Hi-Compression Column

順逆無一文

“日暮道遠”

(12月27日更新)

寒いですね。指先がしびれる季節になりました。グリップヒーターが欲しい!

さて今月も気になるニュースを。それは、神奈川県警が全国に先駆けて白バイにドライブレコーダーを導入する、という話題だ。

『神奈川県警は来年1月10日から、映像や日時を記録するドライブレコーダーを搭載した白バイを導入する。これまで試験運用の例はあったが、正式に運用を始めるのは全国で初めて。多発するひったくりなどの捜査に役立てたいという。

県警交通指導課によると、白バイ隊員は2人1組のパトカー隊員と異なり、1人で行動する。逃走車両を追う際もナンバーや車種、経路や容疑者の服装などをメモする余裕はなく、記憶と無線での伝達が頼りだ。安全に注意しながら追跡するため、全てを正確に把握するのは難しい。

そこで県警は約135万円をかけ、警察署に配備する54台のうち車種が最も多い1300ccの白バイ31台にレコーダーを着ける。映像が撮影日時とともに記録でき、遠くや夜間の車両も映像解析でナンバーや車種の識別が可能になる。映像は9時間分保存されるが、捜査に必要ない場合は自動的に上書きされるという。』(asahi.com)

「死人に口なし事故を無くすためにもバイクにはドライブレコーダーを」と常々言ってきた人間からすれば、やっとか、という感がなきにしもあらずだが、初めの一歩として歓迎したい。

それにしても情報公開の対極にある様な警察組織が良く決断したものだ。報道の通り、確かにひったくり捜査や逃走車両の特定にも大いに役立つだろうが、常時録画となるとスピード違反取り締まりの状況もすべて録画されてしまう。いいんですか?

この一点だけでも警察はドライブレコーダーの導入には頑強に抵抗するものと思っていた。

有無を言わせない定地式レーダーや光電管等によるスピード取り締まり(それでもいい加減な取り締まりが多発しているのは鶴田さんのページにあるとおり)と違って、白バイによるスピード取り締まりはなかなか難しい。容疑車両の発見に始まって、一定区間の追尾・計測、そしてやっと検挙、となるわけだが。

高速道路のように皆が走行中だったのならともかく、白バイによるスピード違反取り締まりは、多くの場合は物陰に隠れていて、容疑車両を発見してからスタート、追尾ポジションまで追いつくというケース。

そんな状況では、容疑車両を遙かに超えるスピードを出さなければ追いつくわけがない。

そこで問題になるのが、追尾ポジションに入って初めて赤色灯を点灯する白バイがほとんどだと言うこと。猛スピードで追尾ポジションまで猛加速する最中も赤色灯を点灯していては、ほとんどのケースで気がつかれてしまうだろう。それでも気がつかないようなへたれライダーなら、そんなヤツがスピード出すのは危険なので当然がんがん取り締まるべきだが。

ちなみに、道路交通法では第39条から第42条で緊急自動車等の規定をしている。

「政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう」。緊急自動車の運用は、さらに道路交通法施行令第14条の中で「サイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない」となっている。ただし、「警察用自動車が法第22条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない」とある。つまり違反車両を取り締まる場合、サイレンを鳴らさないケースがあっても合法だが、制限速度を超えるなら赤色灯は最低限必要ということ。

まあ、そこはさすがに警察、さらに抜け穴が作られており、都道府県条例でそれすら除外されているケースもあるのだとか。どんな条例なのか今後時間があったら調べてみたい。

話を戻すと、問題になるのが追尾以降ではなく、追尾ポジションまでの行動も逐一記録されてしまうということ。誰が考えても違反車両に追いつくには違反車両よりもかなり上回る速度を出さない限り追いつかない。みなさんはその間、赤色灯をきちんと点灯している白バイを見たことがあるでしょうか?

