タイトル

まんが

ミスター・バイクの誌面時代から読んでくれているみなさん、3ヶ月のご無沙汰です。
 そしてWEBで初めて読んでくれる方々、これからどうぞよろしくお願いします。
 さて、雑誌からWEBに場所を移しましたが、相変わらず同じテイストでバイクが関わる交通事故や保険についてのことを紹介していくつもりです。
 皆さんが、読んで良かったな、と思ってくれれば嬉しいです。

さて、早速ですが、今月の事故を紹介しましょう。


 もう9月だというのに、夏の日差しが照りつけ、アスファルトからは陽炎が立ち上る、暑さ全開の日曜日のお昼前。NS-1に乗った高校生が、片側2車線の幹線道路を走っていました。


 愛車のNS-1は1995年式で、言うまでもなく原付1種。普通2輪の免許を持ってはいるのですが、バイク乗りの父親の、「まずはフルサイズの原付から。じゃなきゃ認めない」という鶴の一声に従う形で仕方なく選びました。フルサイズとはいえ仲間の普通2輪に比べると貧相だし、高速道路には乗れないしで、最初のうちは不満タラタラ。


「こんなはずじゃなかった」などと思っていたのですが、運転や街乗りにも慣れてくると、少しずつ考えが変ってきました。


 よくよく考えてみると、普段は高速なんて乗らないし(お金が無いから乗れないし)、上まで回すと初心者には充分過ぎるほど速いし(時速30kmの速度制限は辛いけど)、軽くて取り回しは楽だし、原付ならと、親が任意保険料を払ってくれているしで、良いところがどんどん見えてきました。


 乗り出してからこれまでの2ヶ月、近場からちょっと遠くまで毎日のように走り回った今では、すっかりお気に入りのマシンになりました。


 この日は学校の仲間と近場の海までショートツーリングする予定で、待ち合わせ場所である大きな公園へ向かっている途中です。


 いつもは父親の言いつけを守って、バイクに乗るときはフルフェイスに長袖長ズボン、グローブという格好なのですが、あまりの暑さについに心が折れました。


 父親が早朝からツーリングに出かけているのをいいことに、「まあ長距離走るワケじゃないし」と、半キャップにTシャツ短パン、ノーグローブというスタイル。


 ギアチェンジがあるのでさすがにスニーカーを履いてはいましたが、いつもとは真逆の軽装に心まで軽く爽やかな気分。混雑気味の幹線道路の一番左側のスペースを、居並ぶクルマ達を尻目に、ペーン、ペペーンと2ストロークの排気音も軽やかに、上機嫌でバイクを走らせていたのです。


 さてその高校生の少し前方。同じく左側車線を、ミニバンに乗ったお父さんが、ホームセンターへ向かっていました。激しい猛暑でフル稼働だったせいか、突然エアコンがウンともスンとも言わなくなってしまったのです。


 とりあえず放っておいて扇風機で残りの夏をしのごうかとも考えたのですが、猛暑ファイナルラップに油断大敵と思い直し、買い換えることにしたのです。

 渋滞に飲み込まれながら、クルマのメーターを見ると、外気温は既に35度を超えています。カーエアコンはもちろん全開。


「やっぱりまだしばらくはエアコンが必要だなー」などと自分のナイス判断に納得した頃、絶妙なタイミングでホームセンターに到着。ウインカーを出しながら、駐車場へと入るために左折を開始し、歩道を横切ろうとした時、右側から自転車が近づいてくるのが目に入りました。


 その自転車に道を譲るため、普通にブレーキを踏み、歩道にクルマを半分乗り上げた状態で停止したのです。


 時間を少し遡って、高校生のNS-1。

 車列の左側をゆっくりと走りながら、「今日はみんなとどこ行こうかな-、やっぱ海かなー、一応海パンも持ってきたし」などと考えていると、前の方のクルマがホームセンターに入ろうとしているのが見えました。


 ホームセンターの駐車場へは、スムーズに入れそうでしたから、「どうせそのまま入るだろうから、まあ減速しなくても大丈夫だろう」と考えたその次の瞬間! あろうことかそのクルマが、こちらの行く手を完全にふさぐ形で停止したのです!


「減速しなくても大丈夫」と判断したばかりですから、ブレーキなんて間に合うはずもありません。レバーに手をかける暇もなく、クルマの横っ腹に追突してしまったのです。


 歩道と車列の間を抜ける形で走っていたので、速度はあまり出ていませんでしたが、顔面でクルマのサイドウインドウを割った後に跳ね返るように転倒。


 骨折こそしないで済んだものの、油断した軽装が仇となり、顔中にガラスの破片が突き刺さり、露出した腕や脚は大きな擦り傷や打撲を負ってしまいました。


 救急車で運ばれた病院で、ガラスの破片を傷口から一つずつピンセットで抜かれるという、痛い治療に半泣きになりながら、「いつもの格好で乗っていれば……」と、大後悔したことは言うまでもありません。


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