大迫力だった筋湯温泉のうたせ湯の余韻を残しつつ、いよいよ熊本県に突入する。県道40号線を湯坪温泉方面に戻り、県道11号線(やまなみハイウエイ)方面に向かう林道を通って県道11号線を熊本方面に進む。雄大な景色が広がる中、「寒の地獄温泉」という看板が目に入ってきた。まだ夕方までには時間があるので入ってみることにした。
「寒の地獄温泉」は大分県郡玖珠郡九重町飯田高原の山の宿・霊泉「寒の地獄」にある温泉だ。歴史を感じさせる建物の横には、硫黄泉が流れ込んだと思われる白濁した小川が流れている。ただ小川から湯気が立っていないので、泉温そのものは高くないことが予想された。フロントで入湯料500円を払って浴室に向かう。浴室はそれほど広くはないが、落ち着いた雰囲気が漂う。湯船は大小あり、小さいほうがうっすらと白濁した硫黄臭のする源泉(冷鉱泉)で、大きいほうが加熱したお湯が注がれている。案内板を読むと、温かいのと冷たいのに交互に入るのがいいという。試しにやってみたが、源泉は意外と冷たく、膝下までしか浸かれなかった。
個性的な寒の地獄温泉を出て、澄み切った空の下、やまなみハイウエイを黒川温泉方面に走る。噂どおりの絶景を目の当たりにして、九州に来た実感がさらに沸いてきた。県道11号線から黒川温泉に向かう国道442号線に入る。そろそろ宿泊先を考えなくてはならない時間だが、天気がいいので、今夜は黒川温泉の近くにあるキャンプ場にキャンプし、黒川温泉はテントを張ってから向かうことにした。
キャンプ場を見つける前に、黒川温泉より少し山奥にある満願寺温泉に向かう。満願寺温泉に向かう1本道を走り、満願寺温泉に到着。共同浴場を探していたところ、街中を流れる志津川のほとりに露天風呂のようなものが見えた。川を渡り、共同浴場近くにバイクを置いて行ってみると、やはり露天風呂だった。
熊本県阿蘇郡南小国町満願寺にある満願寺温泉には、内湯の共同浴場と、混浴露天風呂の川湯の2種類ある。私はもちろん川湯を選んだ。川湯はまさに川沿いにあり、人が入浴するための湯船と、野菜などを洗う洗い場が併設されている。料金は200円。川沿いなので遮るものはなく、対岸からは丸見え。まさに衆人環視の中で入る。お湯は無色透明で、ややぬるめ。川面の風が心地よくて気持ちいい。つい時間が経つのを忘れてしまう。
とても名残惜しいが先に行かなくてはならない。来た道を戻り、国道442号線沿いにあるキャンプ場を探す。1件目は管理人不在なのと水場があまりよろしくないのでパス。次に向かったのは「瀬の本高原・三愛オートキャンプ場」。受付場所がよく分からなかったので、入口近くにある売店で聞いたところ、売店奥の事務所で受付しているとのこと。キャンプしたいと伝えると、料金は1000円とのこと。今日は他に客がいないので、どこにテントを張ってもいいという。事務所を出て、キャンプスペースに行ってみると、広くてしっかり整備されている。水場が近くていちばん眺めのいいところを選ぶ。テントを張り終えて、本日のクライマックスである黒川温泉に向かう。
国道442号線から黒川温泉に向かう道に入り、ほどなくして黒川温泉に到着した。黒川温泉は熊本県阿蘇郡南小国町黒川にある熊本のみならず日本を代表する温泉街だ。黒川温泉の特徴は、温泉宿の露天風呂巡りだ。1枚1,200円(税込)の入湯手形を購入すれば、組合に加盟している全24件ある温泉宿の露天風呂のうち3湯に入れる。ちなみに1湯500円なので、連湯するなら手形を買ったほうがお得だ。さらに手形は記念にもなる(私が買った手形は木製で、くまモンが描かれていた!)。
