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 2009年11月から2014年11月までの5年間、計12回の開催となった「伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦」。その軌跡を振り返ってみようと思う。

第1回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 関係者の間では、期待と不安が入り混じった第1弾。静岡県東部地区の二輪車安全運転推進クラブや古くからレース活動で知られる地元の有名バイクショップ・ワールドカワグチ、県警本部交通機動隊などの協力を得て開催。伊豆スカイラインの起点である熱海峠ICから会場であるスカイポート亀石駐車場までをパレード走行した。スカイポート亀石では、宮城光氏とワールドカワグチの川口代表、KAZU中西が事故防止についての講話をした。

第2回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 翌月に開催された第2弾は、スカイポート亀石での講話がメイン。協力体制は第1弾と同様、前回の参加者は地元のバイク乗りが多かったが、この回では県外から伊豆スカイラインへ走りに来るライダーの参加もあった。宮城光氏、KAZU中西の講話ではイベント用マイクスピーカーに代えてパトカーの拡声器を使用するなど、この作戦にかける警察の本気度が垣間見えた。「スピードを出すだけならアクセルを捻れば誰でも出せる。しかし止まれるかどうかはその人次第。バレンティーノ・ロッシなら止まれる速度でも、私たちには止まれないのです」そんなコメントが印象的だった。

第3回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 明けて2010年、路面凍結が懸念される冬期を避ける形で3月に第3弾を開催。当日の天気予報が悪く、実際に台風並みの低気圧の接近により悪天候となってしまったが、参加者の熱意に押されて小雨決行。熱海峠ICからスカイポート亀石駐車場まで、先導する白バイの走行ラインをトレースする形で走り方を学んだ。第1弾より続けられていた大仁警察署員が実演するエアバッグベスト着用での転倒実験は、残念ながらこの回が最後となった。

第4回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 夏の本格ツーリングシーズンに備える形で7月開催となった第4弾。二輪専門誌はもちろん、テレビ静岡の密着取材も入るなど、マスコミの注目度が高かった回と言える。「あんた一人の道じゃないんだよ! と僕は言いたいですね。たまたま対向車線に出てしまったこともあるでしょう。それは結果論ですよ。でも、そうならない様にいくらでも気を付けることができたと僕は思いますね。このままでは、みなさんとこうして会える伊豆スカイラインへオートバイで来られなくなってしまう」そんな宮城光氏の講話が印象的だった。なお、この回よりヤマハテクニカルセンターが、速度の違いによるコーナリングの実演とエアバッグ実演を担当することになった。

第5回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 第4弾で行なわれた参加者へのアンケート調査を元に開催されることになった第5弾。ライダー側からの意見として、運転技量の未熟さが事故につながっているのでは? というコメントが多かったことから、日本サイクルスポーツセンターの3kmコースを借り切り、実技講習を実施した。内容は低速バランスなどの基本走行の練習、伊豆スカイラインにて起った事故事案を参考にコースプロデュースされた想定講習=シミュレーション走行の2本立て。講師陣は、県警本部交通機動隊東部支隊の白バイ隊員とヤマハテクニカルセンターのインストラクター、宮城光氏、KAZU中西が担当した。アップダウンあり、ブラインドコーナー多数の3kmコースを活用、道路脇のしげみに鹿のはく製を置いて動物の飛び出しについて注意しているか? など、危険予測運転意識も検証された。

第6回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 2011年4月に開催された第6弾。スカイポート亀石駐車場にて、安全運転講話を中心とした作戦が実施された。講話者は宮城光氏、RKジャパンの市川仁氏、福山理子さん、KAZU中西が担当。それぞれの得意分野を活かした事故防止についてのワンポイントが語られた。ヤマハテクニカルセンターによるコーナリング実演では、わずか10km/hの速度差でも曲がれる・曲がれない、を分けてしまうカーブがあることなどを見せた。

第7回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 夏真っ盛り、強い日差しの下で開催された第7弾では、これまでの講話陣に加え、横浜で若者に安全運転の重要性を説いているバイクショップ・NTキングの中村代表をゲストに招き、「自己責任は自己責任に非ず」というテーマで講話いただいた。
 
「単独であっても事故を起こせば家族や仲間が悲しみ、勤めている会社や事故処理をしてくれる警察や救急隊の方々、通行人に迷惑を掛ける、自己責任なんて簡単に口にできないし、とれるものではない」そんなコメントが印象的だった。またこの回では、いわゆる峠ライダーに加え、地元の道の危機を放っておけないと、総勢50数名となる旧車會も参加。「俺達、音はウルサイかもしれないけれど安全運転している。転んだら元も子もないから」などと語っていた。
 
 ライディング講話では「1台目は追い越せた、2台目も行けた。しかし3台目の時は場所が移動しているし、時間経過によって対向車も来るなど、追い越しが出来ない事もある。前が行ったからと言って、無理に追従していかない事」とKAZU中西が力説。「今時は携帯電話等で連絡も取り合えるわけだから、はぐれる心配もない。無理に他人のペースに合せて走らなくてもよいと思います」と宮城光氏が総括した。

