Hi-Compression Column

MotoGPはいらんかね

■第13戦アラゴンGP・速報
(2010.9.21更新)


初開催のアラゴンGP怪獣のようなサーキットはこんなところにありました。いや、すごいんです スペイン人の情熱

MotoGP第13戦の舞台は初開催地、スペイン・アラゴン地方に新たに建設されたモーターランドアラゴン……、っていわれたって、だいたいそんな怪獣みたいな地名のサーキットがどこにあるのかなんてまったくわからねえよ。などと思ってしまうのも当然、このサーキット、ついこないだ竣工したばかりのできたてほやほやレーストラックなのである。

その証拠に、舗装がまだ温かくて、ほら、湯気も出ている。ってのはウソだけど。

どこにあるのかひとまず地図で調べてみたところ、バルセロナとバレンシアとサラゴサを結ぶ三角形のちょうどまんなか当たりに位置しているようである。

アクセスは、おそらくバルセロナから入るのが一番近くて便利なように見える。つっても、クルマで高速をかっとんでも軽く3時間から4時間はかかりそうなんだけどね。

でもまあ、ブチブチ文句を垂れてばかりいても埒が明かないので、とりあえず行ってみることにしてみました。

バルセロナからまずは有料高速道路のC-32をタラゴナ方面に走り、AP-7を少しバルセロナへ戻る進路を取ってからAP-2の分岐をサラゴサ方面へ。

このあたりですでに、高速道路の両側は耕作地にもならないような荒れた土地が広がっている。

あまりに何もない場所を走り続けるものだから、カーラジオだって入ったり入らなかったり、音楽が聞こえてきたと思ったら途中からガリガリというノイズに変化、というような状態である。

順調に減り続けるガソリンを途中で給油してAP-2の4番出口で高速を降り、一般道のN211を南下。

南下といってもまっすぐ伸びる道を走るワケじゃない。なんだか両側に地層が見える崖の切り通しを縫うようにうねうね走りながら、川沿いに出たかと思ったらその向こうには貯水池らしきダムがあったりなんかする。

対向車なんてほとんど出会わない。小さな集落を抜ける前後にときおり見かける程度。

で、この一般道を約1時間近く走り続けると、なんともいいようのない妙に雄大で荒涼とした景色が崖の隙間から見えてくる。

岩と土と地層と崖がやたら無秩序に広がるなかに、痩せた緑の樹木だかなんだかよくわからないものが温水洋一氏の頭髪みたくときおりぽしょぽしょと生えている、という、たとえていえばまあそんなかんじ。

世界のあちこちでレースを取材してきた過去には、アメリカのひたすら真っ平らな畑の真ん中だの、中東の砂漠を突っ切る道路だの、アフリカの地平線まで広がる草原だのと、いろんな<やたら広い場所>を走ってきたけれども、こういう大雑把で荒っぽい<何もない風景>というのも珍しい。

まさに英語で表現するところの"middle of nowhere"ってやつである。

と、そんな風景の中を走り続けていると、やがて突然、怪獣ランドタリゴン……じゃなかった、モーターランドアラゴンがぬっと姿をあらわす、というわけ。

そういう場所にサーキットを建設しようとするほうもすごいけれども、そこへわざわざレースを見に来るほうもたいしたもんである。

しかも決勝日には7万人を超える観客が集まってしまうのだから、スペインのモータースポーツ人気の高さたるや推して知るべし。

野ッ原の真ん中に7万人ですよあなた。総武線に揺られて東京ドームに4万人がやって来るのとはわけが違うんだから。

でも、このモーターランドアラゴンを目指してひたすらバイクで走り続けるのは、とても楽しいだろうし気持ちがいいだろうなあ、とも思う。

だって、ひたすらながーい直線では、何も考えずにひたすらパカッと全開。雄大なんだか荒っぽいんだかよくわからない峠道にさしかかると、今度はお腹いっぱいになるくらいひたすらワインディングが続く。

バイクのごちそうフルコース状態の道路を満喫しながら、行き着いた先には世界最高峰の二輪ロードレースが待ってるんだから、こりゃあ楽しくないワケがない。

こんな土地柄でバイク人気が定着しないワケがないんである。

いやホント、欧州のバイク乗りたちが羨ましいと改めて思いました。

ま、その分、体力も要求されるんだけどね。でもそこはスペインだけに、牛肉でも食ってひとつよろしくどうぞ、ということで。

 レースのリザルトは下記(↓)を参照してちょうだい。

 というわけで、次回は日本GP。場所はツインリンクもてぎで幕の内弁当。じゃあね。


■第13戦アラゴンGP

9月19日決勝 モーターランドアラゴン 晴れ
MotoGP(完走のみ)

●優勝 ケーシー・ストーナー DUCATI
●2位 ダニ・ペドロサ HONDA
●3位 ニッキー・ヘイデン DUCATI
●4位 ホルヘ・ロレンソ YAMAHA
●5位 ベン・スピーズ YAMAHA
●6位 バレンティーノ・ロッシ YAMAHA
●7位 マルコ・シモンチェリ HONDA
●8位 アルバロ・バウティスタ SUZUKI
●9位 マルコ・メランドリ HONDA
●10位 アレックス・エスパルガロ DUCATI
●11位 ヘクト・バルベラ DUCATI
●12位 コーリン・エドワーズ YAMAHA
●13位 青山博一 HONDA
●14位 ミカ・カリオ DUCATI

[8・第12戦 古沢政生氏直撃インタビュー]
[9・第13戦 アラゴンGP]
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西村 章
西村 章
スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社等にも幅広くMotoGP 関連記事を寄稿。訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマ ンスライディングテクニック』等。twitterアカウントは@akyranishimura。 第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作『最後の王者』の年内刊行に向け て、現在鋭意加筆作業中。






↓写真をクリックすると大きなサイズになります。


  • サーキット

    ピット側から1コーナーを臨む。いきなり左に90°曲がるブラインドコーナーである。


  • 荒野

    ほら、なーんにもない。牧草地にもならないただの野ッ原です。


  • 切り通し

    道路脇は地層が剥き出し。崩落したら即通行止め間違いなし。


  • ダム

    ダム好きにはたまらない風景ではある。


  • お城

    要塞だか城だか家だかよくわからないけど、たぶん廃墟。


  • 集落

    こういう小さな集落に出くわすと、妙に心がなごむ。


  • 道

    高速道路を降りると、しばらくは延々とこういう道を走り続けるわけです。


  • 荒野

    「火星年代記」とかのロケにも使えそうな風景である。


  • 荒野

    サーキットの敷地の向こうにも、荒涼とした大地が広がる。


  • ストーナー

    優勝したのはこの人C・ストーナー。今季初勝利。




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