Hi-Compression Column

あんときの真美

(2011.7.06更新)

とゆーわけで前号の続きである。

前号の続き、と言われても、前号やその前号を読んでいない人にはからっきしだろう。

そういう人のために、お盆の頃には“バックナンバー祭り”があるだろう、たぶん。担当者のAさんがやってくれるだろう、たぶん。

そん時には、この“あん時の真実”ばかりじゃなく、WEB Mr. Bikeが誇るコラム群全29本が、一挙に読めることだろう、たぶん。

乞うご期待!

で、高樹 澪さんに“どっきり”を仕掛けるという大役を、わがミスター・バイクが仰せつかったのだった。

正式な番組名は『スターどっきりマル秘報告』(フジテレビ系)である。日テレ系の『元祖どっきりカメラ』とは違う。

仕掛けは、こーだ。

ミスター・バイクの“旅取材”ってことで東京・秋川あたりへロケに行く。

秋川渓谷で撮影してると、ネコが「ニャ〜」と都合良く鳴く。

段ボールに入れられた黒いネコを、都合良く発見。

ワタクシを含めたミスター・バイクのスタッフが、わざとらしく「捨てネコだね、間違いない!」とか言う。誰がどう見ても捨てネコだが……。

ネコ好きの澪ちゃんは、放っては置けず、「連れて行きます」とか言う。

その後、澪ちゃん、ワタクシ達3人、そして黒ネコは取材を続け、宿にチェックイン。

光明山荘とゆー立派なお宿で、山菜や石焼き料理に舌鼓を打つ。

そん時、宿のご主人が、地元の新聞を持ってきてくださる。

つらつら見てたワタクシが、ある記事を発見する。

「ん? 尋ねネコ? 黒いネコ? んんん! 500万円の懸賞金? このネコじゃね?」

てな、芝居を打つわけですよ。できんのか? オレ! いやワタクシ!

でもって、次の日、指定の場所に澪ちゃんはネコちゃんを連れてって、500万円をゲット! なわきゃない。

夏木ゆたかさんが現れて、ジャンジャン!


書いてしまえばこれだけのことだ。

だが、ワタクシ&編集部の石井“ワシ”俊也君&カメラマンの滝沢真二君&マネージャーのフタバさんの4人は、まったくのトーシロである。

なのに、ほとんど出ずっぱりの仕掛け人なのである。

撮影は1984年の3月の上旬に行われたんじゃなかったか。良く覚えていない。

旅のお供は、ホンダGB250クラブマン、だったのね。

まず、広徳寺というお寺へ、行ったらしい。

「荷蒻百珍」ではコンニャクの盛り合わせを、バクバク喰ったらしい。

酒まんじゅうやおやきなんぞも、喰ったようだ。

民芸茶屋「むべ」ってところでコーヒーも飲んでいる。カップが選べる喫茶店だったらしい。

以上の記憶は、ほとんど、ない。

ミスター・バイク1984年6月号の38〜39ページを参照しながら書いている。

ミスター・バイク1984年6月号

この頃ワタクシはミスター・バイク編集部にはいなくて、その年の5月24日に創刊する『ゴーグル』編集部に移っていたのだった。

だから、このページ担当者は石井君である。

なるほど、そうか……。

“コンニャクの盛り合わせが旨い。昼食べても今夜喰う。”などとゆーキャプションは、ワタクシは書かぬ、断じて!

“むべなるかな、光明山荘脇の民芸喫茶「むべ」は……”などとゆーキャプションは、ワタクシは書かぬ、絶対に!


で、秋川の河原で撮影。

「黒ネコの入った段ボールは、河原のアッチの方のちょっとした石の陰に隠してありますから、徐々にソッチに近づいてください」


右上へ

ディレクターからの指示なのだ。ちなみにディレクターのWさんは、元アイドル歌手の旦那さんだった。

滝沢カメラマンが、「いいよぉ、いい感じ。もうちっとアッチへ歩いてみよーかー」てな演技をしている。

石井君たら、「アッチの方へ澪ちゃんに歩いてもらって、滝沢君、コッチから撮って」てなこと言ってる。

ワタクシも負けてないよ。

「それよか、アッチをバックにしてコッチから狙うのがいいんじゃね?」てな感じで、全員が“アッチ”へ行かそうとするの、見え見えじゃんか!

