第11湯
紀伊半島の温泉(第2日目)
熊野本宮大社にお参りした後、新宮市方面に向かって海岸沿いの国道42号線に出たところで、紀伊勝浦温泉に向かってひたすら進むことにした。
雨は徐々に強くなり、完全に路面はウエット状態。気温がそれほど低くないのが幸いだ。午前9時30分を過ぎたところで目的地の紀伊勝浦温泉「らくだの湯」に到着した。
この温泉は、温泉が湧き出るところまで船で行くという全国でも珍しい温泉だ。船着場と思われるところに到着し、ワクワクしながら受付をしようとしたら、午前9時30分出発の船がちょうど出てしまったところだという。
さらに驚愕の事実が知らされた。何と2人以上でないと船は出航しないとのこと。つまり1人では温泉に入れないのだ…。
ということは、次の出航時間まで待っても、1人だと入れない。誰か連れがいるか、もしくは入りたい方がやってくるまで、ずっとこの温泉には入れないのだ。
400湯以上入ってきてこんなレギュレーションがある温泉は初めてだ。私はしばし呆然としてしまった。がっくり肩を落として受付を出た。
入れなかった悔しさもある反面、これは読者にしっかり情報を伝えるべきだと即座に思った。私と同じような惨めな思いをしてほしくない。もし読者の方々でらくだ湯に入りたい場合は、写真の出航のタイミングを参考に、連れを伴って行ってもらいたい。
どうしても朝風呂に入りたかったので、らくだの湯の近くにある那智駅に隣接されている「丹敷の湯」を目指した。
到着したところ休みかと思ったら、営業時間は午後13時からという。まだ午前10時なので無理。ここも諦めてマップルで探したら「ゆりの山温泉」を見つけた。国道42号線を外れて住宅街を抜けた森の中に温泉はあった。
「ゆりの山温泉」は那智勝浦町にある日帰り温泉だ。案内板を見ると熊野詣の天皇や上皇が入ったという。料金は300円。泉温は約38度と低め。浴室はこじんまりとしているが、無色透明のお湯は肌に優しく、朝風呂にはぴったり。傷心気味(?)の私の心を癒してくれた。
建物から出ると、雨が降ったり止んだりの不安定な天気は変わらず。国道42号線に戻って串本方面に進んだ。
途中、温泉に入ろうかと思ったが、どこも13時や15時以降の開店時間ばかり。串本に到着して紀伊大島に渡り、戻ってから県道41号線を通り潮岬に行った。潮岬の灯台に昇る頃には、雨は本降りになっていた。
灯台をあとにして国道42号線に戻り、田辺市方面に向かった。
ほとんど土砂降りの中、進んでいくと、バイクが調子悪くなってきた。
海岸沿いの坂を登って行くとエンジンが吹けにくくなってきた。そして、いちばん高いところまで登ったところでエンジンが止まってしまった。
エンジンはかかるがスタートできない。何度やっても止まってしまう。万事休す。道沿いにある廃屋の軒先にバイクを止めて、雨宿りすることにした。
実はこの症状は以前も出たことがあり、その時も豪雨だったがスタートはできた。
土砂降りの中、長時間走って嫌な予感はしていたが、予感は的中した。原因は分からず、とりあえず小雨になるのを待つことにした。
今まで何十回とツーリングしているが、こんなハプニングは初めて。事故にならなかっただけ幸いだった。
近くにあった自販機で缶コーヒーを買い、バイクを見ながら今日の予定を考えた。もしこのまま動かなかったら、この場所で野宿か、それとも救援を呼ぶか…。そんなことを考えながら2時間が経過したところで、雨が小降りになってきた。
再スタートするが、やはり途中で止まってしまう。ストップアンドゴーを繰り返していくうちに、徐々に元気を取り戻してきた。大幅に時間をロスしたが、ご機嫌を伺いながら再スタート。
帰宅後、原因を探ると、どうやらプラグに水が入ってリークしたためらしい。このトラブルはジェベル250XCの持病らしく、しかも対策が立て難いとのこと。持病とうまく付き合っていけ、ということなのだろうか。
約30分走って、南紀白浜の手前に道の駅「椿温泉 椿はなの湯」を発見し、ちょっと一服しようということで立ち寄ることにした。
「椿温泉 椿はなの湯」は国道42号線沿いの白浜町椿にある日帰り温泉だ。
料金は500円。お湯は滑らかな感触の無色透明で、単純硫黄泉とのこと。キレイな浴室は小さいが、お湯は豊富でゆったりできる。ちょっとゆっくりしてから外に出ると、雨はほとんど止んでいた。
次に目指すはちょっと先にある南紀白浜温泉。先ほどの紀伊勝浦温泉のようなことがないことを祈りつつ向かったのは、海岸沿いにある「崎の湯」だ。
「崎の湯」は海に面した温泉で、1350年以上の歴史がある白浜温泉最古のお湯とのこと。料金は400円。たくさんのお客さんをかきわけて湯船に入る。
数m先が海で、シケた海から海水がどんどん入ってくる。その様子を見て、隣で入っていたおじさんが、まるで子供のようにはしゃいでいた。
適当に海水で調整されるが、たまに熱いお湯が尻のあたりを襲ってきた。
久しぶりにワイルドな温泉に入り満足。
崎の湯をあとにして、そろそろキャンプ地を決めなくてはならない。マップルを見て、約30キロ先の日ノ御碕にキャンプ場を目指すことにした。
すでに16時を過ぎているので、ちょっと内陸に入ったところにある「鶴の湯温泉」に入って、今日最後の温泉にすることにした。
「鶴の湯温泉」は日高郡みなべ町にある静寂な山々に囲まれた落ち着いた温泉だ。
温泉施設と宿泊施設が併設されており、日帰り温泉の料金は600円。和風作りの建物にマッチした浴室はリラックスできる。鉄分を含む黄褐色のお湯は優しい肌触り。今日あった出来事を思い出しながら、眺めのいい露天風呂に浸った。
「鶴の湯温泉」を出たのは17時30分。キャンプ場を目指して御坊市を通過し、日ノ御碕に到着。
キャンプ場に入ると、先客はいるものの管理人はいない。電話してキャンプ場まで来てもらったところで料金3150円と聞いて大後悔。今日はツイてないな。
キャンプ場の上にある日御碕国民宿舎のお風呂に入り(ここは温泉ではなかった)、テントに戻って夕食。明日の予報は晴れなので、ズブ濡れになった装備を乾かしてから出発することにした。
翌朝、昨日の荒天がウソのように晴れ渡った。
湿度も低く、海からのそよ風が心地よかった。テントも含めてほとんどのものが1時間ほどで乾いてしまった。こんなに気持ちよく装備を乾かせたことはなかった。悪いことがあれば、良いこともあるもんだ。
気分↑↑でキャンプ場を出発。今日は紀伊半島ツーリング最終日。ここから和歌山市に向かって走っていく。今日は天気もいいのでガンガン温泉に入ることにした。さあどうなることやら。
ブースカ的評価
(5段階評価)
- ●ゆりの山温泉
- ★★★
- 那智勝浦の静かな森の中にある小さな隠れ家的な温泉
- ●椿温泉 椿はなの湯
- ★★★
- 国道42号線沿いにある気軽に立ち寄れる温泉
- ●白浜温泉 崎の湯
- ★★★★★
- 是非波の高い日に入ってほしいワイルドな温泉
- ●鶴の湯温泉
- ★★★★
- 人里離れた山中にある静か温泉。いつかは泊まってみたい