Hi-Compression Column

フツーのおとうさんのバイク生活・シーズン2


タカヤスチハル
タカヤスチハル
「もう30年以上バイクに乗ってます」と威張れるくらいず~っと乗り続けているのにちっともうまくならないへたれライダー。ふつーのお父さんは逆境にも負けず、ささやかなバイク生活を営んでいます、が……

(2010.12.27更新)

「キッサ店とツーリング」


作家の北杜夫さんのエッセイの中に「男は30代までは女が暖めてくれ、40代からは酒が暖めてくれる」という件(くだり)があった(遠い昔の記憶なのでうろ覚え)。

まだ中学生だった僕は「ナルホドそういうものなのか」と将来の自分に胸をときめかしたりしたのだが、結局「女」には余りご縁は無く、「酒」も下戸だったのでどちらにも暖めてもらえずに今日まで過ごしてしまっている。

その代わりと言ってはナンだが、バイクを好きになった10代後半頃から妙にコーヒー好きになり、あっちこっちのキッサ店で飲み比べてみたりツーリング先で良さそうな店を見つけると立ち寄るようになったりした。

キッサ店の充実度の点で名古屋っちゅーか東海地区は中々大したモノである。関東ではずいぶん少なくなった個人経営のキッサ店もこちらではとっても元気が良く、よくTVでやってる充実したモーニングセットみたいに各店が特徴を出してそれぞれにお客をカクトクしている。

だから僕も週末を名古屋で過ごす時はたいがい朝食はキッサ店のモーニングセットになる。

その12月中旬の日曜日も、僕は朝8時半には近所のキッサ店に出没し、モーニングのCセットなども食べ終え、「さ〜て今日は一体どうしたものか?」などとかなりゼイタクかつノンキな考えに耽っていた。

前日のゴルフも惨憺たる結果に終わり、明日から1週間のぞっとしないスケジュールを考えると朝からあまり気分は乗らない。

まあ普通に考えると、これから会社に行ってやり残した仕事をやっつけてそれから映画でも見るかな〜、というのが単身赴任オトコの正しい週末の過ごし方ってなことになる。

でも、冬場なのにキッサ店のガラス越しの日差しは柔らかく暖かい。2杯目のコーヒーも熱くて美味しい。しかもまだ朝9時にもなっていない。

となるとこれはもう「そうだ、ツーリング行こう!」なのである。

これはナンだかここ10何年も持ち得なかったとっても懐かしい心持ちである。

独身オトコに決別して以来、少なくともおとーさんになって以来、休日に何をやるか決まってないことなんてまず無かった。

っつーか休日にはやらねばならない事が一杯あり、それをやっつけないと趣味の時間はやってこなかった。

学生の時みたいに朝起きて「さあ今日何すっか?」なんて考えるのは実に久し振りのことで、これはひょっとしてかなり幸せなコトではないか?とつくづく感じ入った位なのである。

(さてここまで書いてきて、う〜んこの文章をオクサマに読まれたら思いっきり叱られるだろうな〜と思わざるを得ない。なんで自分だけ週末楽しそうに「さて今日何やろうかな」なんて浮かれてるのよ〜、などと絶対言われそうである。)


まあとりあえずオクサマのことは置いといて、その日はこのような経過で突如ツーリングに行くことにしたのでした。

ところでツーリングで峠のくねくね道を走っていると知らないバイクと一緒になることも多いのだけれど、時折「なぜだか分からないけれど波長が合う」バイク(及びライダーですな)に出会うことがある。

走る技量が丁度良いだけじゃなく、安全マージンの取り方とかムリの仕方とかが似かよっている、ってことなんだろうけどこんなバイク(及びヒト)と期せずして一緒に走るととっても楽しい時間が過ごせたりするモノである。いや、あります。

決して競い合おうって訳じゃないのだけれどやっぱし負けたくない、みたいな緊張感もあり、でもそれよりも何よりも気持ちいい感覚をお互いに共有するような感じ、って言ったらよいのだろうか? まるで一緒にダンスを踊っているような一体感を共有したりするのである(ちょっと言い過ぎかなあ?)。

この日の突如思い立ちツーリングで、3桁国道と県道を繋いで、気持ちの良いくねくね道を走り回っていた時のことだ。

追越し禁止区間で前方の遅いクルマに捕まっているイマドキのバイクを見つけた。後姿で大概のバイクを見分けることが出来る、と思っていた僕なのだがイマイチ特定出来ず、横から見ようとすると残念、追越し禁止区間が終了し、そのバイクは一気に加速して前方のクルマを追い抜いて行った。

「おっとー、待て待て〜」と続いて僕も加速したところから見知らぬバイク同士2台の仲良し? 走行が始まった。相手のバイクが前、僕が後ろ。距離を保ったまましばらく一緒に走っていると大体相手の技量は分かるものである。

「ああ、うまいライダーだな」と思いながら僕は同じラインをトレースして行った。それがとっても楽しい。気持ち良い。

プレッシャーを掛けるつもりはないので一定の距離を置いて付いていくのだが、相手にもそれが分かるのだろう、余裕を持って引っ張ってくれてるようにも思えてくる。

「こうやって走れる?」

「うん出来るよ」

「じゃあここまでは?」

「それはちょっとムリかな」みたいにバイクで会話しているようにすら感じる(勝手な思い込みかな?)。

こういうこともあるからやっぱりバイクって止められないよね〜、とまで走りながら思ってしまう。

はは、余りに楽しかったのでこんな個人的なことをだらだらと書いてしまいました。

ちなみに分からなかった車種はストリートトリプルR(トライアンフね)でした。かなり良さそうなバイクでしたよ。



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