第16湯 四国一周湯巡りツーリング(その3)
四国一周ツーリングも5日目に入り、後半戦に突入した。すでに高知県、愛媛県を回ってきて、残りは香川県と徳島県となった。依然、台風は停滞したままで、どうやら明日、あさってには四国に最接近するようだ。とにかく連日に渡って雨にやられており、最終日くらいはカラッと晴れてほしいところだ。
5日目は、今回のツーリングの目的のひとつである香川県にある讃岐うどん屋「蒲生(がもう)うどん」に向かう日だ。そもそもこのうどん屋に向かうことになったのは、アームズマガジンの玉井カメラマンのリクエスト(オーダー)によるものだ。がもううどんに寄ってうどんを食べて、是非お土産を買ってきてほしいと。食べ物にうるさい玉井カメラマンが納得する味なのだから、間違いはないはずだ。
ならば行ってみようと思ったが、どうやらこのうどん屋、香川県人が選ぶナンバー1のお店らしく、連日行列ができ、定休日が日曜と第3月曜日、営業時間も午前8時30分〜13時頃、麺が売り切れ次第終了という、とてもハードルの高いうどん屋なのだ。クリティカルなスケジューリングでなければ攻略できない。
そこで、火曜日(20日)の午前10時から11時の間に行くために、今回わざわざ時計回りで四国を巡り、その日に到着するように宿泊場所などを設定したのだ。だから、3日目に訪れた佐田岬は、無理をしてでもその日に行かなければならなかったのだ。5日目までパーフェクトでスケジュールをこなしてきた。我ながらよく頑張ったと思う。
伊予西条市のホテルからがもううどんまでは、それほど距離は離れていないが油断大敵。雨の降る中、午前6時30分にホテルを出発し、国道11号線を香川方面に向けて走る。香川県の観音寺市に入ったところで、県道21号線方面に向かい、県道232号線を通って香川県三豊市のある荘内半島をグルッと巡った。
観音寺市に戻り、再び国道11号線を走って坂出市に入り、いよいよ目的地であるがもううどんのある坂出市加茂町の交差点を左折。地図を見ながら探すが、なかなか発見できない。道を歩いている地元の方に尋ねたところ「ここの細い道を入って、その先に駐車場が見えるから、そこだよ」と教えてくれた。それに従って行くと、田んぼの先に忽然とお店が現れた。到着時間は午前10時45分。まさに計画通りだった。さっきまで降っていた雨は止み、岬の奇跡と並ぶ「がもうの奇跡」が起きた。
香川県のうどん屋としてテレビなどで紹介されるのと同じ民家風の店構えは、一見するとお店だとは分からない。幸い列はなく、すぐ食べることができた。現物は写真を見ていただくとして、これが美味しい! 2玉食べたが、もう1玉注文してしまった。大満足してからお土産売り場に行き、ミッションをクリア。
がもううどん攻略計画は完遂し、あとは徳島に向かい、さらに温泉入湯数を500湯にするだけだ。とりあえず高松市に向かうことにしたが、数日前からリアタイヤの調子がおかしい。ゴールデンウィーク後に調整したスポークがいよいよダメになってきたようだ。高松市内にあるスズキのディーラーで応急処置を施し(大変助かりました。ありがとうございました)、騙し騙しツーリングを続けることにした。
ディーラーを出ると、時間はすでに午後1時を過ぎていた。とりあえず一服しようと、高松市内にある「天然温泉 香南楽湯」に向かうことにした。「天然温泉 香南楽湯」は高松市香南町にある道の駅の中にある日帰り温泉だ。まるで美術館のような近代的なお洒落な建物は、内部も洒落ていて、とても日帰り温泉には見えない。入湯料は600円。
浴室は外観の立派さを裏切らない開放的で広々としており、ゆったりくつろげる。湯船も複数用意されており、充実している。任務を遂行した達成感はあるものの、朝から走りっぱなしだったので、無色透明のお湯が身体中に染み渡る。
風呂から上がり、休憩室でテレビを見ていると、どうやら今晩には台風が徳島付近に接近するらしい。徳島まで行こうかと思ったが、今夜は高松市内に宿泊することにした。時間は14時を回っていて、このあとどうするか迷って、ここまで来たらやっぱり「こんぴらさん」かということで、金刀比羅宮に向かうことにした。
金刀比羅宮は今まで2回訪れており、今回は765段の階段を登った本宮のさらに奥にある、1368段の階段を登ったところにある奥社まで向かった。汗だくになりながら奥社を無事攻略。本宮に戻る途中から雨が降り出し、駐車場に戻ったところで雨が本降りになってきた。
宿を探しに高松駅方面に向かうにつれて雨が強くなり、国道11号線近くで土砂降りになった。もうこうなるとレインウエアは役に立たなくなり、道沿いに見つけた東横インに着いた時にはびしょ濡れだった。今夜もコインランドリーのお世話になった。
