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ブースカ

第5湯
  秋山郷周辺の温泉

前回の記事で「雪が降る前に山奥の温泉に行こう」と言ったことを実行すべく、以前から行ってみたかった長野県と新潟県の県境にある秋山郷周辺の温泉を巡ることにした。

いつものとおりETC休日割引を利用するために、本格的な紅葉シーズンが始まる一歩手前の10月24日に作戦敢行。環八と関越道の渋滞を避けるべく、朝6時に自宅を出発。しかし心配された渋滞もなく、スイスイと8時15分には秋山郷の玄関口である湯沢インターに到着してしまった。

湯沢インターからは、まず国道17号線を新潟方面に向かい、十日町市に入ったところで国道353号線方面に進む。しばらく国道353号線を走り、国道117号線を飯山方面に進み、やがて秋山郷へ通じる唯一の国道である国道405号線にぶつかる。

いかにも山奥に入っていく風情を漂わせる国道405号線へ進み、中津川に沿っていちばん奥にある切明(きりあけ)温泉が目指す1湯目だ。

国道405号線沿いに点在する秋山郷は、平家の落人伝説が残る長野県と新潟県の県境にある集落。冬は深い雪に閉ざされる地域だ。切明温泉に近づくにつれて、紅葉の色味が深くなっていく。こんな山奥にもかかわらず、多くの観光客とすれ違った。

出発から4時間以上、湯沢インターから2時間かけて、ようやく切明温泉に到着した。切明温泉にも多くの観光客がいた。そのほとんどの方が切明温泉の旅館、雄川閣(ゆうせんかく)の温泉に入るのだが、私は目もくれず川のほうに向かった。そう、切明温泉は川底から温泉が湧き出る温泉なのだ。

雄川閣に隣接する橋を渡り、川沿いの道を進むと、川と一体化した温泉があった。掘れば温泉が湧き出るというが、先人(?)たちの貢献により湯船がところどころに出来ている。早速脱衣してお湯(川)に浸かる。もちろん無料で混浴だ。

川の温泉特有の熱いところと冷たいところが混じっているが、意外に温かい。浸かると川藻がウワッと浮き出る。私が入ったところの深さは腰上が浸かる程度。私を含めて6人入っていて、男性と一緒に来ていた女性が2人いた。

群馬県の尻焼温泉以来の川湯に感動。このワイルド感は極上だ。山奥の温泉まで来た甲斐があった。後ろ髪を引かれつつ、次の温泉を目指すことにした。

ここからはひたすら国道405号線を戻ることになる。戻りながらどの温泉にしようか迷ったが、国道405号線の反対側にある屋敷温泉に向かうことにした。屋敷温泉にある一軒宿、秀清館に行ってみると、建物の前に露天風呂があるではないか。よく見ると200円で入れるとのこと。事前情報なしで向かったので、これはナイスな発見だった。

旅館の受付で200円を払い、湯船に浸かる。お湯は切明温泉とはまったく異なる白濁湯。ちょっと油臭のする、硫酸塩泉の白濁湯らしいお湯だ。湯加減はちょうどいい。まさに独り占め状態。途中、旅館を訪ねてきた地元のおじさんに「湯加減はどうじゃい?」と聞かれたので、即座に「バッチリで〜す!」と答えた。

切明温泉、屋敷温泉ともに最高。今日は当たり日だ。気分↑↑で次の温泉「小赤沢温泉」を目指した。

屋敷温泉からほど近い小赤沢温泉の特徴はツーリングマップルにも書いてあるが赤色のお湯が特徴。経験上、赤色の温泉は鉄分が多い。空気に触れることで鉄分が酸化して、まるで錆びるように赤色に変色するのだ。鉄分が強い温泉は見た目だけではなく舐めても分かる。まさに鉄を舐めているような味がする。

