いつチャンピオンになっても不思議でない実力を持ちながら、怪我に泣かされてきた“スペインの至宝”。寡黙なイメージのある彼だが、これまでホンダのエースに君臨してきたプライドとともに「今年こそは」の強い闘志を秘めているはずだ。
「2010年のマシンがパフォーマンス的にとても良かったので、そこから改善すること自体が困難ではないかと。そんな背景の下、2011年マシンはまだ十分テストしていないので、今季どこまでいけるかという判断をできないのが現状です。
(昨年怪我した肩の具合は)今回のテストで走って、昨年最後の2レースに比べたら状態は良くなっている。ただ、怪我する前に比べたらまだまだ。しばらくそんな状態で付き合っていくしかないと思う。
昨年の日本GPはとても残念でしたが、ツインリンクもてぎで走ることはとても好き。ここはホンダのコースですし、今年は強い自分に戻って優勝したい。楽しみにしています」
ダニ同様、GP125に参戦以来ずっとホンダを駆り続けているイタリアン。MotoGPクラス4年目、ワークス・チームで3年目となる今年、3人体制はむしろ彼にとって“吉”となりそうな予感。
「マレーシアのテストでは台数の関係で2011年マシンを完全にトライすることはできませんでした。
新しいシャシー、新しいエンジンを多少なりとも体験することはできました。
シャシーはブレーキ性能など、前回(昨年の最終戦翌日)のテストに比べ多少良くなっているという印象を受けた。とはいえ、2010年のマシンがかなりいいレベルにあり、高い競争力を持っていた。だから今年はチャンピオンシップを狙っていけるのではないかと思っている。
(今季、ライバルとなる選手は?の質問に対し)ハッキリ申し上げたいところですが、皆速いので誰がライバルかは難しい。
もちろんダニもケーシーもロレンソも同じライバルですし、スピースもかなりいい感じだと思う。
今回のテストで速かったシモンチェリもライバルになる。誰が優勝してもおかしくないので。去年よりレベルの高いレースになると思う。
すいません、バレンティーノ・ロッシを忘れていました! 彼はまだ体調が完璧でないようで、タイムが出ていませんでしたが、彼もライバルになります。彼は今年ドゥカティに乗りますけど、ケーシーが証明したように勝つためのあらゆるポテンシャルを持ったマシンですが、ちょっと難しいんじゃないかなという気がします」
2007年のMotoGPクラス・チャンピオンが電撃移籍。ホンダ・ワークスとしては“絶対王者”ことミック・ドゥーハン以来のオージー・ライダーとなる。王座奪還への必勝体制の中、ケーシーはそんなプレッシャーが自分の活力になっているという。
「去年まで乗っていたマシンとの一番大きな違いは、乗った時の感覚といったところで、ホンダはとてもスムーズ。ドゥカティはアグレッシブに乗りこなさなくてはいけないマシンでした。
エンジンのノイズや振動も大きく、上手く走るにはハードに扱わなくてはならなかった。ホンダはもっとやさしく扱わなくてはいけないという感覚。
まだ100%マシンの特性を飲み込めていないので、もう少し落ち着いたら、ホンダとのハッピーな生活が始まるのではないかと思っています。
ダニ、ドヴィとはこれまでライバルとして戦ってきた。という意味で二人とは長い付き合いだと思う。
二人ともライダーとしてはとてもクリーンな性格を持っている。汚い手を使わないという印象をもってきた。
今回、3名体制として一緒のチームでやっていけるということは、エキサイティングな経験になると思う」
「ご存知の通り2006年以降タイトルを獲れていません。
我々としてもホンダファンに限らず、世界のレースファン、従業員のためにも勝たないと示しがつかない。
メルセデスAMGがドゥカティのスポンサーのように、四輪のビジネスをやっているホンダとしてもヨーロッパで展開する上で二輪のパッションを感じるようなレースをすることが非常に重要になっています。
そういった観点で、ホンダ・ブランド全体のイメージアップにつながりますので、伊東社長からも『今年こそ!』ということもありまして、何が何でもタイトルを獲りたいと思って取り組んでいます。
今年は二輪開発センターの中の様々な部署のエキスパートを、今までの歴史にないほど投入しています。
栃木の研究所でF1をやっていたスタッフもつれてきたりしてます。
なのでHRCだけでなく、二輪開発センター全体で取り組んでいます」
「昨年までの山野に代わり、私が老体にムチ打って監督をやることになりました。
F1ではそれに近いことをやっていましたので、その時にやって良かったこととか、悪かったこととかを活かせればいいかなと思っています。
私は10年ちょっと前までは二輪のレースもやっていたんですが、その頃からだいぶ雰囲気は変わっていますね。いろんな部分がプロフェッショナル化されてきてます。
全体の仕事のアプローチの仕方として専門性が高くなってきたことを感じます。
レースとして成績を求めると、結局あれもこれもと全部やらなくちゃいけないというところはF1と一緒ですね。
昨年はムジェロで勝った中盤以降のマシンがパッケージングとして良くなってきました。
どの方向で開発すればホンダとしてのパッケージは速くなるのかというのは、昨年チャレンジしたおかげで見えました。
なので、今年のモデルはそれをベースにした熟成型です。大きくは変えていません。
今年からライダーにケーシーが加わっています。決してダニがダメだからケーシーをとったワケではありません。
ダニってコースサイドから見るとわかると思うんですが、凄い走りをするんです。
マシンの悪いところをカバーしながらホンダの中で1番で走っちゃうんですよ。
ケーシーはチャンピオンを獲ってるライダーだし、ある速さをもっている。そんな彼が同じチームに来ることで、ダニは今まであまり見せてくれなかった100%の走りをするチャンスが多くなるんじゃないかと思っています。
ケーシーとダニが刺激しあってくれれば絶対タイムが上がる。ヤマハさんがバレンティーノとホルヘでやったのもそういう感じだったと思うし。
今回のテストでドヴィは去年と違う走りで一皮剥けた感じなので、結果的には3人で刺激しあっていけばいいと思っています」