湯平温泉は大分県由布市湯布院町湯平にある温泉地だ。温泉街には車1台分くらいの道幅の石畳が敷かれており、とりあえず奥まで行ってみようとするが、意外に石畳が荒く、しかも奥に向かうに従って道幅が狭く、かつ傾斜がきつく、スロットルを緩めるとこけそうな予感がした。転回するのもままならない。やっとの思いでいちばん奥まで辿り着き、転回して入口付近にある観光案内所まで引き返した。なかなか共同浴場が見つからずウロウロしていたところ、地元の方が共同浴場の場所を丁寧に教えてくれた。
湯平温泉には共同浴場が5つあり、そのうちのひとつである観光案内所近くの「銀の湯」に入ることにした。入湯料は200円。風情ある佇まいはいかにも温泉街の共同浴場らしい作り。こじんまりとした湯船には、無色透明の熱めのお湯が注がれている。ここも別府と同じく脱衣場と浴室が一体になったような作りだ。
リフレッシュしてバイクを駐車した観光案内所まで戻る。時間は午後4時20分。ここから徒歩圏内に5つある共同浴場のひとつ「橋本温泉」があるので、そちらにも入ってみることにした。橋本温泉は温泉街入口から徒歩30秒くらいのところにある。入湯料は200円。和風な外観は、典型的な地方にある共同浴場のような作りだ。浴室そのものは広いが内湯のみで、あつ湯とぬる湯が用意されている。ぬる湯に浸かりながらまったりしてしまった。ここまでで10湯入り、初日としては最高の出足だった。
橋本温泉を出たところで午後5時になろうとしていた。そろそろ宿に向かうことにした。今宵の宿はネットで調べた「由布の小部屋 みずうち」。プロフィールに「民家を改装したアットホームな宿。天然温泉掛け流し」と書いてあり、さらに料金が素泊まりで3000円と安く、面白そうなので選んでみた。湯平温泉から国道210号線を通って湯布院方面に戻り、観光客で賑わう湯布院のメインストリートにいったん出て、そこから少し離れた、周囲を田畑に囲まれたのどかな場所に宿はあった。
外観は民家そのもので、看板がなければ分からない。宿の向かいにある受付とおぼしき場所で宿泊代を払う。部屋の鍵を受け取り、2階にある部屋に行ってみると、床の間のある6畳間の和室で、ひとりにしては十分な広さ。素泊まりなので、近くにあるスーパーまで買い出しに行った。あぐらをかいて、テレビを見ながら夕飯を食べる。まるで自分の部屋のように過ごせる。離れにあるお風呂は新築らしく綺麗で広い。同宿者が入っていないタイミングを見計らって入る。お湯は無色透明。非常に心地いい。豪華さ・派手さはまったくないが、たまにはこんな宿もいいもんだ。
翌朝、事前に買っておいた朝食を食べ、朝風呂に入ってから出発。なんだかんだで昨日は11湯も入ってしまった。2日目は、かなりルートの選定に悩んだが、国道210号線から国道387号線に向かって川底温泉周辺まで行き、そこから飯田高原方面に進み、そのまま熊本県に入って黒川温泉へ向かうルートに決めた。この周辺は温泉の数が多いので、移動は最小限に抑えて、絨毯爆撃的に入る作戦にした。
天気は快晴。湯布院を出発して国道210号線を九重町方面に進み、やがて国道387号線に変わるところで熊本方面に向かい、しばらくすると国道沿いに壁湯(かべゆ)温泉が見えてくる。2日目の1湯目は、この壁湯温泉の旅館「福元屋」に併設されている混浴の共同浴場だ。案内看板に従って細い階段を降りて、その名のとおり川に面した壁面に沿うように共同浴場があった。
壁湯温泉「福元屋」は大分県玖珠郡九重町にある300年以上続く温泉旅館だ。この旅館の名物が混浴の壁湯天然洞窟温泉だ。宿泊者以外に立ち寄り湯も可能だ。入湯料は200円。川に面した湯船は岩をくりぬいて作られており風情溢れる。夏季限定でさらに川に近いところに湯船が用意されるという。お湯は無色透明でややぬるめ。ゆっくり浸かるにはちょうどいい湯加減だ。夏場なら湯上りがとても気持ちよさそうだ。