入湯料500円を払ってお湯に入ると、まさに鉄分の強い温泉の特徴が備わっていた。赤色というより茶褐色のお湯は成分が濃く、いかにも身体に効きそうなお湯だ。湯船はこじんまりしているが、それが却っていい。透明、白、赤と今日はカラフルなお湯が続く珍しい日だ。

汗を拭いながら建物から出た直後の階段で、足を踏み外して尻もちをついてしまった。ケツがすごく痛い。ブーツを中途半端に履いたせいだ。この痛みは1週間ほど続いた。

駐車場で昼飯を食いながら作戦会議。次は結東(けっとう)温泉に入るのは規定路線だが、その次をどうするか。悩んだ結果、長野県側に進んで以前から行きたかった野沢温泉に行くことにした。

痛めたケツをさすりながら結東温泉のある萌木の里「山彦(やまびこ)の湯」を目指す。山彦の湯は萌木の里の中にある栃の実館内にある。内風呂と露天風呂があり、露天風呂は栃の実館から100mほど離れたところにある。ちなみに栃の実館と露天風呂はつながっていないので、裸では行けない。

私は露天風呂に入りたかったので、受付で入湯料500円を払って露天風呂に向かった。露天風呂は山裾の見晴らしのいい場所にあった。露天風呂からは周りの景色が一望できる。たまたま先客が多くてゆっくりできなかったが、独り占めできたら最高だろう。なお、露天風呂は4月から11月までの期間限定とのこと。

露天風呂から出て、栃の実館名物の「あっぽ」と呼ばれる饅頭を食べる。きな粉をつけながら食べるのだが、そばが入った素朴な味に癒された。

結東温泉を出て、国道405号線を国道117号線沿いに走っていたら、竜ヶ窪温泉という看板が目に入った。野沢温泉まではしばしあるので、寄り道することにした。

竜ヶ窪温泉「竜神の館」は新潟県中魚沼郡津南町にある日帰り温泉だ。入湯料は500円。湯船に入ると、ちょっと緑がかった熱めのお湯は気持ちいい。露天風呂に行くと、縦長のドーナッツ型(?)をした湯船(どうやら竜の曲がった身体をイメージしたもののようだ)が面白い。源泉の温度が60度なためか、露天風呂でもお湯はちょっと熱めだった。

後で気づいたのだが、お湯は内風呂から露天風呂へとつながっており、わざわざ湯船から出なくても湯船伝いに小さな扉を開ければ行けるのだ。寒い地域ならではの知恵なのかもしれない。

竜ヶ窪温泉を出たのは15時近く。だんだん雲行きが怪しくなってきた。雨が降らないことを祈りながら野沢温泉を目指した。

国道117号線から県道353号線に入ったところにある野沢温泉は、信州を代表する名湯だ。立派な温泉旅館が立ち並ぶ中に、外湯が13湯ある。共同浴場好きの私にとって最高の場所だ。どこの共同浴場もほぼ100%源泉が投入されており、濃度の高い温泉が味わえる。

野沢温泉に到着する直前、パラパラと雨が降ってきた。街の案内図を見て、13湯ある中から大湯を選んだ。何となくいいのではないかと勘で選んだのだが、調べると野沢温泉のシンボル的な外湯とのこと。

街の中心にある大湯を訪れると小さいが木造の立派な建物だった。入湯料は無料なのだが、賽銭箱が設けられている。気持ち程度だが私は200円入れさせてもらった。中に入るといかにも共同浴場的な作りに気分が高まる。

湯船は熱めとぬるめがあったが、どちらも熱かった。単純硫黄泉の透明なお湯はじんわりと身体に染みてくる。やっぱり名湯はいいなとしみじみ思う。今度は是非泊まって他の外湯を味わってみたいものだ。

最高の気分で外に出ると、残念ながら雨が本降りになっていた。残念だが今日はここで切り上げて帰京することにした。レインウェアを着こんで野沢温泉をあとにした。

野沢温泉を出てから辛かった。17時に豊田飯山インターから入り、日曜日の夕方とあって、上信越道は軽井沢から藤岡付近まで大渋滞。雨の中、自宅に辿りついたのは22時を過ぎていた。