翌朝、雨は止んでいた。6日目の今日は、いよいよ徳島に向かう日だ。徳島には夕方に着けばいいので、それまでどこに行くかを悩んだ挙句、小豆島に上陸することにした。小豆島へは高松港からフェリーで約1時間ほど。750cc以下の自動二輪は片道1770円、おおむね1時間に1本の割合で出航している。午前9時50分発に乗船し、小豆島の土庄(とのしょう)港についたのは午前10時40分。初の小豆島上陸だ。
上陸後、まず向かったのは、港の近くにある「オリーブ温泉」だ。「オリーブ温泉」は小豆郡土庄町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は800円。健康ランド風の建物に入ると、広々としたロビーがお客を出迎えてくれる。ロッカールーム、浴室も広々としており、露天風呂からは海が一望できる。朝風呂にしてはなかなか贅沢だ。晴れていれば、さぞかし気持ちいいことだろう。島の温泉は、島という環境のせいかどこも魅力的だ。
ひと風呂浴びて外に出ると、心地いい風が流れている。「オリーブ温泉」に入ったところで入湯数は499湯。500湯まではあと一歩だ。
温泉分をチャージしたところで島内一周しようと思ったが、台風の影響で土砂災害があちこちで発生しているらしく、ところどころが通行止めになっており、一周は無理だった。幸い観光の要所がある場所までは行けたので、映画「二十四の瞳」で有名な映画村を見学。醤油の香りが漂う(小豆島は醤油の産地として知られる)島内の道を走り、寒霞渓の絶景を写真に収めて、午後3時45分の便で高松市に戻った。
高松市からは国道11号線を、途中寄り道をせず、ひたすら走って徳島を目指した。徳島に到着したのは午後7時。今夜も東横インに泊まった。夕食を食べたラーメン屋の店員さんの話では、昨晩は膝下くらいまで浸かるぐらい雨が降ったとのこと。昨日徳島に来ていたら危なかった。ホテルに帰ってテレビを観ると、東京や名古屋が台風で大変なことになっていた。今回の台風は各地に爪痕を残したらしい。
翌朝、天気は晴れ。7日目にしてようやくまともな晴れに恵まれた。今日は夜に帰京するまで、ツーリングの第1目的である母親の生地を見て、さらに温泉入湯数500湯を達成することにした。まずは温泉に入ろうということで、四国最東端の蒲生田(かもだ)岬から3キロほど戻ったところにある「阿南市かもだ岬温泉保養センター(船瀬温泉)」を目指した。
狭い農道を走って到着した岬は風は強かったが、天気は晴れ。今回訪れた4つの岬、すべてで晴れていた。これで完全に「ブースカ岬の伝説」が出来上がった。岬から数分のところの「阿南市かもだ岬温泉保養センター」に到着。「阿南市かもだ岬温泉保養センター」は高知県に近い徳島市阿南市にある日帰り入浴施設だ。太平洋が一望できる高台にあり、眺めはバツグン。入湯料500円を払い、海に面した浴室に向かい、ささっと服を脱ぎ、テキパキと身体を洗って湯船にドボン。
やった〜! 500湯達成だ! こじんまりとした露天風呂に入り、やや熱めの滑らかなお湯に浸かり、爽やかな海風を受けながら感慨に耽る。この徳島県にある鄙びた温泉のことはずっと忘れないだろう。入浴後、休憩スペースから見える海の景色は最高だった。
500湯達成し、あとは徳島市内に戻り、母親の生地に行くだけだ。風は強いものの天気はすっきりと晴れ渡り、天国にいる母親が呼び寄せた天気だったのかもしれない。道沿いで見つけたうどん屋で昼食後、母親の生地を無事探し出し、四国一周ツーリングにおけるすべてのミッションが終了した。
さあ、あとは東京に戻るだけだ。帰京方法は決めてなかったので、いろいろ検討した結果、和歌山までフェリーで渡り、そこから陸路で帰るというものだ。午後4時30分徳島港出航、午後6時40分和歌山港着の南海フェリーに乗船。和歌山からは阪和道を使って大阪に出て、そこから名神高速、東名高速を使って東京に戻ってきた。
約8日間に及んだ四国一周ツーリングは無事終わった。台風の影響で1泊しかキャンプできなかったが、8日間も使って四国を一周するなんて、すごく贅沢なことだと思った。泊まるところも決めず、まさに放浪の旅人気分だった。しばらく四国は行かないだろうが、今度は台風のない時に行きたい。
温泉も500湯達成し、ひとつの基準をクリアした。今後、600湯、700湯と増やしていき、最終的には1000湯を目指したい。でも、いつのことになるのやら。年内あと1回ロングツーリングを行なって、年末までは仕事が立て込んでいるので、あとは来年の楽しみにしよう。
と、その前に、バイクを修理しなきゃ…。
ブースカ的評価
(5段階評価)
●天然温泉 香南楽湯」
★★★★★
道の駅に隣接した高松市内から近い立派な温泉
●オリーブの湯
★★★★★
小豆島にある島の温泉とは思えない広々とした温泉
●阿南市かもだ岬温泉保養センター(船瀬温泉)
★★★★★
四国最東端の岬を訪れた際には是非入っておきたい温泉
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