SEROW250インプレッション


 セローは225から250になって、オンロードの適性がぐんと上がった。軽くて扱いやすく、乗車姿勢も楽ちん。 オンロードモデルよりハンドルも多く切れて、足つきもいい。だから林道などオフロードをまったく走らず、街中Onlyで使っている人は多い。


 山の中を走ることが大好きな人でも、いつも山の中という訳にはいかない。トランポで運ぶ人や、ものすごく自然に囲まれた「ど」がつくほどの田舎で、 移動する道が全部舗装されていないという人は別だけど、セローオーナーの多くの人が林道に辿り着くには信号のある街中や高速道路を通らなくてはいけない。


 225より排気量を26cc拡大したことにより、走りに余裕が生まれ、変速比も街中で違和感はない。音や振動も抑えられていて快適。 走りに関しては特に高速走行の安定性は良くなった。


 それでも、アスファルト舗装路から、土と石の林道へ入り込むと、セローはいっそう活き活きとしてくる。機械なのに活き活きというのもなんだけど、 そう感じるんだから仕方がない。


 特に、キャブレターからFIになった現行モデルは、回転上昇がスムーズで、フカフカの柔らかい路面、固くしまった路面、 石がゴロゴロした路面、どこでもスロットルを開けた分だけダートを蹴って前に進むことが出来る、 トラクション性能に磨きがかかった。


 225時代から受け継いだ、左右51度と大きく切れるハンドルとコンパクトな車体は、基本的に狭い場所が多い林道でのUターンや、 大きな落石、倒木などの障害物をかわしながら走るシーンで威力を発揮する。良好な足つき性は大いに助かる。 林道ではたまに(たびたびかな?)、難所が出てくる。荒れた急な登りであったり下りであったり、 草がぼうぼうで先の路面状況が見えないところ、障害物を避けるのではなく、乗り越えないと行けないところ。


 恥ずかしい話だけど、ボクが林道を初めて走った時、前を塞いだ大小様々な石を乗り越えようとして、 前輪を石に乗せたところで停止してしまって、足をつこうと足を伸ばしたが、バタバタと空気を蹴飛ばすだけで地面が遠く、 後は為す術もなく、重力にまかせガシャン! と乗ったまま横倒しになったことがある。


インプレ

 まあひと言でかたづけると「ヘタクソ」なんだが、それだけでは片付けられないシチュエーションもある。


 状況が見えて完全に把握出来るならば、スロットルを開け、ある程度速度を乗せてクリア出来るが、 林道ではいつもそう出来るとは限らない。


 見通しが悪く、先に崩落して穴があったり、先にイノシシがいたり、先にシカがいたり、先でカモシカがいたり、 先に山菜採りのオジサンが歩いていたりするかもしれない。


 だから、どうしてもゆっくり、たまには止まりながら進まなければならなくなる。そう言う場面で足がつくのは嬉しい。 実際に足をつかず、「いざとなったら足がつくもんね」という安心感だけでも難所を通るラインに自由度をもたらしてくれる。


 ダートを走るバイクは障害物や段差を乗り越えるために、サスペンションストロークが大きく、最低地上高も高い。 だからロードモデルよりどうしてもシート面が高くなってしまう。 セローはそういう必要な性能を保ちながら、足つき性を確保している。


 難所で足つき性と共に光るのが、エンジンの特性だ。極低速でもストンっと簡単にエンジンはストールせず、粘って、 そこからスロットルを開けていってもダイレクトに付いてくるレスポンスの良さがある。 ストンとなっても、セルが付いているからすぐに復帰だ。


 こういう性能は、不整地を走り慣れないビギナーにとって、ある程度整備の行き届いた普通の林道を走るだけの場合でも 頼りになるもの。


 225時代から、ビギナーからベテランまで幅広いファンが多くいる理由はこういうところにある。

 みんな、「セロー“で”いい」と乗っているのではなく、「セロー“が”いい」と乗っている。


 セロー誕生25周年を記念して、先日開催された「SEROW Natural Holiday」に新旧500台近いセローが 集まったという。乗る人のレベルと走る場所を選ばない守備範囲の狭い特性が多くのファンを獲得している に違いない。


 人にはいろいろな嗜好があって、中にはマゾヒスティックに難所を好んで走りたがる、 ヘンタ────いや、チャレンジャーもいる。そんな人達のセロー乗車率が高いのは偶然ではない。


 アタリが柔らかくしなやかな足廻りは、凸凹路面での収束性は良く、 自分の思った進路を進める。林道を走るには充分な性能だ。


 モトクロッサーやエンデューロレーサーのように凸凹路面を高速で走って、 何事もないようなことはないが、誰もセローにその性能を求めないだろう。


 林道は狭く、先が見えないコーナーが多い。道幅いっぱいに対向車が来るときもあるから、スロットルを全開にして走るような乗り方は向かない。自然を感じながら、トコトコと徘徊するように走るのがいい。そこにセロー250はぴったりとハマる。


(濱矢文夫)



アッキー

  まともにセローで林道を走るのはこれで2回目だけど、やっぱその良さを一言でいうと『トータルバランス』。

 特に足つき性の良さは林道などでかなり助かるし、ねばりのあるエンジンは上り坂などで 「ちょっとギアが高めかな」と思えるシチュエーションでもアクセルを開けると、ノッキングもエンストもせずにトコトコと駆け上がっていく。

 またワインディングでは妙なクセがなく、ヒラリヒラリと左右にバンクしてくれるので、思った通りのライン取りが可能。 特に突出した部分はないかもしれないけど、この総合的なバランスはオフ系の中でもトップクラスといえるはずだ。
(アッキー加藤)


 

SEROW特集トップページへ