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ホンダ

トルクフルなエンジンとイケメンなシャーシ。

 タイ生産で先行して発売されていたCBR250Rのユニットをベースにしたエンジンを、スティール製チューブフレームに搭載したCRF。そのデザインはMXレーサーのCRFを思わせる。「L」はモトクロッサー、CRFをよりダイレクトに反映したグラフィックを持ち、「M」はそのストリートモタードらしいクールなファッション性を持たせた一台になっている。

 まずCRF250Lの全長×全幅×全高を紹介しよう。2195×815×1195(mm)、ホイールベースは1445mm。前後のタイヤは前21インチ、後18インチ。サスペンションストロークは、前250mm、後240mm、最低地上高は255 mmだ。これによりシート高は875mmとなっている。重量は143キロである。

 続いてCRF250Mの3サイズは、2125×815×1150(mm)、ホイールベースは1445mm、前後タイヤは17インチ、最低地上高は225mmと30mm低く、シート高は855mmとなっている。重量は145キロ。

 搭載されるエンジンはともにボア×ストローク76.0×55.0mmのショートストローク型。圧縮比は10.7:1で、出力は17kW(23ps)/8500rpm、最大トルクは22Nm(2.2kg-f/m)/7000rpmとなっている。

 メーターはデジタル表示のシンプルなもの。外観はCRFらしさを主張しつつ、モトクロッサーのようにアグレッシブさ一辺倒ではなく、灯具のレンズ面が湾曲し個性を引き出すヘッドライトなど、ストリート用CRFとして上手くデザインされている。実際、このライトはXR-BAJAの2灯ライトを上回る照射面積を持ち、明るさ感はこちらが上回るという。これは市街地からツーリングまで嬉しいばかりか、被視認性の点からも歓迎すべきものだ。

CRF250L。ライダーの身長は183cm。
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舗装路だってダートだって相当楽しめるCRF250L。
250Mはさらにその上を行く仕上がり。

 まずは250Lに跨ってみる。そのスペックから想像したとおり、ややシート高を感じるタイプだ。そのシートは跨る部分の幅がしっかりとられているため、長い時間乗っていても尻がすぐ痛むこともなく思った以上に快適。各部のコントロール類は価格なりの質感ではあるが、何処にも不満はない。エンジンの始動性は良く、その音は意外とスポーティーだ。ローにいれてクラッチを繋ぐとスムーズでトルクフルな印象が伝わってくる。エンジンをあえて回さなくてもしっかりと走ってくれる。

 サスペンションは85キロの僕が乗っても、リアがガクンと沈むようなこともない。乗り心地はすこぶるよく、パターンノイズの少ないタイヤもあいまって、舗装路の走りは快適だ。

 郊外のワインディングに入ると、CRFは「キミはそれでもオフ車か!」と問い詰めたくなるほど良く走る。しかもオフ車的ヒラヒラ感ではなく、まるでロードバイクのように自然でフロントタイヤが行きたい方向に向いてくれる感じで、意志に忠実だ。そのハンドリングの良さはヘアピンのような低速コーナーからS字の切り返し、比較的ペースの速いワイドターンでも同様に楽しめた。

 前φ256mmのウエーブディスクを備えるフロントブレーキも減速の立ち上がりと倒立フォークの動き出しがよくチューニングされていて扱いやすい。車体の構成もフロント周りにしっかりと荷重が乗るように設計されているのが伝わってくる。

 ツーリングペースでの走りのフィーリングはとてもよい。エンジンは高回転まで引っ張るとちょっとノイジーだが、加速の連続性やトルクの出方など4ストロークらしい予測どおりのもので、開けていて楽しいしバイクを操る感がたっぷりあるのが嬉しい。

