前回、このコラムで“警察官の発砲は違憲だったのか?”というのを書いたが、明らかな犯罪者に向けて抑止&防衛のために発砲したことで裁判を起こされてしまう今の日本はおかしくないのだろうか。
たまたま当たり所が悪く障害を負ったからといって、自らがまいた種、それも警察官に刃を向けた上での結果に、金をせびろうなどと。悪党にも悪党なりの筋の通し方があるず。
日本人から恥という言葉が急速に消滅しかかっている。
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10月19日に、愛知県で起きた事件をご存じだろうか。夕刻の街中で映画さながらの犯罪集団による仲間の奪回事件が起きた。警察官が盗品のクレジットカードを持ち込んだとして不審な男女を警察署に任意同行しようとしていた。そこへ、その仲間と思われる数台の車が突っ込み、木刀を振りかざし、さらには拳銃を向けて警察官を威嚇し、男女を奪還して逃走したという。こんな状況でもこの警察官たちは威嚇射撃すらしなかったという。
この事件にはさらにおまけがあって、当初県警は拳銃を持った犯人グループを取り逃がしてしまったことを発表すらしていなかったという。
7月には、兵庫県で“ガソリン泥棒”の110番通報を受けて出動した警察官2名が、これまた威嚇射撃もせずにすごすごと凶悪集団を逃亡させている。職務質問をしようとした若い男ら10人前後の容疑者グループにクルマで突っ込まれ、一応は拳銃を取り出し「止まれ、撃つぞ」と威嚇したもののそこから先は何も出来ずみすみす逃がしている。その間、民家の塀を壊すは、警察官に向かって車を走らせるは、という手につけられない状況だったにもかかわらず、だ。
警察官に対してですらこの傍若無人、一般市民が巻きこまれたら一体どうなったことやら。アメリカみたいに何でもかんでも拳銃をぶっ放せ、といっているわけじゃない。明らかに遵法意識の欠如した“犯罪者”を世間に野放しにせず、その場でなんとしても検挙をしてほしい。抵抗してくるような犯罪者なら拳銃を使用してでも、ということだ。
たかがガソリン盜ぐらいで、と勘違いされている方も多いだろう。ガソリン盜に拳銃を使え、と言っているわけじゃない。警察官に現場を押さえられた時点で観念するわけじゃく、逆に警察官に危害を加えてでも逃亡を図ろうとする反社会的な凶悪犯には断固たる処置を、ということだ。
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「二輪車新聞」というバイク業界唯一の週刊発行の新聞紙がある。一般の方々が目に触れる機会はほとんどないだろうが、二輪で飯を食っている人間にとっては欠かすことの出来ない、いわゆる“堅いネタ”を中心とした情報を取り上げてくれる貴重な情報源となっている。
まあ、日頃脳天気にバイクの楽しさばかりを追求している我々編集者にとっては、なかなか興味深い内容で、ついつい読んでしまう。で、その10月15日号に『交通事故'10上半期』という警察庁の統計資料を基にした記事が載っていた。
それによると「今年上半期の二輪車の事故による死者は3年ぶりに増加に転じ、3.7%増の396人の方が亡くなられた」という。
この十数年、二輪車の死亡事故は減ってきていたはず。で、さっそくインターネットで警察庁の統計ページに飛んでみた。記事の元となった統計は10月15日に公表された「交通事故統計(平成22年9月末)」というものだった。
確かに平成22年の上半期の二輪車乗車中の死者は396人と、前年の382人より増えてしまっている。3.7%とはいえ増加は増加だ。
平成12年の691人からすればそれでも半減に近い数値ではあるのだが。ちなみに、翌13年は662人、14年は688人、15年578人、16年592人、17年512人、18年472人、19年477人、20年414人、21年382人と増減の小さな振れはあるものの漸減で推移してきている。22年の数値もブレの範囲だった、と言えるようになればいいのだが。
死亡事故は、亡くなってしまった本人にとってももちろん無念なことだろうが、相手がある場合はその相手にも一生消えない深い傷を残してしまう。
地方の状況は分からないが、昨今の都市部での通勤時間帯などのバイクの傍若無人ぶりを見ると、死者数が増えてしまったのも分かるような気がする。
急ぐからと言って中央線のイエローラインを全く無視して対向車線を延々使っての追い越し、考えられないスピードでのすり抜け、他のドライバーやライダーの“良識”によってかろうじて事故にならないでいるのが理解できない“オレ様ライディング”。
せめてバイク・ライダーくらいは“恥”を知る日本人になりませんか?
- 小宮山幸雄
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