裏庭の徒然草


 昨年:2010年の8月、現在のように自転車の法規違反走行が、社会的にまったく取り上げられていなかった時に、このページ(裏庭の徒然草)で以下のタイトルの記事が掲載された。

必罰・原付、野放し・自転車の「取り締まられ」差から、この国のいいかげんなコミューター観が見える

 つまり、自転車でも飲酒運転/夜間・前照灯及び尾灯(または反射器材)不装備/一時停止標識違反、徐行違反/原則、車道走行/二人乗り/並進/信号無視などの通行違反には罰金や罰則が道路交通法で科せられている。さらに多くの自治体が、運転中の携帯電話使用/傘を自転車に固定…などなども禁じたりしている。しかし、(当時)それが取り締まられているのを見た方はいるだろうか。理不尽な規定を押し付けられている原付は異常なほど厳格に取り締まられ、一方で無法し放題の自転車は野放し。おかしいのではないか――。

 という内容だった。いや、1年も前に先取りした先見の明を自慢しているのではない。単に自画自賛している。

 さらに、当時どれくらいの原付と自転車の取り締まりが行われていたか、独自に統計も入手して掲載していた。それによれば――


●原付1種(小型特殊含む)道交法違反取り締まり件数:77万7249件(2008年・交通事故統計年報/警察庁)

●原付1種保有台数:約770万台(2009年4月1日現在/総務省)

●自転車交通違反取り締まり検挙件数:1326件(2009年/警察庁)

●自転車保有台数:約2609万9千台(2008年/自転車協会)


 自転車の取り締まり件数の単位が違っているのではない。1年で、全国で1326件。これでは自転車がキップを切られている現場に通常、遭遇するワケがない。念のため付け加えておくと、自転車は指導警告件数というのも出されていて、これは216万5759件(2008年/警察庁)。自転車にはバイクやクルマのような反則金制度(通称、青キップ)がなく、いきなり罰金刑(通称、赤キップ)=前科、ということで、指導警告に留めている? という“酌量”もあるのか。

 ちなみに取り締まられ件数率は原付1種が約10台に1台、一方自転車は約5万2千台に1台。指導警告も約32台に1台だ。 (以上、2010年8月の『裏庭の徒然草』より抜粋)


――(と、1年前は)こうだったのだ!

 それから1年強が経過した。今や警察がいきなり開始した「自転車は原則で車道走行です運動」(?)に各メディアも、いわゆる「無法自転車が歩道/道路跋扈」をクローズアップして断罪しているのはご存知のとおりだ。

 そんな時、読売新聞が11月21日付けの朝刊3面(総合面)で『「自転車は車道」迷走 歩道の暴走ダメ 伝わらず 周知足りず混乱』という見出しの記事を3面トップで、しかも社会部・高橋雄介 大沢帝治(敬称略)という署名入り記事で大きく取り上げた。


 ま、その内容は各メディアが伝えている内容と大差なく、それを「周知不足で迷走」という見出しの方向に導く内容だ。

 しかし待て! 驚いたのは、その本記事に付随していた『石井・警察庁交通局長に聞く 「徐行なら歩道構わない」』というインタビューの、いわゆるカコミ記事での発言だ。その部分だけ抜粋した、言葉尻だけを取られたと言われるのは心外なので、記者の質問部分から始めて、それに対する局長の発言を載せる。それは――

※以下、11月21日付け 読売新聞記事から


「高齢者や子供を乗せた保護者、前かごに荷物を積んだ人などは歩道で良い。ただ、いずれも徐行が原則で、スピードを楽しむ人は車道に降りてもらう」

 以上が私を驚かせた発言だ。

 公道でスピードを楽しむ人の存在を容認して、それを前提にした発言。「公道でスピードを楽しんで良い」という、これは警察庁幹部として前代未聞の発言ではないだろうか。

 そんな疑問を感じて一国民として警察庁の代表番号に電話した。内容を話すと即「広報室につなげます」と言われた。広報室の人(女性)が出たので、警察庁の石井交通局長が新聞取材で自転車は車道:公道で「スピードを楽しんで良い」発言をしているが、それで良いということなのか。また、それならスピードという点で自転車の最高速度は規定されているのか、それは何km/hで、それまでスピードを出して「楽しんで」いいということなのか。

「その記事を読んでいませんので答えられません。最高速度については各都道府県警察に聞いてください」。広報室スタッフが、大新聞に載ったこれだけ大きい警察庁関係の記事を「読んでいない」? それは広報として不勉強だろう。「担当部署ではないので…」。ならば他のしかるべき部署につなぐか、あるいは聞いていただきたい。「それはできません」「都道府県警察に聞いてください」

――以降、このふたつの返答を何回も繰り返すのみ。あなたは公務員ですよね? 国民のために働く、税金で給料が出ている…? しかも各警察を束ねるのが仕事の警察庁という行政機関のスタッフなのでは? 広報スタッフは録音された同じ言葉を繰り返す“アンサーフォン”となってしまった。ものすごく利発な新アシモを知っているから「まるでロボットみたい」という表現は、アシモに悪くてこの“藁人形”スタッフには使えない。でも自分がギリギリ払っている税金が、納税者に木で鼻をくくったような態度で対応しているとしか感じ取れない、この警察庁広報室スタッフ:公務員に使われていると思うと、もったいないとマジで思った。


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