車両安全対策検討会(平成26年11月7日)
「6-1. 二輪車へのアンチロックブレーキシステム(ABS)
/コンバインドブレーキシステム(CBS)の装備義務付け」
●適用範囲
二輪自動車(側車付二輪自動車を除く)及び第二種原動機付自転車
※トライアル二輪自動車等を除く。
●改正概要
○二輪自動車には、「二輪車等の制動装置に係る協定規則(第78号)」の技術的要件に適合するアンチロックブレーキシステム(ABS)を備えなければならないこととする。
○第二種原動機付自転車には、「二輪車等の制動装置に係る協定規則(第78号)」の技術的要件に適合するアンチロックブレーキシステム(ABS)又はコンバインドブレーキシステム(CBS)を備えなければならないこととする。
(装置の定義)
○アンチロックブレーキシステム(ABS):走行中の車両の制動に著しい支障を及ぼす車輪の回転運動の停止を有効に防止することができる装置。
○コンバインドブレーキシステム(CBS):複数の車輪の制動装置を単一の操作装置によって作動させることができる装置。
(注意事項)
○アンチロックブレーキシステム(ABS)は、緊急時に強いブレーキを掛ける際や濡れて滑りやすくなっている路面でのブレーキの際等に車輪のロックを防止することで、運転者が転倒を恐れずに最適なブレーキを掛けることができるシステム。
○また、コンバインドブレーキシステム(CBS)は、前後輪のブレーキを連動させることで、運転者のブレーキ操作力の前後配分が不十分であった場合等でも適切な制動力が得られるシステム。
○いずれのシステムも、運転を支援するための装置であり、ブレーキそのものの性能を向上させたり、あらゆる状況の下で有効に機能するものではなく、機能にも限界があるため、システムを過信することなく、運転者自身による安全運転を心掛ける必要あり。
●改正時期
平成27年1月(予定)
●適用時期
新型車 :平成30年10月1日以降(予定)
継続生産車:平成33年10月1日以降(予定)
--以上、国交省発表資料より。
※
さて今月の困ったちゃんシリーズ、年の瀬が迫ってきてるためか、飲酒関連の“事件”が多かった。
前回お伝えした、飲酒後に交通取り締まり現場へ出動した“とんでも巡査”のその後が入ってきている。何でもこの巡査、ほとんどアル中状態で、仕事に対するストレスから「飲まないと仕事に行けなくなった」のだとか。事件のあった8月5日は、前日の夜から“眠るため”に飲酒、しかし満足に寝られず朝から近くのコンビニで朝食だけでなく缶酎ハイも購入。出勤途中と、署内の仕事の合間にさらに飲酒。この状態で交通取り締まりに公用バイクで出かけたというのだから何をかいわんや、だ。遵法意識どころか、一般人でもここまで規範意識の無い人間は少ないだろう。10月10日、当然のことながら懲戒免職処分とされたが、こんな巡査を勤務させていた組織そのものに問題があるのでは。
この事件に比べれば愛知県警の警部補のケースなど、可愛いものに思えてしまう。10月29日、愛知県刈谷署の警部補が酒気帯び運転し、道路脇の公園にあった水飲み場にクルマをぶつけたという。ただその経緯がちょっと不審で、朝、クルマでの出勤途中に「体調不良で休む」と署に連絡。その後公園脇にクルマを止めて日本酒を飲んだという。体調不良なのに? で、その後さらに酒が買いたかったのかクルマで自販機に向かおうとして事故を起こしたという。こちらも交通課の警部補だそうです。その後はお決まりの懲戒免職処分ですが、警部補個人の問題で済ませて良いのでしょうか。もっと根は深いところにありそうですね。
こちら熊本県東署の巡査も酒気帯び運転。非番の警察官が飲酒運転の検問で摘発。基準値を超えるアルコール濃度でキップを切られたというもの。上のようなケースがぞろぞろ出てきている現状では、こんな話題が普通に思えてしまうのですから怖いですね。警察官が飲酒運転で捕まる、なんてこと自体、とても異常なことだったはずなのですが。県警監察課は氏名、処分内容などは公表せず。クマモン恥ずかしい。
これから年末にかけて、飲酒の機会も増えてくる季節。皆様くれぐれも「飲んだら乗るな」で安全運転を。警察官に範を示してあげましょう。
(小宮山幸雄)
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