YAMAHA TMAX530 ATスポーツコミューターで“バビュ~ン”と快速・快適ロング・ツーリング!

「シーカヤック乗りに来ない?」という誘いに、毎年7月に早めの夏休みをいただいて行なっているロング・ツーリングの目的地は広島の江田島に決まった。で、バイクは? 出来れば“真夏”というシーズンを快適に走りたい。となると、エンジンがカバーされてライダーが熱の影響を受けにくいモデル、となる。そこで、2015年のマイナーチェンジで気になっていたTMAX530をお借りすることになった。全行程2000km近くに及んだTMAXとの旅の模様をご報告。

●報告・写真:高橋二朗 
●撮影:依田 麗・宮門秀行
●協力
ヤマハ発動機 http://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
アルパインスターズ・セールスルーム http://www.alpinestars.com/

心地良いエグゾーストと胸のすく加速、そして振動の少なさに驚嘆!

 2000年代初頭、主に欧州をターゲットに「オートマチックスポーツコミューター」として誕生したTMAXは、モデルチェンジや改良を重ねて年々進化。当初500ccだった排気量は2012年に530ccにアップされて4代目にフルモデルチェンジ。翌2013年より日本仕様がリリースされ、最新モデルはLEDヘッドライトやスマートキーシステム、倒立フロントフォークなどを新たに採用し2015年1月より発売されている。

 TMAX530(輸出仕様)はクローズドコースでの試乗会で乗った経験があり、独特の操縦感覚や高質なエンジン、そして圧倒的パフォーマンスに感銘を受けたことがあったが、公道で乗るのは実は今回が初めて。スタンドをおろし、実車に跨ってみて、まず最初に思ったのは「選択をミスったか?」だった。まず、身長173cmの私にとって、足つきは両足のつま先。加えて、重量222kgの車体の取り回しに不安を感じた。果たして立ちゴケしないかと……。

 が、ちょっと走っただけで、身体の一部とは言わないまでもかなり慣れることができた。でも、旅の出発当日の朝は生憎の雨。まだまだ慎重に走る。最終目的地は広島だが、この日は宿泊地・岐阜の大垣を目指す。多くのライダーの方が思っているように、二輪車の軽自動車と同じ高速道路通行料に不公平を感じる私は、可能な限り一般道を走った。幸い、東京から西に向かう時は国道1号線のバイパスのおかげでスムーズに走ることができる。


TMAX530

TMAX530

TMAX530

TMAX530

TMAX530

TMAX530
LEDヘッドライトが新採用となった2015年モデルのTMAX530はフロントカウルの他、ミラー&ミラーステー、フロントフェンダーのデザインも変更。ボディカラーはホワイト、マットグレー、「IRON MAX」(アイアン マックス)にはダークグレーが設定される。いわゆる“スクーター”と言われるモデルに対し、低めに設定されたハンドルによりTMAX独自のライディングポジションとなる。ライダーの身長は173cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 国道246号線から沼津近辺で国道1号に合流。途中、雨は弱くはなるものの止むことはなく、湿気でムレムレしたレインウェアを脱ぐことはできない。フロントのウインドスクリーンのおかげで、ネイキッドバイクなどと比べると大きな恩恵を受けていることが、ヘルメットに付いた水滴の流れ方で理解できた。

 1日目の最大の目的はリニューアル・オープンしたばかりのヤマハ・コミュニケーションプラザ(CP)の見学だ。ここはTMAX530の生まれ故郷でもある。雨はほぼ止んだが、空は厚い雲に覆われ、またいつ雨が降り出すかわからない状況にある。

 館内を一通り見学し、カフェスペースで一息ついたら再び西に向かってGO。その頃には太陽も見え始め一安心。愛知県に入った頃にはもう雨の心配はなくなったが、当然のことながら気温は上昇。名古屋市街地では信号待ちごとに電動ファンが回る、と言えばその暑さをご理解いただけるでしょうか? 気温が高いから暑いのは当然だが、停車中は足もとがアッチッチとなることはなく、改めてフルカバード・バイクの夏場での有り難さを痛感する。また、さすがにこの頃になるとTMAXとの一体感が生まれ、取り回しに関する不安は完全に解消されていた。

