第59回『夢のまた夢』
前回、このコラムでETC非装着車に関する国の“ご意向”を紹介したが、その直後の9月11日に国交省が、矢継ぎ早に今度は「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」というのを発表した。 以下の発表資料を読んでもらえば分かるとおり、来年4月実施となると、特に首都圏の人間にとっては重大な問題のはずなのだが、大方の報道機関がスルーしてしまったようなのでここで発表資料の詳細をお伝えしておきたい。 --以下国交省発表の「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」から
首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)
平成27年9月11日 国土交通省 首都圏の高速道路の料金体系については、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会の中間答申(平成27年7月30日)において、「首都圏料金の賢い3原則」に従って、(1)料金体系の整理・統一、(2)起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現、(3)政策的な料金の導入が必要とされたところである。 この方針に基づき、三環状を中心としたネットワーク整備が進展しつつある中、首都圏の高速道路が、より効率的に賢く使われるよう、料金に関する具体方針(案)を以下のとおりとりまとめる。 1.平成28年4月からの具体方針 (1)料金体系の整理・統一 整備の経緯の違い等から、料金水準や車種区分等が路線や区間によって異なっている圏央道の内側の料金体系について、三環状の整備の進展を踏まえ、これまでの整備重視の料金体系から、 ① 料金水準については、現行の高速自動車国道の大都市近郊区間の水準に統一。 ② 車種区分については、5車種区分に統一した対距離制を基本とした利用重視の料金体系へ移行する。 平成28年4月からの実施にあたり、首都高速や均一料金となっている埼玉外環、中央道についても、料金水準を現行の高速自動車国道の大都市近郊区間と同じとする対距離制を導入するが、物流への影響や非ETC車の負担増などを考慮して、当面、上限料金などを設定する。併せて、物流を支える車の負担が大幅に増加しないよう、首都高速の大口・多頻度割引について、当面、継続するとともに、中央環状線の内側を通過しない交通に対しては拡充する。なお、車種区分の統一にあたっても、首都高速について、新しい車種区分及び車種間料金比率に円滑に移行するため、段階的に実施する。 また、早くから整備され、料金水準が著しく低く抑えられている第三京浜などについては、料金水準の統一により多数の車が大幅な負担増となることから、ネットワーク整備の進捗や料金変更の経緯などに留意しつつ、当面、現行の高速自動車国道の普通区間を目安に料金水準を設定する。 (2)起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現 道路交通や環境等についての都心部の政策的な課題を考慮し、圏央道の利用が料金の面において不利にならないよう、経路によらず、起終点間の最短距離(当面、料金体系の整理・統一における激変緩和措置を考慮し、最安値とする)を基本に料金を決定することとする。 ただし、政策目的に照らして、都心通過が促進されないよう、都心経由の料金の方が圏央道経由の料金よりも高い場合、その料金は引き下げないこととする。 (参考)実現される新たな料金のポイント 都心部の渋滞などに対して、首都圏の交通流動の最適化を目指し、圏央道や外環をより賢く使うために導入する新たな料金のポイントを、圏央道、外環の利用形態に応じて整理すると以下の通りとなる。 ① 圏央道を利用する交通に対しては、その料金水準について、割高となっている西側区間を含め、現行の高速自動車国道の大都市近郊区間の料金水準に引き下げるとともに、(2)のとおり、同一起終点であれば同一料金とする。更に、圏央道をより賢く使うため、ETC2.0搭載車を対象とした料金割引(料金の引下げ及び大口・多頻度割引の導入)を追加する。 ② 外環を利用する交通に対しては、都心に向かう場合、外環を活用して都心環状線内に流入する交通の分散を図るため、外環利用により迂回(1ジャンクション間を想定)して都心環状線内に流入しても、外環利用分の料金は全額割引くこととする。その際、どの方向からの流入に対しても、当面、現行の首都高速の上限料金以内を維持するとともに、外環内側から都心環状線内に流入する交通に対しては、最短距離の出口までの距離を基本に料金を設定する。 