Hi-Compression Column

順逆無一文

“無慙無愧”

(8月29日更新)

編集部の一人がバイクで転倒した。何でも深夜の一般道を走行中に、道路を横切ろうとしていきなり飛び出してきた人間を避けて転倒したという。コンビニの反対車線に止めたクルマに急いで戻ることしか頭になかったのだろう。ろくに左右を確かめもせずに飛び出した。その上自分が原因でバイクが転倒をしたのを知りつつさっさと逃げてしまった、という。

とんでもないハナシだ。が、よく聞くハナシなのが悲しい。無理してでも避けたからこそ人身事故にならず、そいつも怪我することがなかった、というのに。当然警察に電話したが、「相手が居ませんって? しかたがないですね」と、あっさりと自損事故で処理されるらしい。

本当の原因がなんであれ、警察の勝手な解釈は「前方不注意」、または「安全運転義務違反」、「法は法ですから」だ。アホがいなければバイクが転倒することはなかった、という事実でも証拠、証人がいない限り警察には意味をなさない。

これが“撮影協力:警察庁様”などのTVドラマなら「じゃ、コンビニの防犯カメラ画像をチェックしましょう。そうすれば、相手が分かるはず」なんてのは警察庁様御用達ドラマでのハナシ。現実の警察は“たかが単独転倒事故”では現場検証すらまともにしない。前方不注意で事務処理完了、一件落着。と考えているのはミエミエだ。

“被害”にあったライダーからしてみれば、転倒など、普通なら一生に一度あるかないかの大事件。まあ毎日のようにバイク乗る我々の様な仕事をしていれば、数年に一度の頻度であったりしてしまうのだが…。

それはともかく、一般のライダーにとっては一生の一大事でも、警察にとっては日常茶飯事。「バイクなんですから転倒するのは当たり前。それがヤならそんな危ないモノに乗るのやめなさい。バイクは社会の迷惑なのだし」だろう。

たまたまライダーの機転で衝突を避けることが出来て、そのおかげでアホは自分の足で逃げることが出来た、という結果となっただけで、もろにぶつかっていれば、ライダーもそのアホも重傷、下手すれば死亡していたかもしれない。

たまたま運がよかっただけ。条件次第では死亡事故になっていたかもしれない、ということには思いをはせない。

事故防止の常識「ヒヤリハット」を重く見ることが重大事故を無くすことに繋がる、という教育を最近の警察官は受けていないのだろう。勘違いしている人が多いが、市民ひとりひとりを守るのが警察官の職務なんかじゃなく、社会という存在そのものを守るのが警察の職務だから、ま、当然か。

擦過&打撲傷程度だったのが不幸中の幸いだが、パーツの手配も心許ない絶版車のキズは時間が経っても自然には治らない。

それにしても、最近の日本人の傍若無人ぶりは目に余るモノがある。ちょっとでもクルマが途切れようものなら赤信号でも自分勝手に渡るし、横断歩道の信号が青から赤になってもだらだらと平気で渡り続ける。自分がしたいこと、欲望のおもむくまま、いとも簡単に流されてしまう。“恥ずかしい”という概念がないのだからまあ、それはそれで理解できないこともないが、それに輪をかけて最近の日本人は自己防衛本能が欠けてきている。

小宮山幸雄
komiyama
“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。


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横断歩道でもないところを渡る以上、本来なら自分の身は自分で守る。それが理解できていない。権利ボケしてしまった日本人だ。クルマが止まるべき、クルマより歩行者の方がエライ、だ。万が一にも暴走車が突っ込んでくる、なんてことはみじんも考えない。考えないから回りに注意もはらわない。

この傍若無人さと防衛本能の欠如が合わさって、事故がいとも簡単に起きる。

昔から悪いことするヤツはいっぱい居た。だが、少なくとも己のやっていることはきちんと認識していた。悪は悪なりに。

それが現在は、自分が悪いことをしているという自覚無しに法を破っている。その上、そんな状態でも権利は守られると勘違いしているのだから呆れたものだ。

自分が痛い目を見るだけならいくらでも傍若無人、権利ボケしていなさい、だ。だが、そんな自己中に巻き込まれる方はたまったモノじゃない。

         ※

『駐車違反 車所有者への放置違反金、滞納100億円』

という記事がネットに流れていた。

ご存じの通り「放置違反金」制度は、2006年6月からスタートした。様々な問題点を抱えながらも最高の“集金システム”として活用されるはずだった当局の目論見が早くも崩れようとしているらしい。

取りっぱぐれのあるドライバー、ライダーへの反則金じゃなく、確実に請求できるクルマ、バイクの所有者を狙い打ちする「放置違反金」の滞納額が、昨年3月末時点で全国で100億円を超えることが分かったのだという。

要するに「放置違反金」制度でも逃げ得が常態化してしまうことになろうとしている、ってことだろう。

のらりくらりと言い訳をつけることができた運転者への反則金などアテにしないで、有無を言わさず登録情報から確定できる所有者から“集金”しようというのが制度の根幹だったはず。しかし未納なら車検を通さなくする、とかいっていたのはどうなったのだろう。

(軽二輪はどうするの? などということはまた別の機会に…)

この放置違反金の時効は最初の督促状から5年なのだ。つまり、2006年6月スタートで、最初に滞納者に督促状が送られたのがその年の8月ということで、それから5年、いよいよ時効となるものが発生する、というのだ。

ちなみに昨年3月末までの統計では、全国で約1千億円の「放置違反金」を徴収できたという。一方の滞納も毎年積み上がって約100億円。なんと1割が滞納! 凄い額だ。もっと日本人は善良なのかと思っていたが、どうしてどうして。こんなところにも遵法意識の欠落が出てきてしまっているということか。

滞納の県別ベストスリーも発表されているが、トップはもちろん東京都、堂々の28億3千861億円。2位は大阪府、26億8千308億円。そして3位も順当に愛知県の12億5千749億円と、この3府県でなんと7割弱! まあ、駐車難の都市を抱えているところが多くて当たり前といえば当たり前。

こんな数字は出来るだけ公にしたくなかったのだろうが、金集めシステムでしかない「放置違反金」制度自体を見直すきっかけになるのなら、大いに広めるべきだろう。

ゆめゆめ滞納者の仲間入りなどしないように。

           (小宮山幸雄)



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