この周辺には壁湯温泉以外にも温泉があるがここはパスして、さらに国道387号線を進み、国道沿いにある「九重夢温泉郷 宝泉寺温泉 せせらぎの湯」を第2湯目に選んだ。「九重夢温泉郷 宝泉寺温泉 せせらぎの湯」は大分県玖珠郡九重町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は350円。国道沿いにあるのでアクセスしやすい。浴室、内風呂、露天風呂いずれも広々としており、掛け流しで湯量も豊富。お湯は無色透明で、内風呂はやや熱め。露天風呂は岩風呂とひのき風呂の2種類ある。入浴者は私一人で、朝からまったりしてしまった。
2湯目に入ったところで午前9時40分。なかなかいい出足だ。ここからは県道680号線を通って飯田高原方面に向かう。県道680号線から県道40号線に入り、九重“夢”大橋方面に向かい、その途中にある「筌の口(うけのくち)温泉」の共同浴場に立ち寄ることにした。筌の口温泉は大分県玖珠郡九重町田野筌の口にある共同浴場だ。今回立ち寄ったのは第1筌の口温泉。入湯料は200円。第1のほうは内湯のみで、第2のほうに露天風呂があるいという。浴室には日差しが差し込み、底のやや深い大きな湯船には、見事な濁り湯がたっぷり注がれている。熱めのお湯はまさに源泉100%。飾り気のないシンプルな温泉だが、濁り湯が好きな方には堪らないだろう。
いい湯を堪能して第4湯目に向かう。筌の口温泉を出て、県道40号線を湯坪温泉方面に向かおうとしたところ、「山里の湯」という炭酸泉の温泉が目に入った。これは興味深いので立ち寄ってみることにした。「山里の湯」は大分県玖珠郡 九重町田野にある日帰り入浴施設だ。帰ってから調べてみると、どうやらここも筌の口温泉のひとつらしいが、先ほどとは泉質の異なる炭酸泉なので1つとしてカウントした。入湯料は500円。浴室、2つの湯船ともにそれほど大きくないが、鉄分が多いと思われるお湯に浸かるとまさに炭酸泉。泡が身体にまとわりつく。ちょっとぬるめの湯温なのでとても入りやすい。先客のおじさん2人は気持ちいいのか、湯船の中で寝てしまっている。寝てしまうのも分かるくらい気持ちいい。
久しぶりに強炭酸泉に入った後は、県道40号線を筋湯温泉方面に向かう。途中、県道40号線が湯坪温泉方面に分かれるので、せっかくなので湯坪温泉に向かった。共同浴場があるはずなのだが見つけられず迷っているところを見かねて、地元の方が温泉街のいちばん奥にあることを教えてくれた。一見すると民家のような建物が共同浴場「河原湯温泉」だった。湯坪温泉「河原湯温泉」は大分県玖珠郡九重町湯坪にある共同浴場だ。入湯料は200円。浴室、湯船ともこじんまりしているが、湯船の注がれている無色透明のお湯はかなり熱め。そのままでは入れないので、加水して入った。この熱めの湯温は、源泉がひたすら注ぎ込まれている証拠だ。
共同浴場らしい熱めのお湯にアタックした後は、この地域でも有数の温泉地である筋湯温泉に向かう。県道40号線から筋湯温泉方面に分かれて、山あいに温泉街がひしめき合うように建ち並んでいる。温泉街を上がったところにある駐車場にバイクを置いて、歩いて温泉街に向かった。
大分県玖珠郡九重町湯坪にある筋湯温泉は、大分県でも有数の温泉街だ。この温泉の名物は日本一のうたせ湯。どんなものか気になるところだが、まずは共同浴場に行ってみた。共同浴場は内湯の「薬師湯」と露天風呂の「岩ん湯」の2種類あり、男女日替わりで入れ替われる。この日は岩ん湯が男湯だった。入湯料は300円。岩を敷き詰めた湯船には、透き通ったお湯が注ぎ込まれている。お湯は適温で気持ちよく、時間が経つのを忘れてしまいそうだ。
共同浴場に入った後は、いよいよ温泉街の中心にあるうたせ湯だ。メダル販売機で入湯料300円を払い、メダル投入口にメダルを挿入するとゲートが開く。脱衣場に入ると、ドア越しにお湯が叩きつけられるような音が聞こえてくる。浴室に入ると、轟音とともに、まるで滝が落ちるがごとくお湯がジャンジャン注がれている。うたせ湯の数もすごいが、とにかく音がすごい。滝の近くだと会話できないが、まさにそれに近い。水圧もあり、かなりのマッサージ効果が期待できる。
建物から出ると、嘘のように温泉街は人気がなく、静まり返っている。なかなかインパクトのあったうたせ湯だった。筋湯温泉に入ったところで午後1時を過ぎたところ。