マネージャーのフタバさんは、フムフムしてるだけだ。

ま、澪ちゃんも、なんも知らずにアッチへアッチへと行ってくれるのだった。

で、ここだよ、このタイミングだよ、ネコちゃんよ、黒ネコちゃんよ!

「ニャ〜」と鳴いてくれ!

鳴かぬ。

黒ネコ、鳴かぬ。

何故、鳴かぬ!?

今だったら無線で、なにかしらの指示があるんだろうが、当時はそんなものなかった。

どーしよー。

そん時だった。

「ニャ〜」だって。

すんごいか細い鳴き声で、「ニャ〜」だって。

聞いた? ねぇ、聞いた?

聞こえたっしょ? みんな!

でも、澪ちゃんはじめ、みんな知らんぷり……、クイズシランプリ、ってか!

ワタクシ、意を決しました! ズン!

「あっ! ネコだよ。捨てネコみたいだ! この段ボールの中で鳴いてる」だって。

「ええーーーーっ? ホントっすかぁ?」だって。

段ボールを開ける、ワタクシ。

固唾を呑む、澪ちゃん、他3名。

結構デカイ黒ネコが、いた。

目は金色だった。

「マイケル・ジャクソンのスリラーみたいな金目のネコだよ!」ワタクシ、言いました。

で、この後は簡単……なはずだった。

「澪はネコ好きですから、すぐに“可哀想だから連れて帰ろう”ってことになります」

マネジャーのフタバさんは、大きな胸を叩いたのだった。

なのに……。それなのに……。

ワタクシが言った一言が、イケなかった。

「連れて帰る、ってことは責任を持つことだからね」

言わなきゃ良かった、この台詞、つーか、ドシロートのワタクシが余計なことを……。

澪ちゃんは、間髪入れずに答えたのだった。

「そうだね、置いて行こう!」 だって!

はぁ?

はぁ、はぁ、はぁ?

“ネコ大好き”な澪ちゃんだったのでは?

“絶対に連れて帰る”澪ちゃんだったのでは?

フタバさん、どーすんだよ!

「なんとか連れて行かなきゃハナシになんないっすよね、なんとかしましょ、中尾さん」って、フタバさんは囁くのだった。

「だけど、このまま置いてったら、死んじゃうかもよ。この辺り、夜は寒いし……」てなことを、ワタクシ言った気がする。

「そうだね、連れて行こう!」……、変わり身の早い澪ちゃんだったのだ。

いよいよ光明山荘。

仕掛けのクライマックスが始まるのだった!

長くなっちゃった。

すまぬ。

次号へと、続くのだ。


東京エディターズ代表取締役社長兼
WEB Mr. Bike代表
『中尾祥司拝。』
中尾祥司
ミスター・バイク誌の創刊からのメンバー(あん時ゃ下働きだったけど)。当初はフリーライターとしての契約だったが、「アイツの一ヶ月のギャラ、高いんじゃないか? 社員にしちまえ!」とゆー、今は亡きボス渡辺の天の声で目出度く正社員に。ちなみに給料は5万円弱だった(あん時ゃツラかった)。それ以前は、某政党の運動員(あん時ゃパクられそーになった)、シロアリ退治業者(あん時ゃ、「奥さん、ホラいましたよ」と用意してたシロアリを見せるよーな汚いマネはしなかった)、新宿ゴールデン街の某バーでバーテンダー(あん時ゃ呑めた、今は下戸……なんでやろ?)、そして「サイナラサイナラ」の淀川長治さんの映画の本を作る手伝いをして編集と関わる(あん時ゃ、「私は嫌いな人に会ったことがない」無垢な青年だった)。とゆーわけで、あん時ゃあーだった、こーだったとゆーハナシをしよう。あ、顔写真で、なんでマスクをかぶっているのかとゆー真相もおいおいに、ね。

topへ

[第9回|第10回|第11回]
[バックナンバー目次へ]

目次
↑クリックするとMBHCC目次に戻ります
バックナンバー目次
↑クリックするとバックナンバー目次に戻ります