(ミスター・バイク 2010.3月号掲載)

まんが

ここ数年、エコブームと健康志向があいまってか、都市部で自転車愛用者が増えています。

東京でも、趣味ではもちろん、通勤や通学に自転車を使う人が増え、街中を颯爽と走っているのをよく見かけます。

数十万円もするような高額な自転車に乗っている人も多く、だったらバイクを買った方が楽しいのに、などと思うこともしばしばです。

さて、愛好者が増えて裾野が広がると、モラルが低い人も増えてしまうのは世の常です。

信号無視は当たり前、マウンテンバイクで歩道をカッ飛んだり、ロードレーサーで軽車両進入禁止のオーバーパスを走ったり、原付ですら二段階右折しなければならないような交差点を、平気な顔で右折レーンから曲がっていったり。とある東京の有名な交差点では、通勤時間帯に右折レーンが自転車で渋滞する風景が日常化しています。

そういう人ばかりが目につくだけなのでしょうが、危険なことこの上ありません。

いくら免許がいらない乗り物だからとはいえ、交通ルールを知らない人、知っていても平然と破る人が多い気がします。

実際、自転車がらみ事故も増えていて、問題となっているのです。今月は、そういった最近の自転車事情にまつわる事故を紹介しましょう。

ある平日の通勤時間帯。片側3車線の幹線道路を、一台の自転車が走っていました。

都市部のアパレル会社に勤めるサラリーマンで、最近のブームに乗って自転車に乗り出してはまってしまい、職場にはシャワーまであるため、通勤から週末のロングツーリングまで、毎日のように自転車に乗っています。

バイク好きと同じで、はまりだすとチューンアップしたくなるもの。彼の愛車のロードバイクも、超軽量アルミフレームにフリクションが少ないハブ、カチカチとシフトが決まり、こぎ心地も軽いハイスペックなコンポーネント等々、改造費だけで50万円近く、総額80万円もかかりました。

当然スピードも出ますし、車道を走って原付をぶっちぎることもしばしば。乗ると気分がイケイケになってしまうレーサーレプリカみたいな自転車です。

この日も、今や彼の通勤ウェアとなった自転車用のスパッツにジャージ、ヘルメットといったある意味気合いが入った格好で、会社に向けて走っていました。

そんな自転車ですから、道路の左端をゆっくりと走る気なんてさらさらありません。左側車線のど真ん中を、シャカシャカと走っていたのです。

しばらくは車の流れと遜色ないスピードで走っていたのですが、人力の自転車の泣き所である坂道にさしかかると、ガクッとスピードが落ちてしまいました。

しかし気分はそれまでのイケイケのままですから、道路の左端に寄るなんてことはしません。