レースに興味がない人や知らない人に、こういう世界があって、
こういう連中がいて、こういう風に世の中に翻弄されて、
それでも自分たちの力でこういうことを勝ち取ってきたということを知ってほしい

―特にどんな人に読んでもらいたいというのはありますか?

「語弊あるかもしれませんが、極端な話、レースを好きな人はいいんですよ。すでに興味を持ってわかっていることだから。そうじゃなくて、レースに興味がない人や知らない人に、こういう世界があって、こういう連中がいて、こういう風に世の中に翻弄されて、それでも自分たちの力でこういうことを勝ち取ってきたということを知ってほしいというのがあります」

「もし、この本を面白いと思っていただけるのなら、僕の力がどうこうということじゃなく、チャンピオンを獲った青山博一であったり、自分の力で戻ってきた高橋裕紀であったり、恥も外聞もかなぐり捨ててやってきた青山周平であったり、彼らの行動、ものの考え方に理由があるんだろうと思います。全然つまんないとか、食い足りないとかあったら、彼らを記録した僕の力の拙さなのかなぁと思うんですけどね」


―読んでいるとレースを知らない人でもわかりやすく説明されています

「専門用語などは噛み砕いてある程度気を配ってありますが、説明し過ぎるとクドくなるし、でも説明しないとわからない。例えば高橋選手がシートを奪われた背景で、MotoGP独特のルールっていうのを説明していかないと、彼がどういうふうに追い詰められていったのか中々わからないと思う。そこを説明しようと思ったら、なんでこんなルールが出来たのかというのを2002年まで遡らなければいけなかった。そこが自分ではクドいかなぁと思ったんだけど、そこはどうしても避けることは出来なかったり、自分が読者だったらどうかな?って気にはなっているところです」

―いずれにせよ、本は読んでいただかないとわからないですね

「先ほど言いましたように、レースのことを知らない人、元々興味が無かった人に、ひとつのノンフィクションとして読んでいただきたいというのがあります。だから装丁も東本昌平さんにお願いしました。例えば普通に写真で青山選手が出てたら『これバイクレースの本か、オレ興味ないや』で終わっちゃうかもしれない。こういう風にイラストになると手に取りやすくなるんじゃないかなぁと思ったんです」

「日本ってライトなファンってあまりいないじゃないですか。マイナー競技であれば本当にコアなファンか、全く興味がないか。興味もっている人はだいたいわかっていると思うんですよね。ただ本書で書いているみたいに、高橋選手がシートを失うまで何があったのかという細かいディテールは知られていないと思うんです。ノンフィクションとして何を追及していくかということを考えると、彼ら4人の振り回された時代背景であったりとか、高橋選手の身に何が起こったのかをチームのスポークスマンに取材した時の話とか、自分で言うのも何ですが面白いんじゃないかと思います」

「できるだけ多くの人に読んでいただきたいと思っています」と語る 西村さん。インタビューは「最後の王者」についてのお話以外にも、世界GP転戦の苦労や各選手のことといった、いわゆる“ウラ話”など、とても興味深い話題でいっぱいだった。そんなネタは近々「MotoGPはいらんかね」でも明かされるかもしれない。お楽しみに。

西村 章さん
本サイトで連載中の「MotoGPはいらんかね」を普通のレースレポートだと思っている人がほとんどだと思うが、レースレポートはほとんどなし。どちらかと言えば「最後の王者」同様、レースに興味のない人が読んでみて「へーっ、MotoGPっておもしろそう」と思ってもらえるようにという趣旨でスタートした。そのあたりは西村さんの得意分野? で、今回のインタビューでも「ヘレス(スペイン)とムジェロ(イタリア)は、コースのレイアウトもおもしろいし、お客さんの雰囲気も独特でMotoGPで一番盛り上がるし、僕も好きなサーキット」とか「ホテルの値段が年々10ユーロくらい上がっていく」とか「アラゴンのような新しいサーキットの場合、初年度は普通の料金だけれど、次のシーズンは4倍くらいに値上がりしている」とか「いずれはインドでも開催されるかもしれないけれど、僕はあまり行きたくないな(笑)」とか「実はあのライダーが意外と神経質で、そうかと思えばこのライダーが結構大胆な行動をする」とか「○○○が×××で△△△したら□□□で〜」というような絶対に書けないような話まで、おもしろ逸話をたくさんしてくれた。もちろん、おもしろい話だけではなく、今回のように17人のライダー全員から応援メッセージを取ってくれるというような、熱いジャーナリスト魂ももちろん忘れてはいない。日本ではなかなか知ることの出来ないMotoGPの裏側の続きは「MotoGPはいらんかね」で。

最後の王者

最後の王者 

MotoGPライダー・
青山博一の軌跡

二輪ロードレース世界GPで、250ccクラスは61年もの長きに渡って争いが繰り広げられた。2009年、その最終シーズンにチャンピオンを飾ったのが、日本人選手の青山博一である。WEB Mr.Bike「MotoGPはいらんかね?」の連載でもお馴染みのジャーナリストが綴った本書は、シート喪失の危機、そして2年前に開発が終了した型落ちマシンで強豪に立ち向かった若きサムライの戦いの記録。第17回小学館ノンフィクション大賞 最優秀賞受賞作品。四六判、232ページ。1,600円+税。絶賛発売中。

問:小学館 TEL 03-5281-3555(販売)