2011年の開幕戦は、毎年恒例のカタールGP。ロサイル・インターナショナルサーキットで年に一回のナイトレースが行われる。
いつもなら、長いウィンターブレイクの期間中に高まった期待感で華やかに幕を開けるシーズンのオープニングイベントだが、今年は例年と異なる重苦しい雰囲気も漂わせていた。
レースウィークに先立つ3月11日に発生した東日本大震災の影響が、遠く離れた砂漠のサーキットにも及んでいたからだ。
ホンダ、ヤマハ、スズキといった日本メーカーが主役を担い、多くの日本人スタッフが現場で働くMotoGPのパドックでは、ヨーロッパの関係者にとってもけっして他人事ではない。
選手をはじめ、グランプリに関連するあらゆる人々が、未曾有の大惨事の犠牲になった被害者に心からの弔意をあらわし、レースウィークが刻々と進行する時間にもなお苦境と戦っている被災者たちに対して、応援と援助の意志を表明した。
そこで今回は、二輪ロードレース世界最高峰の舞台で戦うMotoGPクラスの選手全17名に、日本の人々に向けたメッセージを述べてもらうことにした。
突然の依頼にもかかわらず笑顔で即応してくれた選手たちと、迅速な対応をしていただいた各チーム担当者にはこの場を借りて心から御礼を申しあげたい。
17選手の日本に対するメッセージはそれぞれ、以下のとおり。
バレンティーノ・ロッシ
(ドゥカティ・チーム)「この非常に苦しいなかで頑張っている日本のすべての人たちのことを思っているんだ。今回の出来事は本当に恐ろしいけれども、日本の人たちはとても強いから、跳ね返す力を持っているさ。僕ら全員があなたたちを応援している」
ニッキー・ヘイデン
(ドゥカティ・チーム)「世界中があなたたちを応援しているんだ。いま、この大変な状況にある日本の人たち全員に、それをわかってほしい。ぼくは長い間多くの日本企業と一緒にやってきた。だから、日本にはたくさんの友人やファンがいる。ガンバレ。みなが君たちのことを思っている」
ロリス・カピロッシ
(プラマック・レーシング)「ときに人生には理不尽なことが起こる。日本に起こっていることがまさにそうだ。この苛酷な状況のなかで皆が結束して前へ進もうとしている。人生はこれから先も続くんだ。でも、それがどんなに苦しいことか、そして皆がどれだけ一所懸命頑張っているかがぼくにはよくわかる。並大抵のことじゃない。でも、頑張って前進しよう。今回の出来事を知ったとき、本当に悲しくて涙が出た。でも、日本の人たちなら、頑張って前進していけるにちがいない」
ランディ・デ・ピュニエ
(プラマック・レーシング)「日本は強い国だ。この苦しい状況もきっと乗り越えていけるよ。4月の日本GPが延期になったのは残念だけれども、今の状態から脱して必ず良くなっていくことをぼくは信じている。だから、日本の皆さんに心からの応援を送りたい、そして早く幸せを取りもどしてほしい」
エクトル・バルベラ
(マプフレ・アスパル・チーム)「僕が世界デビューしたのは鈴鹿サーキットだった。当時からずっと、日本の人々は気さくに接してくれた。だから、日本には特別な思い出があるんだ。ホンダに乗っていた時代は、ファミリーの一員として温かく接してもくれた。日本人は優しく親切な人々であることを痛感したよ。それだけに、いま、皆さんが直面している恐ろしい出来事にはとても胸が痛む。心からお見舞い申しあげます。皆さんの粘り強い精神力で、力強く復興してくれることが僕にはわかっていますよ」
カレル・アブラハム
(カルディオンAB・モトレーシング)「日本には活力があるから、きっと立ち直ってくれるとぼくは信じている。すべてがいい方向に早く向かってくれるように祈っている。日本GPの延期も適切な判断だったと思う。今の皆の気持ちはとてもそれどころじゃないだろうからね。次に日本GPが開催される頃には元気な日本に戻っていてほしい」
ダニ・ペドロサ
(レプソル・ホンダ)「日本で今起こっていることがとても悲しい。ぼくはレーサー人生をずっとホンダで過ごしてきたから、たくさんの日本人の友だちがいる。日本の人々のことが心配だ。日本の皆さんのために、少しでも早く事態が改善してほしいと心から願っています」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ
