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ブースカ

第6湯
 箱根周辺の温泉

前回の秋山郷への日帰りツーリングに行って以来、アームズマガジンの仕事があまりにも立て込んでいて、毎日自宅と仕事場を往復するのみ。なので今回は、今年の1月31日に箱根へ日帰りツーリングに行った際の様子でお許しいただきたいと思う。本当に申し訳ないです。

今回の日帰りツーリングの目的地は、東京から程近い日本有数の温泉地、箱根。今まで箱根は、子供の頃に小田急線沿線に住んでいたこともあり、家族や学校の行事などで何回か行っているのだが、温泉は数回しか入っていない。意外と近場の未踏の地だったのだ。この日は天気もよかったので、その前日に買ったばかりのカシオのGショックデジカメを携えてちょっと行ってみることにしたのだ。

自宅から環八に進み、東名高速から小田原厚木道路(いわゆる“おだあつ”)を久しぶりに通って1時間半ほどで箱根湯本に到着。気温もそれほど低くなく、まさにツーリングには絶好のコンディション。雲ひとつない晴天で、富士山がくっきり見えた。

ルートは、毎年恒例の箱根駅伝の雰囲気を味わいつつ、国道1号線から御殿場方面に抜ける国道139号線に進み、仙石原の手間にある宮城野温泉をスタートして、箱根方面に下りながら、その途中にある温泉に入っていこうというものだ。

箱根は日本でも屈指の温泉地なのだが、意外にも私の好きな共同浴場が少なく、かつ日帰り温泉施設(もしくはホテルや旅館の日帰り入浴サービス)の入湯料が高い(おおむね1000円以上はする)。つまり宿泊客に優しく、日帰り客に厳しいところなのだ。そんな状況の中で、結局入湯した温泉は5湯だ。いずれも1000円以内で入れるところを選んだ

まず最初に訪れたのは宮城野温泉の「宮城野温泉会館」。到着したのは午前9時45分。営業開始時間は午前10時からなので、しばし辺りを走って午前10時を待った。午前10時過ぎに行ってみると、すでに先客が入っていて、一番風呂ではなかった。入湯料は650円。

それほど長時間は走っていないものの、身体はすっかり冷えてきっており、源泉温度83℃の無色透明のお湯が身体にじわ〜っと染みてくる。まさに生き返るとはこのことだろう。この瞬間はいつも最高だ。内風呂、露天風呂とも湯船はこじんまりとしているが、新鮮なお湯がジャンジャン注がれているので気持ちいい。さすが天下の名湯・箱根らしい共同浴場だ。

身体をリカバリーしたところで、次なる目的地は、箱根登山電車の終点でる強羅駅近くにある強羅温泉「薬師の湯・吉浜」だ。強羅駅へのアクセスはやや難しく、特に駅前は進入禁止になっている箇所もあるので、押して歩く必要がある。薬師の湯は駅から徒歩30秒のところにある。入湯料は800円。今回入った中で最も高かった。

ここのお湯は他の箱根の温泉とはちょっと変わっており、ナトリウム塩化物泉系の源泉を、放射線を持つ天然記念物「北投石」に通すことで、秋田県の名湯・玉川温泉を再現しているという。ただでさえ効能あるお湯をパワーアップして流すという珍しい温泉だ。こちらも湯船はこじんまりしており、熱めのお湯は確かに効きそうだ。

3湯目は箱根の温泉ではマイナーな二ノ平温泉「亀の湯」に向かった。二ノ平温泉はかつてフジテレビのCMでよく流れていた「箱根彫刻の森美術館」の近くにあり、周辺は観光客で賑わう箱根湯本や強羅の様子とは対照的な、落ち着いた雰囲気が漂っている。

亀の湯があるとおぼしき周辺を探すがなかなか見つからない。来た道をふと戻ってみると、民家風の建物に看板が立てかけられていた。一見しただけでは共同浴場とは思えない。久しぶりに入るのにちょっと戸惑う(=勇気がいる)雰囲気だ。

入湯料550円を払って浴室に向かうと、客はやはり私だけだった。湯船は小さいが、今までの2湯に比べて湯加減がちょうどよく、周辺の雑音もなくまったりしてしまう。ややキシキシ系の肌触りなのだが、程よい泉質のためか湯疲れしない。建物に惑わされてしまうが、意外にここは穴場かもしれない。知る人ぞ知る、そんな温泉だ3湯入っただけなのだが、さすが箱根の温泉は奥が深く、かつ味わい深いと感じた。

期待を寄せて向かった4湯目は底倉温泉「太閤湯」だ。宮ノ下温泉の近くにある底倉温泉は、入口に暖簾がたなびくいかにも共同浴場といった風情を持っている。入湯料300円は今回入った中でいちばん安い。