※写真をクリックすると大きなサイズになったり、違う写真がみられるものもあります。


ヤマハ発動機の本社

コミュニケーションプラザ
静岡県磐田市にあるヤマハ発動機の本社へ。7月21日にリニューアルオープンとなった企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」(http://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/cp/)に立寄った。1階のシンボルゾーンにはTMAX530(輸出モデル)がヤマハ初のスクーター「SC-1」(1960年)と共に展示されている。

1日目の朝

由比の立ち喰いそば

あんかけスパゲッティ

大垣に到着
1日目の朝、天気は雨。ちょっと出発時間が遅れてしまった(6時)ため、環状8号線(都道311号線)はすでに交通量は多い。 国道1号線・由比の立ち喰いそばチェーン店にて朝食。名物・桜えびの天ぷらではなく、シラスのから揚げがのった炊き込みご飯、かけそばのセット。 ちょっと遅めの昼食。名古屋、ということで「あんかけスパゲッティ」を食べた。聞くところによると好みが別れるようだが、あのビミョーな味が私は好み。 21時頃に1日目のゴール、岐阜・大垣に到着。この日の走行距離は431.5km。全て一般道だったが、まだまだ走る余裕アリ。

 2日目は朝から晴れ。関ヶ原経由で関西エリアに入り、京都あたりから神戸の間は時間短縮のため高速道路を使う予定。ただ、途中で記念撮影とかしているウチにあっという間に時間が経過していることに気づき、このままでは目的地である広島市内に着かない! ということで滋賀県の竜王ICから遂に名神高速道路へ。ハイウェイに乗ったらTMAX本領発揮といったところ。速度が上がっても安定感あり、エンジン回転が上がっても振動の少なさ、スムーズさに驚く。530の排気量によって、スロットルを捻ると同時に心地良いエグゾーストと共に胸のすく加速が始まり、巡航速度まであっという間に到達。250ccのマジェスティには独自の変速システム(YCC-AT)が搭載され、マニュアル感覚のライディングを楽しむことができるが、TMAX530はその余裕あるトルクのおかげでスロットル操作だけでも十分スポーティな走りを楽しむことができる。追い越し加速も余裕でこなし、特にマニュアル・モードは無くてもいいかな、と感じた。スポーツライディングの基本でもあるスロットル操作に集中せよ、ということなのかも。

 とにかく、山陽道に合流してからは美しいサンセットの景色を楽しみながら、広島までのライディングを楽しむことができた。猛暑の中をかっ飛んで来た疲れも忘れ、広島で無事再会を果たした知人とは明け方近くまで語り合う。


大垣を出発

滋賀県豊郷町
2日目、大垣を出発し、まずは米原を目指す。関が原近辺で記念撮影。ヤマハと言えば「21」、中須賀選手をはじめYAMAHA FACTORY RACING TEAMの皆さん、鈴鹿8耐優勝おめでとうございます! 米原から国道8号線へ。起点の新潟市から530kmの地点と思われる滋賀県豊郷町にて記念撮影。対面通行で交通量も多く、気温も高く、ペースが上がらないので竜王から名神高速にのる。

鉄道総合技術研究所

ヤマハ・ブラザーズ

吉備SA

広島市内に到着
米原近辺にて、見慣れぬ鉄道車両発見。後で調べたら、鉄道総合技術研究所 風洞技術センターだった。隣はヤンマーの研究所。 中国自動車道・西宮名塩SAでバイク仲間、SR400に乗る宮門さんと合流。山本小鉄&星野勘太郎に敬意を表し、1日限定「ヤマハ・ブラザーズ」を結成。 山陽自動車道・吉備SAで小休止。PA&SAで幅広い層から人気の定番商品・ソフトクリームでさっぱり。岡山だけに桃風味をチョイス。 21時頃、広島市内に到着。今回のシーカヤック乗りの主催者、広島在住のバイク仲間・植月さんからお好み焼き接待を受けた。

素晴らしい仲間とTMAX、最高の夏の思い出をありがとう

 3日目は最終目的であるシーカヤック体験。瀬戸内海の江田島を目指す。広島市内からはフェリーに乗るのが最短ルートだが、時間が上手く合わず陸路、呉経由で向かった。1日目のヤマハCP出発以降、天気は良好。昼からは強い日差しに照らされ続けた。途中、ドラマ版「坂の上の雲」のロケ地にもなっている旧海軍兵学校、現在は幹部候補の養成を行なっている海上自衛隊・第1術科学校を見学。壮大な歴史的建築物や、生々しく胸にずっしりと圧し掛かる各種展示物に、終戦70年について考えさせられる。