他方で、首都高速を利用した都心を通過する交通に対しては、利用者負担を公平にするとともに、圏央道など外側の環状道路の利用を促す観点から、最短経路による走行距離に応じた料金に変更する。ただし、利用者の急激な負担増による影響に配慮するとともに、都心通過の料金が安くならないよう、都心通過時の首都高速の平均利用距離を目安に、新たな上限料金を、当面、設定する。 ※なお、埼玉外環については、圏央道の概成(境古河~つくば中央の開通時)に合わせて、新たな料金を導入予定 1.その他 (1)政策的な料金の導入 平成28年度から、料金体系の整理・統一や起終点を基本とした継ぎ目のない料金を導入し、その交通に与える影響を検証した上で、対象となる路線や時間帯などを区切り、混雑状況に応じた料金施策を導入することとする。 (2)ETC2.0の普及促進 ETC2.0の早期普及のため、本具体方針(案)に基づく施策をはじめ、ETC2.0の普及促進を進める料金施策の導入を検討するとともに、関係機関とも調整の上、車載器の購入助成の実施も検討する。 (3)ボトルネック対策の実施 道路の容量から見てボトルネックとなっている箇所(分合流部やサグ部など)については、本来の三環状のネットワーク機能が低下しないよう、関係機関と調整の上で、必要な箇所で効果的な対策を講じるよう努める。 ※以下図版資料 首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案) 1. 平成28年4月からの具体的方針について 1)具体方針(案)の概要 2)料金体系の整理・統一 3)起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現 2.今後のスケジュール
--以上国交省発表の「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」から 読めないところは国交省のWEBサイト「http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000556.html」に行って直接読んでみてください。 一応「(案)」とはなっていますが、すでに既定路線なのは、9月18日になって申し合わせたように一部新聞やニュースサイトが「首都高速が上限1300円に!」「首都圏の高速料金、来春導入!」などの見出しで料金値上げを伝えたことでも分かる。国交省の発表資料の通り、『新たな料金の具体的案の公表(高速道路会社)』の段階に入ったということです。 この後は、スケジュール表に申し訳なさそうに小さく載せられている(しかも括弧付き)『パブリックコメント』収集の段階を経て『事業許可(国→高速道路会社)』、そして平成28年4月の『新たな料金のスタート』というレールが引かれているわけです。 それにしても「パブリックコメント」というのは一体何なのでしょうね。既定路線ができてしまってから市民の声を聞こうなどという手続きは。すでに計画が出来上がってしまっているのに“ごまめの歯ぎしり”して何か意味があるのでしょうか。「貴重なご意見は参考にさせていただきました」の裏付け? 内容などどうでもよくて「さあ、パブコメも済んだし次のステップへ!」の帳尻あわせ。一種のガス抜きというものでしょうか。市民が何を言おうとどうせ既定路線を突っ走るのだから、下手な芝居は空々しいというもの。 身近な首都高速を引き合いに出せば、わずか3年前に距離別料金制という名目の値上げをしたばかり。特にETC非装着車に関しては一区間でも利用すれば、上限料金930円が徴収されるところ、一気に1300円になってしまうわけです。まあ、下手に文句を言おうものなら「首都高速でも全面的に“距離制”を導入したら上限は計算上2,900円になります…」の反論を喰らいます。 「高速道路は無料化されるんじゃなかったでしたっけ!」には、「日本高速道路保有・債務返済機構との協定があって、2050年9月30日まで通行料金が徴収できる期間として定められています」と。 いや、それどころじゃない、それからさらに15年間は延長ができて、なんと2065年まで通行料金の徴収が可能なんですね。それまで生きてられません。“高速道路の無料化”なんて実現性が1000%あり得ない“撒き餌”を使ったりするから利用者は余計な期待をしてしまう。「無料化なんてあり得ません!」という正直な官僚、政治家はいないのでしょうか。 「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 高速のことは 夢のまた夢」 (小宮山幸雄) |
小宮山幸雄
“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。
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