 CRF250Mに乗り換える。ポジションは250L同様だが、シートの高さ感は僅かにコチラのほうが低い印象だ。これもスペック通り。エンジンのフィーリングは同じものの、リアサスがよりがっちりした印象で、よりロードバイク的なハンドリング特性になる。といっても基本はオフ系モデルだ。バイク全体を寝かし、リーンアウト気味にアクセルを開けて曲がって行く走りもバッチリ決まる。オフ車的なのだが、ロードバイクとしても安心感のあるグリップと接地感が持ち味だ。

 フロントブレーキはディスクプレートがφ296mmとLよりも拡大されている。そのため軽いタッチでカチっとした減速を引き出す事が出来る。その時、フロントがグンと沈むLとは違い、もう少し減衰のしっかり効いた感じでフロントフォークが動き出す。しっかりと独自のセットアップがされているのがわかる。

 ちょっとアグレッシブにグッと寝かしこんでみる。深いバンク角でバランスされて、なんだか決まるのがモタードバイクらしい。こうした走りを楽しめるのと同時に、コミューター的に市街地を走ってもどこにもトゲがない走りを見せてくれる。扱いやすいのだ。それでいて攻め込んだ走りをした時、シャーシが余裕を持って受け止めている印象で怖さがない。これはいい。

 また取り回しの良さも特徴で、21インチフロントのLにも増してタイトターンやUターンが楽に決まる。このカテゴリーの250としては軽量級ではないが、軽快さの中にもしっとりとした動きがある。サスペンションの動きはよく、街中にあるサイズのギャップならどれも吸収性がよく、乗り越えてくれた。とにかく自在感が印象的だった。モタードバイクの命はそのスタイルとこうした走りだ、と思っている僕にとって、ともに満足させてくれるものだった。

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2011年の東京モーターショーで国内デビューを果たして以来、多くのホンダ・オフ車ファンの注目を集めてきたCRF250L。2012年5月に発売されるや、一気に販売ベスト10(出荷ベース)に入るほどの人気車種の仲間入り。XR以来途絶えていたホンダの本格的なオフ車スタイルスポーツモデルの登場を待ち望んでいたユーザーの数の多さに改めて驚かされたものだ。2014年の8月実績で12位を記録するまで、常に軽二輪クラスのベスト10圏内に入っていたことでも人気の高さが分かる。発売にあたって、より強調されたのが「オン・オフ」のコンセプト。本格的なオフロード・マシンではない、というのは東京モーターショーでも説明されていたとおりだが、「オン・オフ」といっても、最近のトレンドの「オン・オフ」マシンともちょっと違う。それは、日常使いの「On」と、週末の楽しみとしての「Off」、という意味での“オン・オフ”が開発のキーワードとなっている。
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■HONDA CRF250L(JBK-MD38)主要諸元

●全長×全高×全幅:2,190×815×1,195mm、ホイールベース:1,445mm、最低地上高:255mm、シート高:875mm、車両重量:143kg、燃料タンク容量:7.7リットル●エンジン種類:MD38E、水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:76.0×55.0mm、圧縮比:10.7、最高出力:17kW(23PS)/8,500rpm、最大トルク:22N・m(2.2kgf-m)/7,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火、始動方式:セルフ式、潤滑方式:圧送飛沫併用式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:27°35′、トレール:113mm●サスペンション:前・テレスコピック(倒立タイプ)、後・スイングアーム(プロリンク)●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・3.00-21 51P、後・120/80-18M/C 62P。


250Lでダートに入ってみる。

 CRF250Lのテリトリー、林道にも入ってみた。ここでも扱いやすいエンジンと乗りやすさが光る。トルクの厚みは十分。ただ林道で走ると、1速と2速のギアレシオが少し離れているのが気に掛かる。林道に多い登り左タイトターンや見通しの悪いカーブなどで速度が落ちたとき、エンジンの美味しい回転域から少し外れてしまう。2速で心地よい回転域を保とうと思うと、ちょっと走りがアグレッシブになりすぎる。実は1速の伸びが良いので、こうした場面で迷わず1速を使えばそうした印象を払拭できるが、この辺は、ロードでは全く気にならなかった部分だ。オフロードライダーにはダートに入ると1速をあまり使わない習性を持つ人もいるから、CRF用にセカンドギアを作ってもらいたい、と思うのは僕だけではないはず。前輪荷重を抜くのにアクセルを開けた瞬間など「あとちょっとギア比が低ければ」と思うこともあった。

