- HERO‘S 大神 龍
翌30日、前回を上回る規模の大寒波が日本列島を襲った。
この日、晴天続きの高知も朝のうち雲が多かった。昼を過ぎたあたりから青空を取り戻していたのだがラジオから流れてくるニュースは日本各地での大雪による被害を知らせるものばかりだ。
四国でも山の方では何センチ雪が積もっているなんて話が聞こえてくる。桂浜は晴れているというのに・・・。
これまでに辿り着いた10数名は大きな崩れを見せる事のない天候のもと毎夜、焚き火を囲んでの宴会を繰り返していた。
そしてこの日もなんとか種崎入りした数名を加えて夜宴開始。
そんな折、名古屋からこっちに向かっていたリアル・マッカーズのマコちゃんから連絡が入る。
瀬戸大橋を渡り坂出ICを出たところで相棒のシンちゃんが雪に足をとられて転倒したらしい。
シンちゃん本人は軽傷で済んだものの愛機であるニンジャはステップが折れ、ケースが割れて自走できない程のダメージだと言う。
地元から500キロ近く離れた場所まで来て吹雪の中、足を失うというのはかなり深刻な事態だ。だがこの知らせを受けて先着組の対応は早かった。
香川にある馴染みのバイク屋“ロデオ”に連絡をとり彼らをバイクごと拾ってもらいその近くに在住するチーム魂(ソウル)のボスであるE島氏宅へ。
そこで2人には一泊してもらった翌日、バトル・パイーンズの頭である岡ニャンの迎えにより車で観音寺のANかつ氏のうどん屋を経由して昼頃、種崎入り。
この件についての一連の流れを簡単に書いてしまったが関わった人たちはすべてこの2人とはこの時が初対面だ。
それを踏まえた上で語るならば年末のこの時期に対応してくれるバイク屋があって泊めてくれる人がいておまけに高知まで運んでくれる人がいるなど普通に考えたら有り得ない。
ついでに言っちまうとシンちゃんのニンジャは年末年始の間にロデオのマスターによって修理されシンちゃんは自走で帰る事ができたというオチまでついている。
この出来事はここに集まったバイク乗りの繋がりが決して薄っぺらいものではないことを証明している。
それぞれが長年の行動によって培った信用、絆といったものがあってこそ成せる業だ。
運がいい。単なる偶然。確かに見方によってはそうかもしれない。だがここまで出来過ぎた強運だとか偶然はもうほとんど奇跡と言える。
この見事としか言いようのない仲間の連携により辿り着いた2人を迎えたこの日の宴会はより一層の盛り上がりを見せた。
そして彼らの無事の到着を祝福するかのようにさらにもう一つの奇跡が起きた。
カウントダウンまであと2時間と迫った頃、もう10年近くもの間、開いてるところを見た事のない種崎公園開かずの海の家に突然、明かりが灯った。
オレが種崎入りした時から内装工事をしているのは知っていたがそれはGWや夏の海開きへ向けての準備とばかり思っていたため、これには完全に意表を突かれたと言っていい。
店主はオレ達を店内に招きいれてくれた。しかも全員に生ビールを振舞ってくれるというサービス振りだ。
このまるで予期していなかったサプライズに宴会のボルテージはさらにワンランクアップする。
そしてその盛り上がりは午前0時のカウントダウンでピークを迎える事となる。
こうして2010年最後の宴は最高にドラマッチックな演出とともに幕を閉じた。
その翌朝、オレはまだ暗い中を桂浜へ向けて歩いた。
今年の桂浜は昨年に比べると人の数も少なくドラマの影響による一時のフィーバーぶりは一段落した感がある。
そんな中、7時を20分ほど過ぎたところで太陽が水平線から顔を覗かせた。
初日の出だ。
耳に入ってくるニュースは相も変わらず拡大していく各地の雪被害のものばかりだ。なのに・・・この桂浜の穏やかさは一体、何だ。
なんせここに来てからというもの雪はおろか雨らしい雨すらも降っていない。
これもある意味、奇跡と言っていいのかもしれない。
そんな新年の夜明けにオレは何を誓う。
正直言って何も思いつかない。
だが走る。そして色んなステージを走り回った後は辿り着いた場所に居合わせた奴等と酒を呑む。
そして語ろう。この底無しに素晴らしく面白いバイク乗りの世界を。
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