53年もの歴史を誇るカブ・シリーズの、初代から脈々と伝統が受け継がれるオリジナル・モデルとも言うべき原付一種モデル、つまり多くの人々に愛され続けている50ccバージョンに乗ってみた。
最新モデルとは言え、2007年に電子制御燃料噴射システム“PGM-FI”を採用してから4年近く変更はない。もう変えようがないくらい、完成されたということだろうか? ちなみに現行モデルはスーパーカブの他に、配達業務向けのプレスカブ、14インチタイヤを履くリトルカブがラインナップされている。
スーパーカブ・シリーズは丸型ヘッドライトにオリジナル・スタイルをもつスタンダードとデラックス、角型ヘッドライトにエッジの効いたスタイルをもつカスタムを用意。4速ミッションとセルフスターターを装備し、そのスタイルから“新世代のカブ”とも言われたカスタム(初登場時のグレード名はSDX)ではあるが、このモデルでさえ登場から間もなく30年が経とうとしている。
試乗車はスーパーカブの基本モデルとも言うべきスタンダード。車両価格は20万4750円だ。
バイクに跨り、まず最初に気付くのは、スピードメーター下に2つ設けられたPGM-FIと燃料残量の警告灯。スーパーカブがF.I.化されたことを改めて認識する。イグニッションをオンにし、キックペダルを軽く踏み込んだだけであっさりとエンジンは始動。さすがF.I.である。アイドリングの音はとても静か。
3段+自動遠心クラッチのミッションを駆使し走り出して気付くのは、スムーズなフィールと振動の少なさだ。トップギアに入れ、そこそこスピードが増してきた時の音は紛れも無くスーパーカブの音。電子制御された最新モデルではあるが、慣れ親しんだ部分に変わりないのにはホッとする。今や採用するモデルが少なくなったフロントのボトムリンクサスもスーパーカブ特有の味だ。
ただ、これまた初代からずっと受け継がれている、縦に配置された右ウインカースイッチは、左ウインカースイッチに慣れてしまった身体には違和感を感じる。歴代カブをずっと乗り継いできた人にとって、なくてはならない装備なのかもしれないが……。
とかなんとか、偉そうに感想を述べてしまったが、偉大なるカブに文句をつけるのは大間違い。なんてったって戦後の日本の人々の生活を豊かにし、経済を支え、高い技術力を世界にアピールした製品なのだから。
「オイルが無くても走る」という逸話も残るスーパーカブだが、さすがに「ガソリンが無くても走る」というワケにはいかない。ただ、そんな時代が来るまで、カブには変わらず生き続けてほしいと改めて思った。