第8回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 伊豆スカイラインでは年間を通じて最も事故率が高まる10月に開催された第8弾。おそらく歴史上初となる伊豆スカイライン本線でのライディング講習が実施された。講師陣は県警本部交通機動隊東部支隊の白バイ隊員が担当。安全走行ラインの先導役は、宮城光氏、市川仁氏、元GP125ライダーの福島弥氏、KAZU中西が担当。不測の事態に備え、県警本部のヘリテレも飛んだ。
 
 参加者は安全な走行ラインをトレースしながら伊豆スカイラインの危険ポイントを巡り、その現場にて事故を起こさないためのワンポイントレクチャーを受けた。なお、この模様は2輪専門誌や地元新聞はもちろん、テレビ静岡のニュース特番でも紹介された。

第9回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 実技講習としては2度目となる第9弾。日本サイクルスポーツセンターの3kmコースを活用し、突発的な危険回避術と前方視野の安全確認について学んだ。コースプロデュースは伊豆スカ事故ゼロ小隊が担当、過去に伊豆スカイラインで起こった事故事案を参考に、カーブ区間の入り口や出口付近に文字板を掲示、キチンと読んで確認できているか? などの検証も行なった。運転講習の講師陣は県警本部交通機動隊東部支隊が担当、事前に伝えておいた速度上限を大幅に超えて走行した者は、実際の公道と同様に追走され、指導を受けるというルールで行なわれた。

第10回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 2013年4月に開催された第10弾。これまでは年2~3回のペースで開催されてきたわけだが、伊豆スカイライン開通50周年記念イベントや静岡県二輪車安全運転の集い(結果的には台風直撃で中止)など、さまざまなイベントが催される年であったため、事故ゼロ作戦としてはこの1回のみとなった。
 
 会場はスカイポート亀石駐車場。宮城光氏、福山理子さん、福島弥氏、KAZU中西よる安全運転講話をメインに、ヤマハテクニカルセンター・藤原儀彦指導員(元ヤマハファクトリーライダー。全日本ロードレース選手権3年連続チャンピオン)による、コーナリング実演などが目玉となった。新たな試みとしてライダー目線のヒヤリハットマップも製作。これまで伊豆スカイラインを走ってきた経験からマップに書き込まれた危険ポイントは、今後多くのライダーの参考となるだろう。

第11回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 2012年までは減少傾向にあった二輪車事故だが、2013年は結果的に大幅増。この増加推移に何とか歯止めを掛けたいと開催されたの2014年4月に実施された第11弾である。安全運転講話のテーマは「何故事故るまで走るのか?」であり、宮城光氏、福山理子さん、福島弥氏、KAZU中西が、それぞれの経験や体験から危険運転者の傾向や事故を起こさない・事故に遭わないための心構えを講話。
 
 また、交通機動隊の白バイ隊員から大仁警察署の交通課長に就任した齋藤氏より「私が事故を起こせば仲間に恥をかかせることになる。事故を起こさないよう心構えをして走っています」など、自身もプライベートではニンジャ乗りであるエピソードも交えての印象的な体験談が語られた。

第12回「伊豆スカイライン ライダー事故ゼロ作戦」

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 2013年よりハイペースで二輪車事故が増加した2014年。速度の取締りなどの強化策も実施されたが、それをあざ笑うかのように攻撃的な走行、違法行為を繰り返すライダーの増加もあり、2008年当時の様相と似た状況になってしまっていた11月、伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦、5年の節目となる第12弾が開催された。
 
 この回では過去に死亡事故を含む重大事故が起こった現場を実際に巡り、ライダー目線で検証する「現場診断」を実施。先導役は福島弥氏とKAZU中西が担当。2班に分かれて現場までのキープレフト走行も体験した。また事故の加害者・当事者の手記をもとに制作されたビデオ映像を観ながら、問題点について語り合う『福山理子の安全運転教室』も実施。他人事ではない、いつ自身が経験するかもしれない悲惨な事故事案に、涙する参加者も少なくなかった。「運転が上手い下手は二の次、事故を起こさないんだ!というマインドを持って走る、他人に迷惑を掛けないように走る、という心構えが無ければ、事故は一向に減らない」とKAZU中西が総括した。

 過去5年、12回の事故ゼロ作戦を通して、ライダーの意識は大きく変化したように思える。しかしながら結果を見れば、第1弾の開催より徐々に減少した2輪車の重大事故件数は2012年末を境に増加へ転じ、2014年では作戦開始前の2008年当時に迫る20件超となっている。
 
 数字だけ見れば一時的に効果のあった事故ゼロ作戦だが、2013年および2014年はあえて他人を巻き込む危険走行で楽しんでいる40代~50代中心のローリング族の発生という背景もあり、その特異事案を除けば伊豆スカイラインを利用するライダーの全体像としては、大幅にマナーアップしたという実感はある。
 
 言い換えれば、ごく一部の暴走危険運転集団が伊豆スカイラインを二輪車通行禁止の危機に陥れているのであり、しばらくの間は取締りの強化とそれら暴走族の一斉摘発、そしてこのほど開始されたIZUセーフティドライブキャンペーンの効果に期待するしかないだろう。
 
(KAZU中西)


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