(ミスター・バイク 2010.1月号掲載)
今月はいつもと少し趣向を変えて、先月取り扱った、荷物の落下事故の番外編というか、サイドストーリーを紹介します。世の中には普通の常識が通じない人もいるのです……。
まずは先月号のおさらいです。
大まかな流れを簡単に書くと(先月号のおさらいイラスト参照)、高速道路で前を走るトラックの荷台から落下した荷物が、後続のクルマとバイクにぶつかり、クルマは前部破損、バイクは落下した荷物に乗り上げて転倒、ライダーのケガは軽かったものの、バイクは廃車状態になってしまった、という事故でした。
事故直後、トラックは荷物を落としたことに気付かず、そのまま走り去っていきました。
しかし、事故を目撃した別のバイクが追いつき、トラックのドライバーを現場に呼び戻してくれたのです。
その結果、加害者に逃げられる(本人にそのつもりはなかったのですが)こともなく、現場検証等が行われました。
結果としてはトラックの過失が10割ということで、後続のクルマとバイクの物損とライダーの治療費がトラックの任意保険から補償され、一件落着となりました。
しかし、その経過では先月も書いたように〝保険処理等で多少もめた〟のです……。
それでは、今月のイラストを基に、事故直後から振り返ってみましょう。
建設現場に使う足場や鉄パイプを落としたトラックは、自分が巻き起こした惨事に気付かず、走り去ろうとしています。
事故に遭ったミニバンは前部を破損して走行不能、転倒したセローは廃車状態ながら、ライダーはオフロードプロテクターに身を固めていたおかげで、思いの外軽傷でした。
「うわーやっちゃったよー、いつものように飛ばしてたら、俺も巻き込まれたかも……」と思ってぞっとしつつ、とにもかくにもセローのライダーに駆け寄って声をかけました。
すると、事故の割に軽傷で済んだからか、とりあえずトラックを追って知らせて欲しいとのこと。
二つ返事で引き受けて、散乱したパイプ等をよけて、スーパーブラックバードに鞭を打ったのです。
もちろん、あっという間にトラックに追いつき、ハンドサインでトラックを止めて、ドライバーに事の次第を説明したことは言うまでもありません。
さて事故現場にやってきたトラックドライバー。事故の状況を見ての第一声はなんと、 「オイオイ、マジかよー、どうしてくれるんだよ! 足場もパイプもひん曲がって使い物にならねえじゃねえか!」
というものだったのです!
転倒したライダーや、ミニバンのドライバーの身体を気遣うこともなく、自分のミスで落としてしまった荷物の心配を真っ先にしたのです。
驚きの言葉は続きます。
あまりに突然の、思いもかけない事故に遭って、肉体的、精神的、クルマ的、バイク的に傷ついた被害者の2人に向かって、こう言い放ったのです。
「俺の荷物を踏みつけて壊したのはどっち? どっちが弁償してくれるんだ?」
あまりの常識外れな言いぐさに、事故当事者の2人はもちろん、スーパーブラックバードのライダーまで唖然として言葉を失いました。
事故処理に着た警察官を前にしても、その言葉は変りません。