★アフリカ大陸
(オンボロ)バスの旅 (その2)
(2010年8月26日更新)
ケープタウン発のツアー3日前にヨハネスに先乗りした。
車の整備や特注したルーフキャリアの取り付け、キャンプ用品の買出しが目的だ。
その後ヨハネス→ケープ間1500キロを超える距離を2日で走らなくてはならない。
空港には駐在員のYさんが購入したばかりのミニバスで迎えに来てくれていた。白いボディーにVENUSと大書されている。
「愛と美の女神号か……中々きれいじゃん!」というのが第一印象。
Yさんの自宅(事務所を兼ねる)に向かう途中、車の説明を受ける。知人のガレージでオイルやエアクリーナーの交換は済ませておいてくれたそうだ。
「タイヤはまだ大丈夫だって。注文の予備タイヤは1本買っておいたから」
ありがたい。買い物を済ませ大きなキャリアを取り付け順調に作業を終え明日はケープタウンを目指して出発だ。
夜は知人を集めて中華料理屋で歓送会を開いてくれた。シーフードにギョーザ、Yさんの好きなチャーハンなど、大変美味しく戴いた。
ツアーが始まれば食事の基本は自炊だし贅沢は出来ないだろう。
食事を終え帰りがけスタンドでガソリンを満タンにした、すると車の下からガソリンによるシミが広がってきた。
「Yさん、これ、ガスが漏れてる!」
というとYさんは少しも慌てず「オーバーフローだから心配ないよ。ガスを目一杯入れちゃいけないみたい……」
「エッ、オーバーフローってどこから? キャブレター?」
というと、少々酔っ払っているYさんは、
「ガソリンのパイプじゃないの……そういえば前のオーナーの中国人が、車を受け取るときに何か言っていたような気がするけど……早口の上、下手な英語だったので何言ってるかよく解らなかったんだけどね、ハハハ……」
そんな話をしている内にガソリンの広がりは2メートル四方を超えた…………
「やばいよ……Yさん、逃げよう!」
火でも点いたら大変だ、慌ててスタンドを後にした。漏れてるガソリンに火が点いたら、それこそバック・トゥー・ザ・フューチャーだ。
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しきりにバックミラーを気にしながら社宅に帰るまでの間、私はこれから始まる2万キロを越える長い旅のことを想って暗い気持ちになっていた。
Yさんは、私のそんな気持ちを察してか、明るい声で、この車をいかに相場より安く手に入れることが出来たかを力説した。
社宅の駐車場に車を入れ下を覗き込むとガソリンタンクの端から相変わらず、ピシャ、ピシャとガスが漏れている。
Yさんは「もう少しドライブしよう……ガスが減ると漏れも止まるよ」といった。
私も力なく頷き、奥さんのJさんと3人、再び夜のヨハネスブルグの町にドライブに出発した。
「キャブレターのオーバーフローだったら、少々メンドウですね……フロートのパンクかなー……でもガスが減ると止まるってのは???」というとYさんは
「……たぶんキャブレターじゃないよ……でもキャブレターって何だっけ?」と答え、私はますます暗い気持ちになるのだった。
30分ほどで社宅に戻り、再び車の下を覗き込むとガス漏れは見事に止まっていた。
Yさんは得意げに「ホラ、止まってる……もう大丈夫!」と言った。
と同時に右手のバックミラーがポロッと落ちて、パシャーンと景気のいい音を立てて割れた。
(つづく)
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