大収穫だった今回の湯巡り。年内あとどれだけの温泉に入れるのだろうか。まずは460湯を目指して頑張ろう。


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毛野ブースカ
ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は446湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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(2010.11.15更新)

  • まさに川原にあるが切明温泉だ。先人たちにより石が積み上げられていて簡易湯船ができている。川とうまく混ぜ合わさっていて意外と気持ちいい

  • まさに川原にあるが切明温泉だ。先人たちにより石が積み上げられていて簡易湯船ができている。川とうまく混ぜ合わさっていて意外と気持ちいい。




  • 大発見だった屋敷温泉。混浴の湯船はそれほど大きくないが、まさに温泉らしい白濁したお湯が存分に味わえる。これで200円は安い

  • 大発見だった屋敷温泉。混浴の湯船はそれほど大きくないが、まさに温泉らしい白濁したお湯が存分に味わえる。これで200円は安い。




  • 鉄分を含んでいるために茶褐色になっているお湯が特徴の小赤沢温泉。入口付近の階段で足を踏み外してしまった。1週間ほどケツが痛かった

  • 鉄分を含んでいるために茶褐色になっているお湯が特徴の小赤沢温泉。入口付近の階段で足を踏み外してしまった。1週間ほどケツが痛かった。




  • 内風呂のある栃の実館から離れたところに露天風呂がある結東温泉「山彦の湯」。眺望はいいが、5月から11月までの期間限定となっている

  • 内風呂のある栃の実館から離れたところに露天風呂がある結東温泉「山彦の湯」。眺望はいいが、5月から11月までの期間限定となっている。




  • 栃の実館で売っていた「あっぽ」と呼ばれる蒸かし饅頭。写真はそば入りで250円。きな粉をつけて食べる。素朴な味わいが何とも言えない

  • 栃の実館で売っていた「あっぽ」と呼ばれる蒸かし饅頭。写真はそば入りで250円。きな粉をつけて食べる。素朴な味わいが何とも言えない。




  • 国道405号線沿いにある秋山郷の集落。ジオラマのような里山的風情にどこか郷愁を覚える。周囲の山々はすでに紅葉が始まっていた

  • 国道405号線沿いにある秋山郷の集落。ジオラマのような里山的風情にどこか郷愁を覚える。周囲の山々はすでに紅葉が始まっていた。




  • 野沢温泉に行く途中で見つけた竜ヶ窪温泉。お湯は意外と高温で、一風変わった露天風呂が味わえる。ただし毎週水曜日に男女が入れ替わるとのこと

  • 野沢温泉に行く途中で見つけた竜ヶ窪温泉。お湯は意外と高温で、一風変わった露天風呂が味わえる。ただし毎週水曜日に男女が入れ替わるとのこと。




  • まさに名湯に相応しい佇まいを見せる野沢温泉のシンボル的な外湯「大湯」。共同浴場のよさを最高に味あわせてくれる。他の外湯も入ってみたかった

  • まさに名湯に相応しい佇まいを見せる野沢温泉のシンボル的な外湯「大湯」。共同浴場のよさを最高に味あわせてくれる。他の外湯も入ってみたかった。



    ブースカ的評価
    (5段階評価)

    ●切明温泉
    ★★★★★
    男なら川沿いの露天風呂に入るべし。最高
    ●屋敷温泉
    ★★★★★
    まさに隠れ家的な温泉。今回最大の発見
    ●小赤沢温泉
    ★★★★
    茶褐色のお湯は秘湯の香りがプンプン
    ●結東温泉
    ★★★★★
    入るなら建物から離れた露天風呂がお薦め
    ●竜ヶ窪温泉
    ★★★★★
    意外なほど露天風呂が広々していてグッド
    ●野沢温泉
    ★★★★★
    信州の名湯。外湯巡りが存分に楽しめる信州の名湯。

     

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