 そうしたクセを掴めば、このバイクを気持ち良く走らせるのは難しくない。舗装路同様、前後のタイヤの接地性とグリップをしっかりと感じとることができる車体は怖さが無い。サスペンションもバネ下が良く動き、全体に固さがない。スプリングがソフトではないと思うが見事な設定だ。ブレーキの扱いやすさも手伝って速度、加速、ハンドリングを操作している感じがとても楽しい。

 オフロードバイクらしいアクションを楽しむにはそれなりのスキルも必要だが、基本的に乗り易さがあるため、いろいろな事にチャレンジしてみたくなる。もっと本格的にダートで遊ぶ、ということなら、リアスプロケットなどで二次減速比をショートに振ってみたりしても面白いかもしれない。


なんでもこい、な万能選手。それがストリート用CRF。

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 250Lと250M。2台のストリート用CRFに乗ってあらためてその万能性に高い満足感があった。オフロードを始めた頃、ハンドルバーやグリップラバーやナックルガード、ミラー、タイヤ、フェンダーを社外品に交換したり灯火類を小型の物にしてみたり、いろいろなカスタムを楽しんだ。そして何処へでも250のバイクで出かけたし、それが楽しかった。街から高速道路を走り、郊外の道を抜け、山の麓から林道へ。その先で見る尾根の連なりや綺麗な緑はツーリングを冒険旅行に変えてくれた。いつもそんな意外な気分が楽しくてどんどん山道に出かけていた時期がある。

 そんな使い勝手を含めCRFが持っている万能性はそうした“また別の世界”に行くトランスポーターであることを今日たっぷりと確認できた。あの頃のように日帰りエリアにある里山からの道に迷い込みたい気分になった。CRFはLもMもそんな周波数を持っているバイクだった。

(松井 勉)

CRF250M。ライダーの身長は183cm。
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CRF250Lの兄弟車種として2013年4月に登場したCRF250M。XR250Rに対してのXR250Motardのように、CRF250Motardといえるモデルで、CRF250Lをベースに前後17インチオンロードタイヤを採用、ストリート仕様に発展させた“スーパーモタード”イメージのモデルだ。ホイール以外でも、フロントにはφ296mmの大径ブレーキディスクを採用(CRF250Lはφ256mm)、そして前後サスのセッティングも変更された。また細かいところでは二次減速比をCRF250Lの2.857から2.785へと変更、キャスターも27°35′から25°45′に、トレールも113mmから71mmへと変更。これらの変更によりディメンジョンも全長は2,195mmから2,125mm、全高が1,195mmから1,150mmへ、シート高も875mmから855mmへと下がっている。車重は143kgから145kgと若干の増加となった。
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■HONDA CRF250M(JBK-MD38)主要諸元

●全長×全高×全幅:2,125×815×1,150mm、ホイールベース:1,445mm、最低地上高:225mm、シート高:855mm、車両重量:145kg、燃料タンク容量:7.7リットル●エンジン種類:MD38E、水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:76.0×55.0mm、圧縮比:10.7、最高出力:17W(23PS)/8,500rpm、最大トルク:22N・m(2.2kgf-m)/7,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:トランジスタ式バッテリー点火、始動方式:セルフ式、潤滑方式:圧送飛沫併用式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:25°45′、トレール:71mm●サスペンション:前・テレスコピック(倒立タイプ)、後・スイングアーム(プロリンク)●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・110/70-17M/C 54S、後・130/70-17M/C 62S。


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