温泉街のほぼ中心にある旅館組合で情報収集してから、温泉街の奥のほうにある黒川荘に行ってみた。駐在所近くにバイクを置いて、徒歩で向かう。街灯のない歩道を5分ほど歩いて到着。一般的な温泉宿は夕方以降は宿泊客優先になり、私のような日帰り客は入浴できない場合が多いが、黒川荘は私を優しく出迎えてくれた。浴室は広々としており、内湯も大きく湯量も豊富。そして露天風呂に向かうと…広大な湯船が目に入ってきた。一日の疲れが吹っ飛ぶほどの見事な露天風呂に圧巻。幸いにも夕食時だったためか露天風呂には私ひとり。お湯はやや白濁しており、内湯、露天風呂ともに適温。じっくり思い残すことなく入った。
外に出ると、辺りは真っ暗。来た道を戻り、黒川荘のみ入浴してキャンプ場に戻ることにした。あとで地図で確認したところ、黒川荘は国道442号線からアクセスできたことがわかった。キャンプ場に戻ると、期待していた売店は閉店していて買い物できなかった。テントに戻って夕食。空を見上げると、天気がいいせいか星がよく見える。気温もそれほど低くなく、絶好のキャンプ日和だった。
3日目から本格的に熊本県の温泉を巡っていく。午前7時30分にキャンプ場を出発。国道442号線を小国町方面に走り、国道212号線を日田方面に進み、午前8時過ぎに本日1湯目の杖立(つえたて)温泉に到着。杖立温泉は熊本県阿蘇郡小国町にある温泉街だ。杖立温泉の名物と言えば「むし湯」だ。風情ある温泉街の中心近くに「むし湯」を見つけたが、施錠してあって入れない。仕方がないので温泉街の奥にある共同浴場(元湯)に向かったが、何とお湯がなかった。杖立温泉特有の細い裏路地(背戸屋:せどや)を通って他の共同浴場を探すが見つからない。
ここまで来てお湯に浸かれないのは悔しい。何とかしてお湯に浸かりたい。温泉街の地図をよく見ると、川を挟んだ対岸に共同浴場があるようだ。近くまでバイクで行き、徒歩で裏路地を進み、路地の奥にこじんまりとした共同浴場(御前湯)を発見した。入湯料は200円。浴室、湯船ともに小さいが、無色透明の適温のお湯はしっかり源泉が流れている。一時は無理かと思ったが、入浴できてホッとひと安心した。
行き当たりばったり感が炸裂した杖立温泉をあとにして、次に向かったのは、国道212号線から杖立温泉に入る道の入口にある白岩温泉。この温泉は珍しいコインタイマー式の温泉なのだ。コインタイマー式とは、お金を入れるとお湯が出る、つまり入浴ごとにフレッシュなお湯が供給されるのだ。私は600円(入浴1時間以内)を選んだ。
1時間以内とはいえ、湯船にはお湯がないので、お湯を入れる時間を差し引くと入浴時間は30分程度だ。自分でお湯を出さなければならないのだが、バルブの開け方が不十分だったせいか湯船にお湯が溜まらず、足湯みたいになってしまった。お湯そのものは無色透明で、優しい肌触り。今回は残念だったが、次回来ることがあったらしっかりバルブを開けようと思った。
ほとんどネタで終わってしまった白岩温泉を出て、次の目的地である菊池温泉に向かう。国道212号線から国道387号線に入り、菊池市方面に向けてひたすら走る。約2時間ほど走ったところで菊池市内にある菊池温泉に到着。数件ある温泉旅館の中から、菊池温泉発祥の地とされる「湯元旅館」を選んだ。菊池温泉「湯元旅館」は熊本県菊池市隈府にある温泉宿だ。入湯料は300円。内風呂のみで、浴室、湯船ともにそれほど大きくないものの、泉温約48℃の無色透明の源泉がそのまま湯船に供給されている。先ほどの白岩温泉ではお湯に十分浸かれなかったので、ここではその分たっぷり浸かった。