港町・呉へ

港町・呉へ
3日目、広島高速~広島呉道路を通って港町・呉へ。「アレイからすこじま公園」からは海上自衛隊の潜水艦が見えた。もしかしたらホンモノの潜水艦を見るのは生まれて初めてかも。

宇品エリア

赤レンガで造られた倉庫

海上自衛隊・第1術科学校

海軍カレー
広島市内の宇品エリアにて。50年以上前の車両から最新低床車両、日本の各都市を走っていた車両など様々な広電が見られた。 明治41年にイギリスから輸入された赤レンガで造られた倉庫は呉の観光名所だとか。国道487号線、第二音戸大橋を渡って倉橋島へ、早瀬大橋を渡って江田島市へ。 海上自衛隊・第1術科学校へ。旧海軍兵学校時代からの立派な建造物に驚嘆。見学(無料)所要時間は約1時間30分。 3日目の昼食は海上自衛隊・第1術科学校で海軍カレー。ごろごろとした具が入った日本風カレーだ。

江田島のヒューマンビーチ長瀬

江田島のヒューマンビーチ長瀬
江田島のヒューマンビーチ長瀬にて、カヌークラブの植月さん(人物左)の手ほどきにより、いよいよシーカヤック体験! 穏やかな波という初心者に絶好のコンディションの中、難なく沖に出ることができた。海水も澄んでいて気持ちイイ。海中に見えるのは養殖中の牡蠣と思われる。

チョー気持ちいい

そろそろひとり東に向かう時間

音戸大橋近辺
正に「チョー気持ちいい」「何も言えねえ」 といった感じ。小学生以来、久々の「素敵な夏休みの思い出」となった。 仲間との楽しい1日を終え、そろそろひとり東に向かう時間に。植月さんは開通したばかりの「東広島・呉自動車道」までのルートを紙皿の裏に書いてくれた……。 が、結局、ループが特徴の音戸大橋近辺まで誘導してくれた。植月さんと宮門さん、ありがとうございました! 二人はこの後、宇品の花火大会に向かった。TMAXと私は兵庫・赤穂に向かう。

 そんな感じで、シーカヤックに実際に触れることができたのは、時間的には15時を過ぎていた。この季節なので日はまだ高いが、景色の色や太陽の海面の反射は明らかに夕方が近いことを感じさせる。おそらく今ごろ、鈴鹿では8耐のトップ10トライアルをやってる時間だな、と思いながらTMAXを海辺ギリギリのところまで寄せる。とても長閑な海水浴場で、夏休みの土曜日とは言え人手もまばら。そんな雰囲気に佇んで潮風を浴びているだけでも十分気持ちのいいシチュエーションだ。

 シーカヤック、最初はこんな細い船体にシロウトが乗ったらすぐに転覆してしまうのでは? という不安はあるが、乗ってしまうととても安定している(後で聞いたハナシでは、私が乗ったのは初心者用なので特に安定しているとのこと)。瀬戸内に浮かぶ江田島のさらに湾になっているエリアだけに波はとても穏やか。そして、一本のパドルでスイスイと進んでしまうことも意外だった。当初はシーカヤックで対岸の海上自衛隊・第1術科学校を目指すことも考えており、初体験の人間には絶対ムリ! とは思ったが、そう難しいことではないかもしれない。

 養殖中の牡蠣を避け、沖の方にあった岸に漂着。波打ち際で水と戯れ、帰還途中にはゆらゆらと揺られながら、傾きはじめた陽が反射する水面。特にこれといったことではないのだが、ここ数年間で味わったことのない気持ちの良い、ファンタスティックな時を過ごすことができた。水泳の北島康介がアテネと北京で残した言葉そのものだ……。


明けて4日目

新東名
赤穂で一泊、明けて4日目は国道250号線でまずは姫路へ向かう。瀬戸内海沿いの風光明媚なグッドロードで、「道の駅 みつ」は多くのバイク乗りで溢れていた。 姫路から国道2号線バイパスを通り、第二神明~阪神高速で大阪へ。奈良から名阪国道を通って、三重・亀山からは再び高速へ。新東名に入った頃は陽も傾いてきた。