共同浴場らしく浴室は小さく、正方形の湯船も小さいが、無色透明のお湯はかなり熱い。源泉温度は83℃あり、まさに熱湯風呂状態。しかし、これこそ源泉100%の証。足から徐々に慣らして入り、肩まで浸かるころにはすっかり身体は温まっていた。過去にもこういう温泉には何度か入っているが、いつも「これぞ温泉!」と言ってしまう。

決め撃ちのような温泉に入ったところで、本日最後となる大平台温泉「姫の湯」に向かった。大平台温泉は箱根の温泉の中でも比較的名が知れており、お客も多かった。それにもかかわらず入湯料は400円とリーズナブル。浴室、湯船とも明るい雰囲気で広々としている。ちょっと形が変わった円形の湯船のお湯は、これがまた熱い。湯船に人があまり入っていないのも納得がいく。

湯船の横で湯慣らししてからお湯に浸かる。さすがに熱いので長湯はしなかったが、滑らかな上質なお湯だった。今回入った温泉はどれも泉質が豊かで、かつ湯量も豊富。温泉気分を十分満喫できる。都内からも近く、長い間、多くの人々に愛されて続けてきたのが分かるような気がした。

地図で見てもらえれば分かるが、上記の5湯すべてが数キロ内に存在しており、箱根登山鉄道やバスを使えば程よく時間がかかるが、バイクや車だとあっという間についてしまう。ちなみに私は3時間ちょっとで5湯を制覇した。時間をかけずに連湯したいなら、箱根がお薦めだ。今度来るなら、どこか宿に泊まってゆっくり過ごしてみたいものだ。


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毛野ブースカ
ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は457湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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(2010.12.13更新)

  • 箱根の温泉群の中でも仙石原に近いところにある宮城野温泉「宮城野温泉会館」。浴室、湯船ともシンプルな作りだが、露天風呂が用意されているのがいい

  • 箱根の温泉群の中でも仙石原に近いところにある宮城野温泉「宮城野温泉会館」。浴室、湯船ともシンプルな作りだが、露天風呂が用意されているのがいい。




  • 箱根登山鉄道の強羅駅近くにある強羅温泉「薬師の湯・吉浜」。北投石に通すことでお湯をパワーアップしている。意外とアクセスしにくい場所あるのが難点

  • 箱根登山鉄道の強羅駅近くにある強羅温泉「薬師の湯・吉浜」。北投石に通すことでお湯をパワーアップしている。意外とアクセスしにくい場所あるのが難点。




  • 表の看板だけで、料金表示もない二ノ平温泉「亀の湯」。入り口の作りは民家そのもの。共同浴場というより民宿に近い。おじいさんがまったり番をしていた

  • 表の看板だけで、料金表示もない二ノ平温泉「亀の湯」。入り口の作りは民家そのもの。共同浴場というより民宿に近い。おじいさんがまったり番をしていた。




  • こじんまりとした「亀の湯」の湯船。今回入った他の温泉に比べてそれほど熱くなく、ぽわ〜んと漂う湯気と静かな雰囲気を相まってまったりしてしまう

  • こじんまりとした「亀の湯」の湯船。今回入った他の温泉に比べてそれほど熱くなく、ぽわ〜んと漂う湯気と静かな雰囲気を相まってまったりしてしまう。




  • 暖簾に「自噴」と誇らしげに書かれている底倉温泉「太閤湯」。国道1号線と国道139号線が分かれる宮ノ下の近くにある。入湯料は5湯の中で最も安い300円だった

  • 暖簾に「自噴」と誇らしげに書かれている底倉温泉「太閤湯」。国道1号線と国道139号線が分かれる宮ノ下の近くにある。入湯料は5湯の中で最も安い300円だった。




  • 最後に入った大平台温泉「姫の湯」。掛け湯はさほど熱く感じなかったが、湯船に浸かるとかなり熱く、入った瞬間「熱っ!」と思わず声を上げそうになってしまっ

  • 最後に入った大平台温泉「姫の湯」。掛け湯はさほど熱く感じなかったが、湯船に浸かるとかなり熱く、入った瞬間「熱っ!」と思わず声を上げそうになってしまった。



    ブースカ的評価
    (5段階評価)

    ●宮城野温泉
    ★★★★★
    手軽に立ち寄れる効能豊かな共同浴場
    ●強羅温泉
    ★★★★★
    効能高い温泉をパワーアップしたユニークなお湯
    ●二ノ平温泉
    ★★★★
    箱根の温泉群の隠れ家的存在。ゆっくりできる
    ●底倉温泉
    ★★★★
    源泉100%の熱めの温泉がたっぷり味わえる
    ●大平台温泉
    ★★★★
    温泉気分が満喫できる利用しやすい共同浴場

     

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