Hi-Compression Column

順逆無一文

“対牛弾琴”

(7月27日更新)

深夜の帰宅途中に警察官たちに止められた。なんでも「ひったくりが多発しているので…」とか。クラッチ操作が必要なバイクでひったくりもあるまい。オフ車なのを見れば「ご苦労様でした」で通してくれるのかと思ったが、何やらこの警察官たちは自分の頭で状況を判断することがないらしい。マニュアル万能世代の警察官だ。

「免許証を見せてください」「なんで?」「ひったくりが多発しているので…」「俺をひったくり犯と思って止めたわけ?」「とにかく免許証を」

「なんで?」の一言に敏感に反応した。態度がいきなり強硬になった。帰宅を急いでいるときに、それ以上時間を無駄にしたくなかったのでとりあえず免許証を出す。バイクを降りて、デイパックを降ろして、中から免許の入ったセカンドバッグを出して、さらにその中の財布から免許を取り出すと、警察官がすかさずひったくりメモしだした。

「免許は見せますが、持ってかないでください」と取り返す。顔の直前に突き出して「さあどうぞ」。もう一人が無線でバイクのナンバーを照会し始めた。「ナンバーはなんで調べるんですか?」「ひったくりが多発しているので…」

ロボットか? 何を言われても「ひったくりが多発しているので…」と返事をするようにプログラミングされた警察官。

「ので…」のあとが聞きたいんだ。深夜に帰宅を急ぐ市民を足止めするからには、検問の趣旨ぐらいはまともに説明しろ。マニュアルに書いてない?

いや、まともに説明できない二輪差別の検問だから「何言われても余計なことは口にするな」とでもマニュアルにあるのだろう。

当の犯罪者なら、幹線道路でマニュアル警察官たちのおまぬけ検問なんぞに引っかかるわきゃない。せいぜい飲酒運転のアホをたまたま検挙できるくらい。明らかにバイクに対する嫌がらせの「仕事してます」ルーチンでしかない。それが証拠には、バイク・ライダーだけを無差別に足止めをする検問の横を、当て逃げ、取締り逃げを前提にした犯罪予備軍であるナンバーカバーをしたクルマが平然と通り過ぎてるのを見ようともしない。自ら意志を持って法に破っているクルマを見逃しておいて、なにが「ひったくりが多発しているので…」だ。

点数稼ぎとルーチンでしかない取締では、真の犯罪者にはまったく効果がない。そればかりか、一般市民の遵法意識をどんどん低下させている原因になっているのが、実はあなたたちサラリーマン警察官なのだと言うことに気がついて欲しい。

帰宅を急ぐ深夜じゃなければとことん警察の本来あるべき姿を話してあげられたのだが…。惜しいことをした。

         ※

無謀なバイクのすり抜けによる事故のニュースが相変わらず多い。

前にも書いたが、あまりにも当たり前のように若者ばかりじゃなく、いい年したオヤジや女性までもが交差点ですり抜けをやっているのを見ると、すり抜け行為が違法なのだと言うことを知らないのじゃないだろうかと思う。

で、すり抜け行為という事象を法律の面からちょっと見てみた。

サラリーマン警察官諸君もこの際お勉強してもらうといい。簡単に点数稼ぎができる取締のことだけしか知らないだろうから、とても微妙な解釈も含まれるすり抜け行為に関連する法知識をご参考までに。

まず、すり抜けで関連が考えられる「交通違反の種類」としては、

「通行区分違反」:2点:7,000円
 「追い越し違反」:2点:7,000円
 「徐行場所違反」:2点:6,000円
 「安全運転義務違反」:2点:7,000円
 「通行帯違反」:1点:6,000円
 「進路変更禁止違反」:1点:6,000円
 「指定通行区分違反」:1点:6,000円
 (※反則金の額は自動二輪を参考に)

こんなところだろうか。で、それぞれの根拠となる法律は、

■「通行区分違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第一節 通則(第十六条~第二十一条)
(通行区分)
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 省略
3 省略
4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
 一 当該道路が一方通行(道路における車両の通行につき一定の方向にする通行が禁止されていることをいう。以下同じ。)となつているとき。
 二 当該道路の左側部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
 三 当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。
 四 当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき(当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限るものとし、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)
 五 勾配の急な道路のまがりかど附近について、道路標識等により通行の方法が指定されている場合において、当該車両が当該指定に従い通行するとき。
6 車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。 (罰則 第一項から第四項まで及び第六項については第百十九条第一項第二号の二)

