- HERO‘S 大神 龍
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雨はすっかり上がり夕方近くにはコウタンと星野氏もやってきた。
夕方から夜にかけても次々と・・・その中に福島原発付近に住んでいて今回の震災で避難を余儀なくされた大山夫妻の姿が。
これはちょっとしたサプライズだった。
訊くと今は京都に避難してきて、すでに仕事も見つけて新しい生活を始めているんだとか。
仲間との再会に大山夫妻は屈託のない笑顔を見せる。
その笑顔の裏にはオレ達には計り知れないほどの苦渋が隠れているだろうにそんな事はおくびにも出さない。
そう、マイナスの思考では何も得る事はできない。
色んな所から物資が届けられかつてないほどの規模で義援金も集められている。
だが、人の好意には限界があり他人にすがって生きていける時間なんてのは長くない。
人間は最終的には自分の足で立つしかないのだという事をバイク乗りは本能的に知っている。
ならば・・・ここに時化た空気は必要ない。
夕暮れ時、オレ達は今も東の地で放射能の恐怖に晒されながら頑張っている仲間達と復興へ向けて新たな第一歩を踏み出した大山夫妻への激励を込めて、そして不運にも津波に呑まれ亡くなった高橋伸一氏を偲んで乾杯した。
そこからのオレ達の宴はいつもと変わらない。
皆、良い感じで酔いが回ってきたところでコウタンが取り出した寄せ書きノートに一人一人がそれぞれの想いを書き連ねた。
募金箱には酔った勢いでそれぞれが競うようにお金を放り込んでいく。
雨はすっかり上がり月明かりに照らされた満開の桜が映える。
オレ達の宴も満開状態だ。
酔い潰れてテントに放り込まれた者もいれば朝まで語り明かした者もいる。
こうしてオレ達のディープな一夜は過ぎていった。
これから先、良いも悪いも含めて色んな事が目まぐるしく変化していくだろう。
そしてそれを一人一人が逃げる事無く受け止めていかなければならない事になっていくだろう。
コウタンと星野氏のラリーも始まったばかりだ。
そしてこのオレもそれを繋ぐ一人になる。
明確にはカタチを成さない、だが確実にそこにある。そんなバイク乗りのアツい想いを届ける為に。
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