小宮山幸雄
komiyama
“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。


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サイレンも鳴らさず、赤色灯も付けていない状態では、法律上、白バイといえども“一般車両”扱い。そんな車両が猛スピードで追尾ポジションまで加速する映像がばっちり取れてしまう。

今後、全国の白バイにドライブレコーダーが導入されれば、従来の強引な取り締まり方法は通用しなくなるのだろうか。

「追尾ポジションに入るまでに赤色灯をつけていませんでしたね。そんな違法な取り締まりを認めるわけにはいきませんので、白バイのドライブレコーダーの映像を証拠保全させてください。裁判しますから」となるのは必然。

その場合、警察は正々堂々と映像を提出できるのだろうか。情報公開にもっとも非協力的な警察組織に真の正義が問われる時代になる。

さらに我々取り締まられる側も車両前方だけでなく、後方も同時に録画できる2カメラ方式のドライブレコーダーを装着していれば鬼に金棒だ。日本人はこれまで“裁判”に極度の抵抗感を持っていたが、もう国家権力だからといって泣き寝入りする時代じゃない。「悪いことしたらお巡りさんに捕まえられるよ」の警察自体が、限りなくグレーな取り締まりを行ってきたのだ、という自覚を持って欲しい。他人の非をとがめるのに自ら非を犯してていい訳がない。

「そんなことになったら誰も捕まえられない」と言うかも知れないがそれでいい。一般市民を犯罪者にして捕まえることが警察の役目じゃない。まずは法の下市民を守るのが本来の警察だ。

白バイが警邏していることで、交通違反をする事が無くなれば、それこそが本来あるべき姿だろう。それには取り締まりのノルマなどというばかげた存在を根絶しなければならない。現在あるゆがんだ警察の姿にしてしまったのは、このノルマ制度だ。数多く捕まえるのが優秀な警察官じゃなくて、未然に防ぐことができる警察官を育てていただきたい。

        ※

『巡査がノーヘルでオートバイ運転 安全運動期間中、京都』(2011年10月4日 産経ニュース)

京都府警西京署地域課の男性巡査(26)が秋の全国交通安全運動(9月21~30日)期間の勤務中、約2キロにわたってヘルメットを着用せずにオートバイを運転し、交通違反の告知を受けていたことが4日、西京署への取材で分かった。

同署によると、9月24日午前11時20分ごろ、巡査は制服姿で勤務先の交番を出て同署に向かう途中、阪急桂駅東口(京都市西京区)付近でヘルメットをかぶらずに運転しているのを通行人に目撃され、110番された。走行途中に自ら気付いて着用したが、同署に到着後、上司から通報を告げられると「うっかりしていました」と認めたという。

今西均副署長は「警察官としてあるまじき行為。今後このようなことがないよう指導を徹底したい」と話している。

       ※

『ライダーに生卵ぶつけた警官、起訴猶予』(2011年12月20日 日刊スポーツ)

神戸地検は20日、バイクに乗っていた男性を暴走族と誤解し生卵を投げ付けたとして、特別公務員暴行陵虐の疑いで書類送検された兵庫県警の男性巡査(24)を起訴猶予処分とした。巡査は三木署の交番で勤務していた8月31日深夜、暴走族が走ったような音を聞いて外に出た際、交番前を通過するバイクに生卵を投げて右胸に当てた疑いで11月に書類送検された。

       ※

『白バイ同士が衝突、男性巡査が軽傷』(2011年12月8日 カナロコ)

8日午前8時半ごろ、横浜市神奈川区三枚町の市道で、県警交通総務課交通事故防止対策隊の男性巡査(26)の白バイが、同隊の男性巡査部長(38)の白バイに追突した。2台は転倒し、巡査が顔に軽傷。

神奈川署によると、現場は片側2車線の直線道路。2人はともに交通違反取り締まり中で、速度違反とみられる乗用車を発見した。巡査部長が乗用車の速度を測定しようと一時加速し、その後、減速した際に、後方を走行中の巡査が追突したという。

       ※

警察官をサラリーマン化させてしまったツケが今回ってきているとしか思えない。万人が平等な社会の中にあって、殺生与奪の権利さえ与えられているといえる警察官と言う職業は、一種“聖職”なのだという概念の教育が必要なのではないだろうか。

ちなみにもう少しきちんと予算取って、ドライブレコーダー程度の装置じゃなくて、米軍の強襲部隊が使っているようなライブで本部にデータを送れるシステムを導入してはいかがだろうか。

勤務中の白バイ隊員や警察官達の身の安全にもつながり、職務の適正化も図れるという市民にとっても納得のシステムになるはず。ノルマなんかよりもよほど正確に市民に役立っている警察官かどうかも評価できる。必要とあらば録画情報を公開とするのはもちろんのこと。

           (小宮山幸雄)



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