道交法第17条の4にあるとおり、交差点で信号待ちしているクルマの列を対向車線にはみ出して先頭に出る行為は明らかに通行区分違反だろう。また、歩道に乗り上げて先に回り込むのも、車道と歩道の区別があるところでは車道を走るように定めた第17条に違反していることになる。

小宮山幸雄
komiyama
“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。


右上へ

■「追越し違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第四節 追越し等(第二十六条~第三十二条)
(追越しの方法)
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項(注:道路外の施設若しくは場所に出入するための右折)又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定(注:交差点での右折)により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
3  車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。 (罰則 第百十九条第一項第二号の二)

(追越しを禁止する場合)
第二十九条  後車は、前車が他の自動車又はトロリーバスを追い越そうとしているときは、追越しを始めてはならない。
  (罰則 第百十九条第一項第二号の二)

(追越しを禁止する場所)
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
一 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂
二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分。

「追い越しでなくて追い抜きだ」という言う方もいるだろう。バイクの場合、難しい判断だ。確かに『車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう』が追い越しの定義(第2条1項21号)だから、バイクなら「進路変更はしてない」と言い張ることも可能は可能だ。

■「徐行場所違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第八節 徐行及び一時停止(第四十二条・第四十三条)
(徐行すべき場所)
第四十二条  車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一  左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
二  道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂を通行するとき。
   (罰則 第百十九条第一項第二号、同条第二項)

徐行というのは『車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう』(第2条1項20号)のだから、「こいつのスピードじゃ、不用心なクルマが後ろも確認せずにドアを開けたらまずアウトだな」的スピードですり抜けするやつは確実にキップだ。

■「安全運転義務違反」

 第四章 運転者及び使用者の義務
  第一節 運転者の義務(第六十四条~第七十一条の六)
(安全運転の義務)
第七十条  車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
   (罰則 第百十九条第一項第九号、同条第二項)

出た! 天下の宝刀。事故を起こして他の違反が立証出来ないようなケースでは必ず適用される“便利”な条文だ。さすがに最近は警察庁のご指導で乱発は減ったと言うことだが、事故のケースじゃなくても最後の切り札としていかようにも“使える”。その気になればすり抜けなどにぴったりのコンビニエンス法の典型だろう。

■「通行帯違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第一節 通則(第十六条~第二十一条)
(車両通行帯)
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
2 車両は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により前項に規定する通行の区分と異なる通行の区分が指定されているときは、当該通行の区分に従い、当該車両通行帯を通行しなければならない。
3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項(注:道路外に出るための左折)若しくは第二項(注:右折、横断)若しくは第三十四条第一項から第五項までの規定(右左折)により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定(注:指定通行区分)に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定(注:進路変更の禁止)によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定(注:緊急自動車の優先)により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。 (罰則 第百二十条第一項第三号、同条第二項)

まあこれも「追い越したわけじゃない」といえばそれまでだが。

■「進路変更禁止違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第四節 追越し等(第二十六条~第三十二条)
(進路の変更の禁止)
第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示こえて進路を変更してはならない。
 一 第四十条の規定(注:緊急自動車の優先)により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
 二 第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかった車両通行帯を通行の区分に関する規定に従って通行しようとするとき。(罰則 第二項については第百二十条第一項第二号 第三項については第百二十条第一項第三号、同条第二項)

「みだりに進路は変更してない」と言い張るんでしょうな。

■「指定通行区分違反」

  第三章 車両及び路面電車の交通方法
   第六節 交差点における通行方法等(第三十四条―第三十七条)
(指定通行区分)
第三十五条 車両(軽車両及び右折につき原動機付自転車が前条第五項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、前条第一項、第二項及び第四項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。ただし、第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないときは、この限りでない。
2 前条第六項の規定(注:右左折)は、車両が前項の通行の区分に従い通行するため進路を変更しようとして手又は方向指示器による合図をした場合について準用する。(罰則 第一項については第百二十条第一項第三号、同条第二項 第二項については第百二十条第一項第二号)

よく見られる右折レーンを使って前に回り込む行為も当然アウトです。

ご参考になりましたでしょうか。

(小宮山幸雄)



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