Hi-Compression Column

アッキーがキタ

■無知ゆえに人は冒険する・・・前編

(2010.11.9更新)

オレが生まれて初めて手に入れたRG50は素人カスタムの結果、押しがけしかエンジンスタートの方法がなくなり、上京してまもなく手に入れたXL250Rは、「チョッパーにしちゃおうぜ」という後輩の悪しきささやきによって、自らフレームを寸断してそのまま廃棄物と化した22歳の春。 しかし、それからしばらくして、ついにオレはハーレーを手に入れることになった!

とはいってもビンボーゆえ、当時の現行車種だったエボリューションモデルはとても無理。

今より安かったとはいえ、ショベルヘッドのビッグツインも手が出やしねえ。

結局、当時の所属プロダクション・カラーズの社長、サット伊勢が持っていた、エンジンのぶっ壊れたアイアンスポーツ、つまりショベルヘッドのスポーツスターを現状渡し15万! で買ったのだ。

なんでそのスポーツスターが安かったかといえば、片側バンクのピストン君とバルブ君がごっつんこ、つまりサージングを起こしていたから。

もちろん、様々な知識を仕事で得た今考えればオオゴトである。

だが、当時は何でも自分でできると思い込み(金がないから自分で、という意味もあるが)、また某バイ○ズ誌の影響からか、バイクはすべて自分で手を入れるべし、洗脳されていたオレは、安モンのインチ工具を手に入れ、エンジン修理に取りかかることにしたのである。ああ、なんという無知さ!  

とりあえずはまずフレームからエンジンを下ろすため、木の板で簡単な車輪付きのエンジン乗せマシン(というほど大げさではない)を製作し、そいつを車体の下に突っ込んでいざマウントボルト解放。

ビッグツインほどではないが、やはり鉄ヘッドに鉄シリンダーのスポーツスター・エンジンは超重い。


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なんとかゴロンガロンと転がしつつ、ようやく木製マウントに載せられたのは数時間後であった。  

しかし、問題はここからである。

イッたのはフロントバンクだけだったので、まずは慎重にヘッド、そしてシリンダーを外していく。

バルブはひん曲がり、ピストンの上面は大きな穴が開いて、シリンダー内はガビガビ・・・。

しかし、それがどれほどの問題だったかは、当時のオレには無知(すぎる)ゆえに分からなかった。

なので、とりあえずシリンダーまでほいほいと外したは良かったのだが、そこでとりあえず知り合いのハーレー屋に電話。

なんとか状態を伝えると「そりゃ〜クランクまでイってる可能性あるなあ。となると相当キツいよ。見てあげるからもってきなよ」とのこと。

しかし、修理に出す金がないから自分でやってるのであって、ここまできたら最後まで進むっきゃねえっ! とばかり、英文のサービスマニュアルを片手に、クランクケースを左右にばらすため、各ボルトを緩めていく(トルクとか、外す順番など無視)。

そうして、ようやく全てのボルトを外したオレは、“ムリッ”とばかりに左右のクランクケースを離そうとするのだが、なかなかこれがうまくいかない。

まあ、しかしこれくらいは経験済み。間に挟んだガスケットがへばりついているのだろう、と勝手に思い、プラスチック・ハンマーでコツコツと叩きながらやるもだめ。

しかし、少しだけ隙間が空いている部分があったので(無知の極み)、そこにマイナスドライバーを突っ込み“グギッ!”と力を入れると、クランクケースが左右に分かれた。“パキッ”という小さな音と共に……。

って、こりゃいったい何だ? というのは次回更新にて。サバラ!




アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。見かけはご覧のようにとっつきにくそうが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はそれほどウソでもない。

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