(レプソル・ホンダ)「日本GPの延期決定には賛成です。地震と津波の甚大な被害を考えれば、数週間後に日本GP開催するのは妥当ではないと思います。今、日本にとって最も優先するべき事項は人々を救い、この事態から回復してゆくことです。日本の人々のことを、心から思っています」
ケーシー・ストーナー
(レプソル・ホンダ)「日本で発生したこの大変な状況下で、レースに集中するのは容易なことではない。僕ら全員が今回の悲劇のことを心から心配している。でも、僕らにできることは、レースに集中して自分にできる最大限の力を発揮し、ホンダと従業員全員のためにいいリザルトを残すことなんだ」
青山博一
(サン・カルロ・ホンダ・グレッシーニ)「今僕たち選手にできることは、少しでも全力を尽くしていい結果、いいニュースを日本に届けること。これからシーズンが始まるというときにこのような事態が発生したので、集中するのは難しいのですが、プロとしてしっかりとレースに向かって気持ちをつくり、自分たちのベストを尽くしてていきたいと思います。なにはともあれ、今は被災された方にお見舞いの言葉と、今週末のレースで自分の気持ちをあらわしていけるように全力を尽くしてがんばりたいと思います」
マルコ・シモンチェッリ
(サン・カルロ・ホンダ・グレッシーニ)「日本で発生した出来事はとても恐ろしく悲しい。でも、どうか、ぼくだけではなく、すべてのライダーが日本の人々のすぐ近くにいるんだと思ってほしい。どうかぜったいに諦めないで、勇気をもって立ち向かってください。みんな、がんばろう。僕たちの気持ちは、いつも日本人の人々とともにあるんだ」
トニ・エリアス
(エルシーアール・ホンダ)「日本で起こっている出来事は本当に心が痛む。ぼくたちに手助けができることなら何だって力になりたいと思っているんだ。一刻も早く、日本の状況がよくなってほしい。心からそう願っている」
ホルヘ・ロレンソ
(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)「日本人の人々を襲った今回の出来事が、本当に辛く悲しい。こんな恐ろしい災害は、誰のもとにも降りかかるべきじゃない。日本の人たちのことをずっと考えている。少しでも早くもとの素晴らしい日本に戻ってくれるよう、心から願っています」
ベン・スピース
(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)「この出来事を前にして僕たちには何もできない、そして何をいっても空しいだけということがとてももどかしい。今は、少しでも状況を良くしていくために全力を尽くすべきときだ。時間はかかるかもしれない。でも、力を合わせて乗り越えて欲しい。皆様に心からのお見舞いを申しあげます。日本の人々なら、この苦難もきっと乗り越えていけるはずさ」
コーリン・エドワーズ
(モンスター・ヤマハ・テック3)「日本のすべての方々に心からのお見舞いを申しあげます。ぼくにはたくさんの日本人の友だちがいる。日本はレースに関しても豊かな伝統と文化のある国で、ぼくは日本文化が大好きなんだ。家族全員が、日本のことを心配している。一刻も早い復興を祈っています」
カル・クラッチロー
(モンスター・ヤマハ・テック3)「本当に恐ろしい悲劇だ。我がチームの日本人スタッフの友人全員が無事だったのは本当に幸運なことだ。不幸にも亡くなってしまった方々に、心からのお悔やみを申しあげます。日本の方々は、必ずこの大打撃から復興するだけの強さを持っていると信じています」
アルバロ・バウティスタ
(リズラ・スズキ・モトGP)「ぼくはたくさんの日本のひとたちと仕事をしている。たくさんのファンもいる。心から皆さんを応援したいと思う。日本の人たちはとてもたくましいから、今回のいたましい出来事だって、きっと力強く立ち直ってくれると信じている。このような出来事が起こったあとでは、日本GPの開催はもちろん、どんなことも二の次に思えるんだ。今最も大切なことは一刻も早く回復、復興して、日本のみなさんがいつもの生活と笑顔を取りもどすことだと思います」
※ ※なお、日曜の決勝レースは、喪章を腕に巻いてグリッドについたケーシー・ストーナーが優勝。「ガンバレ日本」と大書された日の丸を持って、表彰台の頂点に登壇した。