赤穂の街

名谷PA

遠州森町PA

赤いメーター照明
忠臣蔵の四十七士でお馴染み、赤穂の街にて。朝から雲ひとつない晴れ。今回の旅で最終日が一番天気が良かった。その分、暑かったけど……。 第二神明道路を通ると必ず立ち寄る名谷PA。名物「焼きそば定食」のご飯抜き、つまり焼きそば単品を注文。今回の旅、麺類多し。 新東名・上り線の遠州森町PAは、大きな浜松SAの次ということもあって比較的空いていており、見晴らしの良い立地もいい。ここで冷とろろそばを注文。 夜間、赤いメーター照明は眼に刺激が少なくて良いと感じた。が、老視になりつつある私は、液晶ディスプレイの文字が見え難くなることがあった。

 まだまだずっと、仲間達とココに居たい。何だが年甲斐もなく小学生の夏休みのような感覚に見舞われた。瀬戸内のとても美しい夕陽が特にそう感じさせる。が、スケジュールの都合で私ひとり、東京へ戻らなければならない。後ろ髪引かれる思いを、TMAXは胸のすく加速と快音で吹き飛ばしてくれた。最高の夏の思い出をもたらしてくれた素晴らしい仲間とTMAXに感謝!


TMAX530

TMAX530

TMAX530
TMAX530は2015年モデルよりLEDヘッドライトを採用。ロー&ハイビーム共に2灯が点灯する。ポジション、テールもLEDだ。スクリーンは2段階の高さ調整(50mm)が可能。 フロントまわりは倒立フォーク、対向ピストン4ポットのラジアルマウント式キャリパーを新たに採用するなどグレードアップ。ローター径はφ267mm。ABSも標準装備。 リアアームは左右別体式のアルミダイキャスト製。2次駆動はベルトドライブ。テンショナー部はスーパースポーツモデルと同構造だ。前後15インチのタイヤはラジアル。

TMAX530

TMAX530

TMAX530
跳ね上がったマフラーは、アルミフレームを採用した3代目からのアイコン。リアブレーキのローターは大径φ282mm。機械式パーキングブレーキも備わる。 シート下のトランク容量は約30リットルで、夜間時に助かる照明が備わる。今回、3泊4日の旅の荷物はすべてトランクに収まった。シートはリアヒンジで開閉し、ダンパーも装備。 シートのバックレストは車載工具を使って前後3段階に調整可能。日本人の平均的身長では最も前に出してもまだ遠く感じた。

TMAX530

TMAX530

TMAX530
高級クロノウォッチをイメージしたメーターパネルは2015年モデルより新デザインに。中央にはオド、トリップ、時計、燃費、外気温、オイルやベルトの交換時期なども示すディスプレイ。 スマートキーシステムの採用も2015年モデルの特徴。キーを身につけておけばハンドル下のスイッチでハンドルロックやイグニッション操作できる。12Vの電源アウトレットも新装備だ。 今回の旅でライダーの身を包んでくれたのはalpinestars「T-GP R AIR JACKET」。肩、肘、背中のプロテクター、強化された肩スライダーといった独自の高い安全性に加え、取り外し可能のインナー、適所に配置されたメッシュ素材による高温時の快適性も確保。3色展開する2015年最新モデルだ。

TMAX530
■XP500A TMAX530 ABS主要諸元

■型式:EBL-SJ12J ■全長×全幅×全高:2,200×775×1,420mm ■ホイールベース:1,580 mm■最低地上高:125 mm■シート高:800 mm■車両重量:222kg■燃料消費率:27.0km/L (国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時) 21.7km/L (WMTCモード値 クラス3、サブクラス3-2 、1名乗車時)■エンジン種類:水冷 4ストロークDOHC 4バルブ直列2気筒■総排気量:530 cm3■ボア×ストローク:68.0×73.0 mm■圧縮比:10.9 ■最高出力:35 kW(48 PS) /6,750 rpm■最大トルク:53 N・m(5.4 kgf・m)/5,250 rpm■燃料供給:フューエルインジェクション■点火方式:TCI(トランジスタ式) ■始動方式:セルフ式 ■燃料タンク容量:15L (「無鉛プレミアムガソリン」指定) ■変速機形式:Vベルト式/オート ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク /油圧式シングルディスク ■タイヤ(前/後):120/70R15M/C 56H /160/60R15M/C 67H ■懸架方式(前/後) :テレスコピック/スイングアーム ■フレーム形式 :ダイヤモンド ■車体色:ブルーイッシュホワイトカクテル1 、マットダークグレーメタリック1 (TMAX IRON MAX はダークグレーメタリックS )■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):1,058,400円(TMAX IRON MAX は1,090,800円)