菊池温泉を出て次に向かったのは「七城温泉ドーム」。国道325号線から県道53号線に入り、県道37号線と交わる近くにある。「七城温泉ドーム」は熊本県菊池市七城町にある日帰り入浴施設だ。施設近くには小さいながらもお城が建っている。入湯料は330円。健康ランドのような作りになっており、いろいろな湯船が楽しめる。無色透明のお湯は泉温約52℃と高めだが、あまり温泉感のしないお湯だった。
3日目の最終目的地は熊本市内に決めているのだが、まだまだ時間があるので、あと3〜4湯は入りたい。七城温泉ドームを出て、次に向かったのは山鹿温泉。県道37号線を通って国道325号線に出て、国道325号線を山鹿市方面に進む。やがて賑やかな市内に入り、山鹿温泉の共同浴場「さくら湯」に到着した。入湯料は300円。
街のシンボルに相応しい九州最大と称される威風堂々した外観に驚いたが、それだけではなかった。浴室・湯船はさらに凄かった。まるで演舞場のような高い天井に、広々とした湯船は圧巻の一言。最盛期の様子が復刻されたさくら湯は、平成24年に再建されたばかり。湯船中央の鍵穴のような囲いは、当時の湯口を再現したものという。お湯は無色透明で、ぬるすべ感のある滑らかな肌触り。まさにあっぱれな共同浴場だった。
山鹿温泉の次に向かったのは玉名温泉。玉名市方面に向かう県道16号線を走り、国道208号線を玉名市方面に進み、県道4号線を過ぎてほどなくすると玉名温泉「つかさの湯」が現れた。玉名温泉「つかさの湯」は熊本県玉名市にある日帰り入浴施設だ。入湯料は700円。お洒落な外観に相応しく、浴室・湯船ともにキレイでかなり広々としている。源泉かけ流しの湯船は3箇所あり、かなりの湯量が注がれている。適温かちょっとぬるめのお湯は無色透明でさっぱりした肌触り。食事処も揃っているので、家族で来たり、一日ゆったりしたい場合にお薦めだ。
玉名温泉に入ったところで時間は15時過ぎ。今晩は雨の予報なのでキャンプは止めて、熊本駅近くのビジネスホテルに泊まることにした。玉名温泉から国道208号線に戻って熊本市内へ向かうのだが、熊本市内に入る前にもう1湯入りたかった。アプリで検索した結果、植木温泉「星の湯」に入ることにした。国道208号線から国道3号線を九州自動車道の植木IC方面に進み、県道53号線を先ほど入った七城温泉ドーム方面に向かう。ちょっと迷ったが植木温泉「星の湯」に到着した。
植木温泉「星の湯」は熊本県熊本市北区植木町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は550円。外観、内装ともに落ち着いたモダンな和風作り。家族風呂が多数用意されているのが特徴のようだ。大浴場は内風呂が2つと露天風呂がある。泉温42℃の無色透明のお湯は、ちょっとキシキシ感のあるさっぱり系。全体的に隠れ家的な雰囲気が漂う。
3日目の湯巡りはこれで終了。合計8湯入った。一服してそろそろ出ようかとふと外を見たら雨が降ってきた。ホテルに向かうだけなので気は楽だが、雨脚が強くならないことを祈るばかりだ。国道3号線を戻り、そのまま国道3号線を走って熊本市方面に進む。熊本市内に入り、せっかくなので熊本城を見学しようと思ったがタイムアウト。中心街から少し離れた熊本駅近くにあるビジネスホテルに到着したのは17時半過ぎだった。夕食を食べに市電に乗って駅から離れた繁華街(辛島町、花畑町方面)に行ったが、食べられそうな場所が見つけられず、結局ホテルから近い「黒龍紅」というお店で、熊本名物の馬刺しと熊本ラーメンを食べた。
翌朝、天気は曇り。4日目は阿蘇山周辺の温泉に入り、大分県に戻って大分市内で泊まる予定だ。まだまだ九州の湯巡りは続く。